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もっと足掻けよ ‐レナードside‐④
しおりを挟む「ディラン、すまない…ありがとな…」
「ハハッ!んじゃあこれから俺のことをお兄様と呼んで崇め奉れ!さあ呼べ!今すぐ呼べ!同期で部下の俺をお兄様と今すぐ呼べ!!」
「呼ぶわけないだろ…」
「冗談通じねぇ奴だな!まあお兄様と呼べっつったのは冗談じゃなくて本気だけどな!」
「……ほんとにもう帰れ」
「わぁーったよ帰ってやるよ!帰って俺のことが大好きな嫁とラブラブしてきてやんよ!お前は1人寂しくアンナの枕の匂いでも嗅いでシコッてろ!」
「ほんとにさっさと帰れ!」
「うわ!否定しない!お前本気でするつもりだったな!?しゃあねぇな。兄権限で許す!」
「許すな!というかしないから!」
「へいへい。あ~あ。こんなめんどくせぇシコ野郎のことなんて放ってロザリーと腹ん中の子供とイチャイチャしよーっと!」
爽やかに嫌味を言ったディランが帰ろうとドアへ向かったとき、「あっ!」と声を上げて振り返った。
「これお前からアンナに返しといて。勝手に借りてたやつだから直接あいつに返すのめんどくてよ」
「?」
そう言って持っていたバッグから取り出したものを俺に放った。
それをなんなくキャッチしておもむろに見てみると色んな意味で体が固まった。
「なんだ、これ…」
「は?見てわかんだろ。バカめ!じゃあな!クソめんど筋肉野郎!」
バタンと大きな音をたててドアを閉め、ディランが嵐のように去って行った。
そして急に訪れた静寂にをごまかすように大きく息を吐きながらソファに体全てを委ねた。
「なんであの兄妹は捨て台詞で俺のこと変なふうに言うんだ…」
外はもうすっかり夜の闇に包まれている。
彼女はそのディランの友人のところにいるのだろうか。
そいつに嫌なことをされてはいないだろうか。
今頃、俺が作ったものではない食事を食べているのだろうか。
そう思うと体が無意識にピクッと動き外に駆けだそうとしていたが、理性がそれを止めた。
ディランの言う通り、今はここで連絡を待つほうがいいだろう。
それにきっと街中を探すよりもここで秒針の音と共に彼女の帰りを待つ方がきっと辛い。それなら俺は辛いほうを選ぼう。
何の意味もない僅かばかりの贖罪のために、俺は静かにジッと待とう。
そう思ったときディランから最後に渡されたものが目に留まった……―――
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