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名前を呼んで④
しおりを挟むその後も特に何のトラブルもなく、ピクニックは終わった。
演技っぽくないように目を覚まし、ボケーっとした私をいつものようにレナード様が寝ぐせを手櫛で直し、目覚めのお茶を甲斐甲斐しく用意してくれたあと、ちゃんとキャッチボールをして遊んでから、一緒に図書館に寄って調べものをしてから家に帰った。
その後もいつも通りレナード様が作った夕食を食べ、お風呂に入った後、就寝のために2人で私の部屋で寛いでいる。
「今日は付き合ってくれてありがとうございました!お弁当もありがとうございます」
「いや、俺も楽しかったよ。あなたがあんなに剛速球を投げられるとは思わなかった」
「コントロールはないですけどね!」
「確かに。あれを捕球するのは苦労した」
「えー軽々捕ってたように見えましたけど」
楽しく話をしていてもやってくる眠気。
昼に少し眠ったけれどその後に体を動かしたからか、今日はいつもより眠くなるのが早い。
私の眠気にレナード様は素早く気付き、「眠いのか?」と優しく聞いた。
偽る理由もなくコクンと頷くとレナード様が優しい笑みで私の前髪を撫でた。
「すみません…レナード様は眠いですか…?」
「そうだな、俺も今日は久々に体を動かしたから早めに横になりたい」
「ん…そうしましょ」
「あぁ。――――じゃあ、眠いところ悪いが、今日も俺を抱きしめてくれるか?」
毎夜言われるこの台詞は、まるで「おやすみ」という挨拶のように馴染んでしまった。眠い頭でレナード様のほうを向き、いつものように胸に顔を埋めるように抱きしめる。そして腰に逞しい腕が回る。
これが私達の就寝ポーズだ。
「ねぇ、レナード様…」
「ん?」
寝惚けた声で問いかけると、甘さを含めたような声が返ってきた。
その声の甘さが、今の自分にはひどく切ない。
「明日の朝ごはん……甘いのが……いいな」
「フレンチトーストにするか?それともパンケーキ?フルーツサンドもいいな」
「ん~…全部…」
「ッフフ、そんなに食べきれないだろう?」
「レナード様のご飯……美味しいんだもん……」
「店主はいつも美味しそうに食べてくれるから、俺も作り甲斐があって嬉しいよ」
胸元に居るレナード様が笑っているのがわかる。
それがなんだか嬉しくて、眠気がさらに強まり今にも眠りそうだった。
「ねぇ……レナード、さま……」
「ん?どうした?」
「あ……のね……」
もう私の意識は半分以上眠っている。
これから伝えることに対してレナード様がなんと答えるのか、私は悲しくもわかっている。
だからこそ、意識が半分眠った状態で言おうと思う。
「私のこと……“アンナ”って……呼んで………?」
微睡む意識の中、レナード様から返されたわかりきっていた答えを静かに聞き入れた。
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