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 観察癖②

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――――私が心配しているのはソフィー様だけではない。



あくまでも私の推測だがソフィー様が夢の中で赤ちゃん扱いしてヨシヨシしている相手はレナード様だ。
どういう因果関係なのかはさっぱりわからないが、恐らくソフィー様はレナード様の睡眠を奪い取ってしまっているのだと思う。
そんなソフィー様が眠り続けている………ということはレナード様はほぼまったく眠れていないということだ。

だけどもし私の推測自体が間違っていて、家に帰ったときレナード様が変わらず眠れていたら一体何を話せばいいのだろう。いや、もうあの家にはいないかもしれない。
……そう思うとどうしても家へと帰ることに躊躇してしまう。


自分はこんなにも臆病だったのだなと気づかされた。
好きな人に嫌われるということがこんなにも悲しくて、こんなにも自分を弱くさせるのだと気づかされた。


恋がつらくて切ないことがあることは恋愛小説を読んでいるから知ってはいた。
それに何度も心を痛めて、涙して、ヤキモキしてきた。
――――だけどそれらを楽しめたのは“男性目線”がきちんと書かれていたからだ。
お互いがお互いを好きなことを第三者として見ているから、そして最後はきっとハッピーエンドなんだろうとわかっているからヤキモキするで済んだ。


だけど、いざ自分が恋をしてみると切なさと苦しさを色濃く感じる。


レナード様の気持ちがわからないから。
レナード様が私を好きなわけがないから。

わかってた。
わかってたのに。
そんなこととわかっていたのに。
…わかっていた、つもりだったのに。




ほんとめちゃくちゃ腹立つ。




人の体を文字通り良い様に使ったのに何が「一緒にいるとつらい」だ。こっちのがつらいわ!
そりゃ家のことたくさんしてくれてめちゃくちゃ助かったよ?見事に餌付けされて胃袋ガッチリつかまれたよ?この同居生活の間で栄養失調気味の体が健康体になって肌艶も良くなったよ?

でもだからこそ困る。

これからレナード様がいなくなってまた1人で住むことになるというのにどうしてくれるんだ。
はじめから1人だったのと、独りになってしまうのでは天地ほど差がある。レナード様との思い出しかないあの家で私はずっとあの人を想って生きていかなければならないのだろうか。
オムライスを見たら、ペンギンのラテアートを見たら、レナード様が使っていたカップを見たら、2人で眠るベッドを見たら、レナード様を思い出す一生を送るのだろうか。

ふざけるな。
元々ダメ人間になりかけだった私をここまでダメ人間にしてくれやがって…!


むしゃくしゃした思いを流し込むようにマナーも何もなく紅茶を一気に呷ったときだった。





「あら、可愛い子がいる」



ふと聞こえた女性の声に顔を上げると、この豪奢な庭園を歩くに相応しい日傘を持った妖艶な美女がいた。





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感想 79

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