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19 逃げないとダメなんだよ ‐レナードside‐
しおりを挟む彼女からピクニックに行こうと誘われ、隣街の公園へと訪れた。
本来リィタを外に出すことを嫌がるはずだが、これに関しては抵抗がなく、彼女の可愛い旋毛を見ながら隣り合って歩くことはなんとも心地良いものだった。
早めの昼食を摂ろうと弁当の蓋を開けると、朝食と大してメニューは変わらないのに彼女の藍色の瞳が輝いた。そのあまりの可愛さに転げ回りたくなるほど内心悶えた。
それを悟られないよう努めて冷静にデザートにがっつきすぎないように言うと、俺の言葉が少し気に入らない様子の彼女が僅かに眉を上げ睨んできた。
なんだこれ。可愛い。
「レナード様が作るご飯が美味しいだけです。おかげで私結構太ったんですけど」
「そうなのか?あなたは細すぎて心配だからむしろもっと太らせよう」
「嫌ですよ!それにレナード様がいなくなったらどうせ痩せるし!」
その言葉に数秒前に身悶えた気持ちが一気に萎んでいった。
自分だって彼女の前からいなくなるつもりなくせに、彼女がそれを平然と言ってのけたことに身勝手にも傷ついた。
「食事は体の資本だぞ。今でだってあなたは細すぎる。だき………」
―――抱きしめたとき腹があまりに薄いから胸の大きさがよりわかる。
なんて正直すぎることがまろび出そうになってしまった。
言いかけた言葉を取り消しながら彼女にコーンスープを渡すと、その喜び方があまりに可愛くてまた内心悶えた。
その日の夜、微睡む彼女が俺を抱きしめながら言った。
『私のこと……“アンナ”って……呼んで………?』
リィタの願いは絶対に叶える。
――――だけどこれ以上は踏み込んだら絶対にいけない。
そう思い、絞り出すような声で断った。
夢の中で何度も呼び、寝言で何度も呼んでいるとわかっているのに断った。
思えばこれまで生きてきて女性の名前を呼んだことがない。
ヤカグでは自分のリィタ以外の女性の名前を呼ぶことは非常識とされていたし、そもそも母しか女性を知らなかったから名を呼ぶ機会さえなかった。
名前を呼ばないことは存外不便ではないし、そもそも名を呼ぶほど親しくなる女性などいなかった。
だから彼女がリィタだと気づく前も、当然のように無意識に名前を呼ばないようにしていた。
だけど今、なにもかもが特別な彼女の名前を意図して呼んでしまったら自分がどうなってしまうのかわからない。
苛立つほどの臆病さが反動を起こしたように、その夜は殊更激しく彼女を求める夢を見た。
喋らせないようなかぶりつくようにキスをして、いつも顔を埋める胸を強く揉み、首筋に舌を這わせ、胸の淡紅の先端を口に含み舌で転がしていく。
そうして漏れる彼女の声が甘い。
「レ、レナッ…ド、さまっ……すきっ……!好きなの…ッ」
俺を責めるように、でも縋るように名前を呼び、俺を「好き」だと言ってくれる甘美な夢。
胸を舐められたことに敏感に反応し、ショーツ越しに膨れた箇所を触れると一際高い声が出て、そのまま彼女は俺に貪られながら体を震わせ達してくれる感奮な夢。
充足感
焦燥感
罪悪感
入り混じる思いを抱えたまま彼女の夢をそこで終え、もっと深い眠りの中へと潜っていった。
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