49 / 122
18 彼女は知らない ‐レナードside‐
しおりを挟む意図しているのかなんなのか、意外と大きい彼女の胸に俺の顔が埋まるように抱き寄せてきて、欲望のまま彼女をメチャクチャにしないよう必死に耐えた。
彼女から放たれる香りが自分の獣欲をさらに高めていく。
まずいと思っているのに離れられない。離れたくない。離したくない。
この香りを体中に染み渡るほど取り込みたい。
この柔らかさに潰されたい。
「あの…頭撫でたり、体触ってみても、いいですか…?」
「っ!」
もはや苦行かと思った。
耳元で囁かれたその可愛らしい声とその内容に身を硬くした。
断らねば…、これ以上触れられたら彼女をもっと欲しくなる…。そうわかっているのに彼女からの申し出を断るなど俺の本能が許さない。
どんなに無謀な願いでも叶えたい。
―――それが俺の幸福だ。
彼女はまるで俺の体を堪能するかのように撫でていく。
そのせいで絶え間なく沸々と湧き上がる思いを抑えたいのに抑えきれない。かき抱きたいのを必死に我慢するようにひざの上に置く拳に更に力をこめると急に彼女が俺を撫でることをやめ、両手を上げた。
「どうした…?何故急に止めたんだ…?」
「え、あ、レナード様の体に力が入ってるように思ったからやっぱり嫌なのかなって思って…」
「嫌じゃない。ほんとのほんとに嫌なんかじゃないよ。……ただ、俺も要望を言ってもいいだろうか?」
与えられた暴力的ともいえる甘美さを急に取り上げられたからか、抑えようと思っていたのに理性が効かず欲望が追い縋るようにまろび出る。
「俺も、あなたを抱きしめても、いいだろうか…?」
彼女を抱きしめたら最後、彼女を失った後の自分はその熱に一生身を焦がされる。
わかってる。
それをわかっているのに今、目の前の彼女をこの手で抱きしめたい。
たった一瞬の甘美を味わうことで、一生苦しんだとしても、――――抗えない。
彼女がまるで熱を持ったような瞳で俺を見つめながらか細い声で了承した。その瞬間、奪うように彼女を抱きしめその胸に顔を再び埋める。
細い腰を強く抱き、抵抗などしていない彼女を離すものかと強く強く腕に閉じ込めた途端、得も言われぬ心地となった。
これだ。
ずっと求めていた。
心の底から、本能から、
彼女をずっと、生まれたその瞬間から、俺は求めていた。
自分の体の奥底から、そんな叫びが聞こえるようだった。
「……っ、こんなにも……なの、かっ……」
こんなにもリィタというのは甘美なのか。
こんなにも自分を巣食うものなのか。
こんなにも心地いいものなのか。
………こんなにも、愛おしいものなのか。
言葉では言い表せないほど、こんなにも、俺は彼女が……
だからこそ、彼女を手放さないとならない。
父のようになりたくない。
母のようにしたくない。
抗ってみせる、このヤカグの血から。
それで自分が狂うとしても。
絶対に彼女を自分から逃してみせる。
だからほんの僅かのあいだだけ、自分を甘く苦しめる彼女のそばに……――――
1
お気に入りに追加
1,177
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。

密室に二人閉じ込められたら?
水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる