不眠騎士様、私の胸の中で(エッチな)悦い夢を【R18】

冬見 六花

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 もっと足掻けよ ‐レナードside‐③

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押し黙っていた俺を見て、ディランが心から辟易している表情と言葉を漏らした。


「ヤカグの血、ヤカグの血ってうるせぇよ。俺の血もお前の血もさして変わんねぇよ。同じ赤で鉄臭ぇ液体だ。そんだけだ」

ディランがハアァ、と大きくため息を吐きながら吐き捨てるように言った。

「お前は血で物事を考えてんのか?血で人を好きになんのか?ちげぇだろ?お前はアンナが好き。それでいいじゃねぇか。ゴチャゴチャゴチャゴチャ難しく考えんなよ、頭いいくせに頭わりぃな」
「なっ…」
「俺だって初めてロザリーを見たときから絶対結婚するって決めたぞ。何度も振られたけど諦められるわけねぇからめっちゃしつこく言い寄って結婚した。毎日惚れ直してるし、ロザリー以外の女を好きになるなんてそれはもう俺じゃねぇ。俺はロザリーに振られたら大袈裟じゃなく発狂する自信がある!―――どうだ!ヤカグじゃねえ俺だって十分重いだろうが!」

高らかにそう言うディランがどこか眩しく見えた。
いつの間にか立って唄うように話すディランのことをただただ見上げることしかできない。そんな呆気にとられた俺のことをニヤリとしたしたり顔で見下ろしている。

「―――もっと足掻けよ、レナード。その血に憂いてアンナから離れるなんて楽な方を選ばねぇでアンナを愛す苦しい道を生きろよ。みっともなくても、かっこ悪くて、ボロボロになってワンワン泣いて、それでも戦って、今みてぇな情けなくてめんどくせぇ姿をアンナに見せて、自分が何に怯えて怖がってんのかあいつに全部曝け出せよ」
「……こんな姿を、彼女に…」
「バカめ。男っつーんは元来かっこ悪りぃもんなんだよ。自分の1番かっこ悪いとこを晒して、それをバカだな、可愛いなって言ってくれる女だったらお前の全力のクソ重い愛もまるっと受け入れてくれるだろうよ」
「っ」
「俺はロザリーから毎日バカって言われてっけど愛されてるからな!ハハッ!どうだ!これが妻帯者の余裕だ!恐れ入ったか!恐れ入ったら俺をお兄様と呼べ!ハッハッハッ!」


やっぱ腹立つな、こいつ…。
そう思いながらも自分の中にずっと巣食っていた靄が晴れていくような思いとなった。


「んじゃ俺も帰るわ。とりあえずアンナのことはほんとに心配いらねぇからお前はここにいろ」
「お、おい。家主がいないのに俺がここに居座っていいのか」
「いいよ別に。俺が許す。だってアンナがひょっこり帰ってきたときお前がここからいなくなってたほうがかわいそうじゃね?アンナがいない隙にお前がここでなんか盗むとかも思ってねぇし。あ、お前もしかしてアンナのパンツでも盗む気か!?…ったく、2枚までだぞ」
「盗むわけないだろ!2枚までってなんなんだよ!」
「え?じゃあブラジャーのほうが欲しいのか?しゃあねぇなぁ。ちゃんと盗ったら買い足してやるんだぞ。隣街にエロい下着屋があっからそこでお前好みのやつでも買ってやれよな。あ、パンツも盗むんなら上下セットのやつにしてやれよな。片方だけなくなったらさすがにあいつも気付くかもしれねぇし。あぁ、でもあいつズボラだからいつも上下別の着けてそうだから気づかねぇかもな」
「だから盗らないと言ってるだろ!」
「え!お前好きな女の下着いらねぇの!?」
「そ…れは…」

思わず言い淀んでしまった。

だって欲しい。めちゃくちゃ欲しい。
肌身離さず持っていたい。

「ッハハハ!だよな!欲しいよな!お前実は相当キモい奴だったんだな!」
「彼女には言うなよ…」
「わぁった、わぁった。いくら俺でもアンナに言うなんて野暮なことしねぇから安心しろって。俺も気持ちはわかっから」
「じゃあお前も相当キモイ奴じゃないか」
「俺はお前と違って堂々とロザリーからもらってるからな!なんてったって俺はロザリーの夫でめちゃくちゃ愛されてるからな!ハッハッハッ!」
「…」

もう何か言う気が失せた。
というか今のやり取りでやっと力が抜けたような気がした。
恐らくディランは意図して行っているものではないけれど。






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