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どうしようもなく、つらい②
しおりを挟む頭がグチャグチャになりかけていたところで、横に座っていたソフィー様が急にガクン、と大きく首をもたげすぐに戻した。
「あ……ごめんない…。急に眠気が……。最近は起きられる時間が長くなったのだけれどまだ眠いときのほうが多くて」
「大丈夫ですか!?なら今日はここで一旦終わりましょう」
眠そうに目がトロンとしながら小さく舟を漕ぎ始めたソフィー様を支えるように侍女さんと護衛さんがすかさず近づいて体を支えた。
「せっかくお時間をいただいたのにすみません…枕のこともまだ伺っていないのに…」
「気にしないでください。枕のことはまた後日ゆっくり話しましょう。良ければ私がソフィー様のお宅に伺いましょうか?そうしたほうがソフィー様も楽でしょうし」
「ええ、そうね…。そうしてくださると嬉しいわ……」
普段は訪問することはしないのだが、今まさに眠りそうな姿を見たら家で打ち合わせをするほうがいいかもと判断した。
それにおまじないのことももっと聞きたい。
「枕のこともそうだけど『ヌルムキ』のことも話し足りませんからね」
「えぇ…そうですよね」
「貴重なファン仲間ができて嬉しいです」
笑顔でそう答えるとソフィー様は嬉しそうに微笑んで目を閉じ、眠りにはいってしまった。
確かにこんな急に眠ってしまうのは日常生活にかなりの支障をきたすだろう。結婚どころか普通の外出だって一苦労だ。
彼女の苦労のほんの一部ではあるだろうが、それを垣間見て心が痛んだ。
すると、今までずっと黙っていた侍女さんが私に近づいてきた。
「店主様。本日はお忙しい中お時間をいただきありがとうございました」
「いえ、こちらこそ」
侍女さんが丁寧にそう言って深々と頭を下げた。護衛さんはソフィー様を抱き上げ、落とさないようになのか会釈程度に頭を下げてくれた。
そういえば2人は枕の話から逸脱した私達の性癖の話を黙って聞いていたんだった…。怒られたりしてしまうのだろうか…。
そう思って少し身構えていたのだが、侍女さんは優しい笑みを向けてくれていた。
「お嬢様があのように楽しそうにお話しなさる姿を久々に見ることができまして本当に嬉しく思います。あなた様のおかげです」
「い、いえ、私は何も」
「いいえ、本当に過眠について悩んでおられてつい最近までずっと気持ちが塞がっておられたのです。あなた様とのおしゃべりがお嬢様にとてもよい刺激となったのでしょう」
「それならいいのですが。私も途中からただただ楽しくお話をしていただけなので」
侍女さんは本当にソフィー様のことを気にかけているのだろう。
ずっと黙っているが護衛さんもそうだ。ソフィー様を抱く手つきや向ける目もとても優しいものだった。
烏滸がましいかもしれないけれど、なんとかしてあげたい。
レナード様とソフィー様の夢が本当に繋がっているのならそれを断ち切ってあげたい。
ソフィー様を乗せた豪華な2頭立ての馬車を見送りながら、そう思った。
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