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快眠機能付きの愛玩人形です②
しおりを挟むその後、続々とキャラも顔も濃い男たちが出勤してきては「あら!顔と胸だけ女のアンナじゃない!何しに来たのよ!いい男連れてきなさいよ!」といった言葉を次々とかけきた。
そう、ここは兄の友人ヴィクターが働くゲイバーなのだ。
屈強マッチョもいれば、どう見ても女にしか見えない子もいれば、普通の男もいる。
要はここで働く者は「男性が好きな男性が働くバー」なわけで多種多様な男性が働いている。
私のようなノンケの、況してや女が1人で来ることはあまりないし歓迎もそこまでされないのだがヴィクターの友人の妹ということで許されている。というよりディランの妹だから許されている。
兄はこの店の人たちにとても人気なのだ。
「アンナが男に振られてヤケ酒したいんだってー」
「ちょっ!ヴィ……じゃなくてジェフ!」
本名を言いかけたが睨まれたため源氏名を呼んだ。なんでこんな普通の源氏名なのかは知らない。
すると割と仲のいい顔も体もゴツすぎるミルクちゃん(もちろん源氏名)が、まったくミルクミルクしていない顔をニヤつかせながら近寄ってきた。
「あーら、アンナの唯一の武器である顔と胸を使っても落ちないなんていい男じゃない♡」
「顔と胸が武器なら唯一じゃないじゃん」
「お黙り!」
「ほんとに落ち込んでるんだから冷たいこと言わないでよ~」
「柔らかい体を押し付けんじゃないわよ!アタシに抱きつきたいなら屈強な男に生まれ変わって出直してらっしゃい!」
「ひどい、遠回しに死ねって言ってる…」
「アタシだってムッチムチないい男に日々の疲れを癒してほしいのよ。あんたみたいな筋肉の「き」の字もないガリガリ女を慰めるなんて嫌よ」
「自分だってガチムチなくせに…」
「ハッ!あ~やだやだ。世間知らずで男も知らない小娘はこれだから…。ガチムチとガチムチがまぐわいあったときのエクスタシーを知らない顔と胸だけ女は黙ってアタシにたっかい酒でもいれなさい!言っておくけどおっぱいの大きさと固さなら負けないんだからね!」
「ツッコミどころが多すぎるよ」
「あんたがアタシにツッコむんじゃなくてアタシにツッコむ男を連れてきなさいよ」
「下ネタがひどい!!」
ミルクちゃんたちに優しい罵詈雑言を吐かれながら飲むのは楽しいけれど、やっぱりふとした拍子に思い出してしまう。
レナード様、自分の家に帰っちゃったかな。
私の事を探してくれたり…なんてことないよね。
これからはもう会えなくなっちゃうのかな。…下手したら一生。
でも、そうしたほうがいいのかな。
レナード様にとっても、私の想いを消すことを考えても…。
「大体フラれたって言うけどちゃんと告白したの?あんたにまともな告白できると思えないわ」
「え、いや、してないけど…。でも相手が私のこと好きじゃないのはわかりきってるし…」
ヤカグの男性はリィタしか愛せない。
だから告白するまでもなく私はフラれているのだ。それに加えて「一緒にいるとつらい」と言われたんだからちょっとくらいキレて落ち込ませてくれてもいいじゃないか。
「やだやだ。何の努力も、況してや告白もしてないのにヤケ酒する女なんて。こんな女にはなりたくないわね」
「心配せずとも女じゃないよ」
「お黙り!いいこと?アタシはね、好きな男に振り向いてもらえるよう文字通り鍛えているわ」
「まぁ、確かに…」
チラリとミルクちゃんの盛り上がった上腕二頭筋を見つめた。
うん、すごい。
「つまりアタシは自分を磨くために日々努力をしてんのよ。もちろん良い男がいたらアピールだって欠かさないわ。アンナ、あんたはそれをちゃんとしたの?」
「っ……し、してない……です」
私がしていた、というよりされていたのはご飯を作ってもらって、家事をしてもらって、髪をといてもらって……うん、私何もしていない…。
「あ~やだやだ。努力もしてない人間が結果だけ見て落ち込むなんて愚かしいにもほどがあるわ。落ち込むのは努力した人間の特権よ。あんたにその資格はないわ。とっととアタシにボトルをいれなさい!それかディラン君を連れてきなさい!」
「ミルク、アンナの荷物の中に男物のパンツあったからそれやるからそろそろ勘弁してやれ」
ヴィクターがつまらなそうに急に口を挟んできた。
「え!パンツ!?どこ!?パンツどこ!?」
「なっ、ダ、ダメダメダメ!」
屈強なミルクちゃんからしたら私の制止など意味もなく、鞄を開けてすぐのところに入れたレナード様のパンツはあっさり見つかってしまった。
「きゃあ♡これは絶対いい男のパンツだわ!アタシの女の勘が言ってるわ!」
「ダメダメダメ!私のパンツだもん!レナード様のパンツは私のパンツだもん!」
「オホホホ!返してほしかったら」
「ほしかったら!?」
「―――そのレナード様とやらに告んなさい」
「っな、……なんで……?」
「あんたみたいな顔がいい女が無様に振られたところを見ながら飲む酒は最高なのよ!!」
「ほんとにひどいな!」
ひどいと言いながらもこれがミルクちゃんなりの励まし方なのはわかっている。
そうだ。
私はなんにも、全く何にもしていない。
していたのは一緒に眠って体をまさぐられていたのを受け入れていただけだ。…いや、体をまさぐられてたって結構すごくない…?男経験ないのにだよ?……でもそれはレナード様は知らないし、私が努力したことじゃない…。
確かにミルクちゃんの言うように、私はなんの努力もしていない。
レナード様がリィタしか好きになれないんだとすぐに諦めて憂いていただけだ。
たくさんたくさん努力をしたら、もしかしたらまかり間違ってレナード様がリィタではない私のことを好きになってくれるかもしれない……。
でも、好きになってもらう努力……って一体何をしたらいいんだろう。
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