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12 レナード様は知らない
しおりを挟む「ハア…、ハア……」
荒い息で目が覚めた。
「――――ンンッ!…ッィ゛」
唇すべてを口に含まれ丸ごと噛まれるようなキスとも言えないキスをされる。
舌に歯をたてられた痛みのせいで意識が完全に覚醒した。
毎夜密やかに行われる激しいキスと胸や背中へのまさぐりだ。―――……そう思ったがどこか違う。
「フアッ!……へっ?……ぇ、レ、レナッ、ゥンッ!」
レナード様が私に覆いかぶさって、喋らせないようなキスをする。
片腕は自重を支え、もう片方の手は先程自分の顔を埋めていた私の胸を少し痛いくらい揉みしだく。その乱暴な手つきは今まで一度もなかったものだ。
「っ、……はっ、ァンンッ……っ、ん……ンン」
「…ハァッ゛」
「ゥンン゛ッ」
まるで獣が今から獲物を仕留めるかのような声がレナード様から漏れ出た。
えずくほどに苦しいキスに自然と眦が濡れる。
いつもと同じで……―――……いつもと同じじゃない。
レナード様の猛追に抵抗するように脚を動かすと、それを咎めるように体を乗せてきて動けない。体の不自由さに気付くと同時に自分のパジャマがたくしあげられ既にお腹は外気に触れていることに気が付いた。
今まで散々キスをされ、胸を揉まれてきたがそれは服の上から。しかもその手つきは強くも優しいものだった。
なのに今日は、まるで追い詰められているかのように荒々しい。
「ぇ…え?」
レナード様の熱すぎる舌が首筋を這い、ヌルリとした感触が背筋を甘く痺れさせてきた。そして服の上から胸を揉んでいた手がいとも容易く腹からもぐりこんできて直接胸を揉んできた。
「レ、レナッ…ド、さまっ…!?―――ヒゥ!」
パクリ、なんて可愛いものではなく舌先が乳首を掬いあげたと思った瞬間に熱い口内に取り込まれ、そのまま舌全部を使ってジュルジュルと舐られる。
「ひゃ、アァッ……っ、ひうぅ」
こんな荒々しく、況してや乳首を舐められるなんてもちろん初めてだ。
性知識はある。
密かに読んでいる女性向けエロ小説に性描写はかなり細かく書かれていたから。
だけど、いざ体験したら想像をはるかに上回る。
しかも相手は好きな人だ。
だけどその相手はこんな動きをしながらもしっかりと熟睡している。
レナード様は知らない。
自分がこんなことをしてきていることを。
きっと明日の朝もエロ爽やかな表情で私に「おはよう」と言ってくる。
自分が齎した熱で私がどんな思いを抱くのかなんて、レナード様は知らない。
乳首を舐められているという状況、そして感覚にもクラクラする。
赤ちゃんプレイを悪夢としていたレナード様が赤ちゃんのように乳首に吸い付き、だけど猛々しい雄のように巧みに乳首を舌で転がし私に快感を齎していく。
「レ、レナぁ、ど……さまぁ…」
私の弱弱しい呼びかけなど、聞こえていない。
私に確かな快感を与えるような舌の動きと合わせてわざとらしく音を出していく。口内で舌を巧みに使って音を出しているかと思えば、「チュッ、ジュッ」と一瞬吸っては口から離し、すぐに吸いつくことを繰り返す。
――――乳首を弄ばれている。そう表現してもいいものだった。
「……ッ、ぁ、うぅ……む、胸っ、……ゃ、やぁ…!」
「嫌」と言ったのにレナード様の舌は逆の乳首に移動しただけで、唾液でドロドロとなった乳首は長い指によってクニクニといじくりまわされる。
下腹部が熱くなるような快感が襲う。
嫌じゃない。
嫌じゃないけど怖い。
レナード様が怖いんじゃない。
このまま快感に飲み込まれることが怖い。
だけどこのキスも、愛撫も、止まってほしくない。
自分しか知らないこの秘密の行為を終わらせたくない。
「レ、レナッ…ド、さまっ……すきっ……!好きなの…ッ」
乳首だけでなく胸の柔肉ごと口に含むレナード様だが、彼は今きちんと眠っている。
だから言った。
だから告白した。
届くわけないとわかっていたから。
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