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21 快眠機能付きの愛玩人形です

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どうもこんにちは。
好きな人から「一緒にいることがつらい」と言われたアンナです。


ちなみにその人、そんなことを言った前の晩も私の唇を奪いに奪って胸をこれでもかと揉んできた人です。最近はパンツの上から敏感な部分を指先でいじくってくる人です。

どうもこんにちは。
快眠機能付きの愛玩人形ラブドールのアンナです。


終了ですわ。
私の恋、終了ですわ。





散々私の体を物理的にいいように使ってきたのに眠れるようになったらポイですわ。はぁ、そうですか。
元々ダメ人間気味だったのに散々人を甘やかしてさらにダメ人間にしてくれやがって。はぁ、そうですか、そうですか。
モテる男はやることがちがいますわ。

あーーー腹立つけどまだ全然好きだわ。
むしろ自分がいかにレナード様のことを好きかわからされたって感じだわ。



そして絶賛家出中です。
私の家なのに家主の私が家出中ですよ。なんなんでしょうね、これ。

いや、それを言ったらこの状況がなんなんでしょうねって感じなんですけども。




「アンナ様、お茶のおかわりはいかがでしょう」
「え、あ、は、はいっ!いただくでありますです!」

そんな家出中の私が今いる場所は今まで生きてきて絶対に来ることのないであろう公園かと思うほどの庭園。
意味のわからない彫刻がある噴水やら、誰が見るのかわからないが花々が素晴らしく咲き誇ったこのお庭を持つのは、つい先日初めてお会いしたソフィー・ベルテン様。

そう。過眠で悩み、夢の中で殿方と赤ちゃんプレイを楽しみ、私と『ヌルムキ』について熱く語ったあのソフィー様のお屋敷に私は滞在しているのだ。









レナード様の唇に噛みついてから逃げ込んだ先は、幼い頃から知っている兄の学生時代からの友人が働いているお店。

そしてその友人は久々に会ったが相も変わらず中性的な容姿で美しかった。
アッシュゴールドの髪は腰まで長く、それをゆるく片方に集めて髪紐で結んでいる様はどこか艶めかしい。濃いめの灰色の瞳も神秘的でこの男の妖艶さを醸しだしている。

隣街にあるこの店だが街外れにあるから私の住む街からちょっと歩けば行ける距離なため仕事が行き詰ったときなどたまに来る。
それは友人に会いに来ているというよりここの雰囲気が嫌なことを忘れさせてくれるからだ。


だがまだお店はオープン前で開店準備中をしているため友人と私しかいない。

「今度は何?ディランとケンカでもしたの?そんな大荷物持ってきちゃって…」
「ちがうし……とにかくつらいことがあったの!」
「じゃあ何?男?」
「う」
「え、ほんとに?男っ気ゼロのアンナに?」
「うるさいヴィクター、ヴィクターうるさい」
「店で本名を呼ぶな」

カウンターに顎をのせてだらしなく座っているとフワリとコーヒーの香りが漂った。酒場バーであるこの店に似合わないその香りに顔をあげるとすぐに目の前にホットコーヒーが差し出された。

「良い香り…ヴィクターが淹れたの?」
「当たり前だろ。実家の喫茶店継ぐつもりだからコーヒー淹れんのをずっと勉強してたんだよ。それ飲んだらとっとと帰れ。あと本名を言うな」
「ありがたく飲むけど帰らない」
「あ~~~めんどくさ」
「いいじゃん!もうすぐお店開くでしょ!?普通に客としてお酒飲む!とにかく今日は絶対帰らない!」
「あ~もう勝手にしろ!」
「あれ?財布あったかな?」
「おいおい…ツケなんかつけてやらないからな」

何をいれたかまったくわからない鞄を開けてゴソゴソと中身を探っていると季節外れの服が多いことから自分がどんなに混乱していたのかがわかる。
そして底のほうで目的の財布を見つけたときにその隣にあるものにはたと気づいた。


「これ……レナード様の洗いたてパンツだ……」


あのときずっと握りしめていた洗濯物は、レナード様愛用のシンプルな黒のパンツだったのだ。




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