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「言っておきますけど人間的に好きとかそんな生温い感情じゃありませんから。私はレナード様のこと性的に好きですから」
「せっ…!え!?」
「もっとわかりやすく言いますと、私はレナード様のこと性的な目で見ています」
「なっ!?」

私の一世一代の告白は、実にあっさりと口からまろび出た。

きっと表情にこの緊張は表れていないだろう。
だから必死に荒れ狂う心臓をなんとか宥めるように小さく長く、息を吐いた。

言葉を失っているレナード様を放って、私は話を続けていく。

「まずは私の話を聞いてほしいです。異論反論弁明弁解いろいろあると思いますが、まずは口を挟まないようお願いします。どうしても口を挟みたいなら3文字以内でお願いします」
「3!?」
「会話形式にしたくないんです。レナード様の話はその後にお願いします」
「あ、あぁ、わかった…」
「だから口を挟んじゃダメですってば」
「今のもか!?相槌くらいならいいだろ!?」
「じゃあ“はい”か“いいえ”くらいなら許します」

戸惑い続けているレナード様に目を向けながら、汗でじっとりと濡れている手のひらをテーブルの下で密かに拭った。

「私、レナード様がヤカグの人だって知ってます」
「なっ!なぜだ!誰から聞いた!?」
「3文字以内!」
「…っくそ!」

予想していた通り、レナード様は狼狽えた。
これを見越した上で口を挟まないように先に伝えたのだ。

恋愛小説でよく見るのは口喧嘩のようになってしまって言いたいことが結局言えなかったというパターンだ。
だからそもそも喧嘩が起きないように討論形式で行おうと歩いて帰ってきながら決めた。きっとこれなら言いたいことは言えるし、すれ違いになんかならないだろう。
そもそもすれ違い自体ないかもしれないけれど。



とにかく、告白をしてきっと困るであろうレナード様の様子を無視して、私はヤンデレになる。そう決めたのだ。



「ヤカグの男性はリィタと呼ばれる運命の相手がいる。そうですよね?」
「…」
「質問してるんだから答えてくださいよ!」
「いいのか?口を挟んでも」
「口を挟むのはダメだけど相槌はいいって言ったでしょ!」
「っ…、くそ、なんつー理不尽だ……あぁ!そうだよ!あなたの言う通りだ!」
「3文字以内だってば!」
「無茶言うな!」
「ヤカグの男性はリィタを見つけると、ときに誘拐してしまうほど理性を失ってしまうというのは本当ですか?」
「っ……、あぁ…」

理性的でないレナード様など、眠っているとき以外見たことがない。
眠りながら私を襲うあの本能的な一面を、少しでも起きているときに見せてくれたらと僅かに思ったが、そう思うことすら虚しくてすぐにその思いを一蹴した。

「私と住めるくらいだからレナード様にリィタがいないのは察せます。そして、私がリィタじゃないこともわかってます」
「っそ、れは」

自分の放った言葉に自分のこころが波立つ思いとなり、ギュッと拳を握るとさっき拭ったというのに手汗がひどいことに気がついた。


「レナード様に好きになってもらえないとわかっててもこの思いを消すことなんて出来そうにありません!」
「ちょ、ちょっと待っ…」
「だから3文字以内だってば!」
「うっ…」

レナード様は悔しそうに口を閉ざした。
3文字以上喋るななんてちゃちな命令など別に聞かずともいいのに。


真面目な人だ。
―――…だからその真面目さを利用させてもらう。



「私と一緒にいることがつらいと言っていたこと、忘れたわけじゃありません」
「あ、あれは…」
「でも、それでも、私はどうしたって、レナード様と一緒にいたいです!ソフィー様とレナード様がキスするって思ったらもう居ても立っても居られなくって……。私の、私だけのレナード様でいてほしいって思っちゃったんです!そうしたらレナード様にしがみついてて………だって!レナード様が私といることがどんなにつらいって思っていたとしても、それでも一緒にいたいって思うくらい好きなんです!私、もうレナード様がいないと生きていけなくなっちゃったんです!」
「っ」
「レナード様がいけないんですよ!散々私のこと甘やかすし、作る料理全部美味しいし、洗濯物畳むのだって綺麗だし、掃除だって完璧だし、エプロン姿可愛いし、ラテアートなんか描くし、しかもそれが下手可愛いし…………私の事、優しい表情で見てくるし……」
「それはっ…!」

憤慨しながら叫んでいる私の言葉を聞いて、何故だか少し褐色の頬を赤らめながらレナード様は黙っている。
なんでかそれが喜んでいるように見えてよりイラだった。



「―――だから私、レナード様を脅すことにしました」







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