不眠騎士様、私の胸の中で(エッチな)悦い夢を【R18】

冬見 六花

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 彼女は知らない ‐レナードside‐②

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その夜、彼女の夢を見た。



彼女の重みと柔らかさを全身で感じられるよう自分の体の上に乗せ、小さく薄い唇に自身を押しつけ、口内に舌を捩じ込んで狭いナカをかき混ぜる。
漏れ出る彼女の声が苦しげだが甘く、もっと啼かせたいと意図せず舌の動きが強まっていく。

すると彼女は可愛いほどの抵抗をする。
俺の体を突っぱねようと肩に手を置くが、あまりに弱い力にむしろ煽っているのではと思い欲情をかきたてられる。

夢の中の自分は、その思いのまま彼女の体をまさぐっていく。
どこもかしこも柔らかく、温かくて、いい匂いがする。そんな彼女の舌を舐め、唇を食み、尻を揉んで、細い体を堪能する。


――――明け方。
意識が浮上したと同時に陶酔するようないい香りと柔らかいものが顔に当たっていることに気が付いた。

その柔らかさが眠る前にも感じた彼女の胸だと気づいたとき、思わず無意識に顔をもっと押し付けて匂いを強く吸い込んだ。

「ハアッ……」

柔らかさと香りに酔いしれたが今の行いで彼女が起きてしまったのではないかと顔を胸から離して見上げてみると、心地よさそうに眠っていることに安堵した。
どうやら彼女の腰に腕を巻き付けたまま眠ってしまったらしい。そしてそこで初めて自分が眠れていたことに気付き、それは紛れもなく彼女のおかげなことを密かに理解した。

だが眠れたことよりも一晩中彼女を抱きしめていたことのほうに喜んだ。俺の腕の中から彼女が逃れようとしたのか知らないが、逃れられなかったことを仄暗く喜び、そしてそれに喜ぶ自分に嫌悪した。

眠る前と同じ体勢ということはさっき見た夢を現実ではおこしていないということか。
そのことに安堵し、少し残念にも思った。





それから毎晩彼女と抱き合って眠り、毎晩彼女の夢を見た。

あまりにリアルな夢に、本当に彼女をまさぐっているのではと何度も思ったが、いつも彼女は隣でスヤスヤと可愛らしく眠るだけ。
目覚めたときの体勢が変わらない時もあれば、彼女が俺の胸に顔を埋めているときもあり、次第に明日の朝はどっちになるのだろうと楽しみに思うようになっていた。
そしていつも明け方に目を覚まし、小1時間ほど彼女の頬や髪を撫でながら寝顔を見つめる。


「可愛い」という言葉は、きっと彼女のためにあるのだろう。
「食べちゃいたいほど可愛い」とはまさに今自分を覆うこの思いのことだろう。
彼女を自分の中に取り込んで、溶け合って、染み渡って、俺と1つになる。逆でもいい。俺を食べてもらって俺が彼女の中に巣食って、彼女のものになる。

――――でも、それは現実的ではない。
だから今日も彼女のために食事を作ろう。
俺の何もかもの思いを込めた食事を作って、その薄い舌で味わって、その小さい歯で咀嚼して、その細い喉を通って腹の中に入れて彼女の中に取り込んでもらおう。

まだ眠る彼女から離れ食事の用意を始め、片づけるころになってようやく自分が恐ろしいことを考えていたことに気付き、密かに落ち込む。――――そんなことを毎朝繰り返した。














「ンゥ……はっ、……っ、ん、ん」


いつもの彼女との甘美な情交の夢。
自分の欲望がそのまま描きだされているような、そんな夢。

「レナッ、ァ……っ、さまぁ…ッン、ぅ」

彼女が俺とのキスを苦しそうにも受け入れて、必死に俺を呼びながら舌を絡めてくれる。
服越しにピンとたった乳首をくすぐってあげると、可愛い声が舌を伝って俺の中に入ってくる。



もっと…、もっとほしい。
もっとくれ。もっとだ。
もっともっともっともっともっともっともっと、



体も、声も、熱も、香りも、纏う空気も、もっともっと俺にくれ。




もっとおいで。
ここまでおいで。
俺のところまでもっと。
怖がらないでもっとおいで。







ほら、俺のところまで堕ちておいで……?







俺の
  「アンナ…」







ふと、自分の声で目が覚めた。


自分が今、なんて言葉を吐いていたのかわかっている。
わかっているからこそ、痛苦しいほど不快に心臓が鼓動を打っている。

今日は俺が彼女の胸に埋まったまま。
よかった。このうるさい鼓動を眠る彼女に聞かれずにすんだ。



――――……あぁ、もう限界なのかもしれない。



そう思いながらスヤスヤと眠る彼女を見つめた。

きっと俺がこんな思いを持っていると知ったら、彼女は一緒に眠ってなどくれない。いやそれどころかこの生活も終わってしまうだろう。

知らないままでいい。
彼女は何も知らないままでいい。

俺がこんな恐ろしい男だと知らないまま、彼女の元を去ろう。




そのあときっと俺は……――――




そこまで考えてから思考を止めて、いつものように彼女の寝顔を見つめ続けた。







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