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名前を呼んで③
しおりを挟むん?リィタ?
ってなんだ?人の名前?
聞いたことない単語を不思議に思うが、恐らくその『リィタ』というのは私を指しているのだろうということが会話の脈絡から考えられる。
だけど友人からそれを言われたレナード様が明らかに動揺したのが膝枕をさせてもらっている私に伝わった。
もしかして『リィタ』ってレナード様の好きな人の名前なんじゃ…?
恋人はいないって言ってたけど好きな人とか元カノくらいいそうだし…。私のことをその人と勘違いしているのだろうか…?
「よかったな!リィタが見つかって!あ、安心して!人のリィタに話しかけないし顔も見ないから!」
ん?どういうこと?
『リィタ』は人の名前じゃないの?
疑問に思っていると不自然な無言の間があったあと、友人さんの空笑いが聞こえた。
「あ~そうだったね、ごめん。レナードはリィタに対して否定的だったね」
「すまない、リィタがいるジャンを否定しているわけではないんだが…」
「いやいや、むしろごめん。レナードがそういう考えを持ってるって聞いてたのに僕の方が迂闊だったね」
「すまない……。それに彼女は俺の不眠の治療をしてくれている人で…」
「そうなんだ。レナードが女性と2人で出かけるなんてビックリしてさ。……ほら、基本僕らは女性と外を歩くなんて無理じゃん?」
「…」
お?
今の言い方からしてレナード様はあまり女性と遊ぶようなことはしていないらしい。
まぁレナード様の真面目さ具合からしてそうだとは思っていたけれど。
ん?でも僕らってどういうことだ?
この人はさっき奥さんのためにお菓子を買いに来たと言っていたはず。それなら奥さんと一緒に出掛ければいいのに。
「……いいなぁって思うときもあるんだよ。僕も奥さんといろんなとこ行ってみたいとも思うよ。僕もヤカグを出るときはレナードと考え似ていたし。……けど、会ってみたらもうダメだった。外出すなんて絶対嫌って思っちゃうんだよなぁ」
「……それがヤカグの血だからな」
「僕のリィタは元々出不精だから今の暮らしにも抵抗ないみたいでほんとよかったよ。あ~~話してたらはやく会いたくなったから僕さっさと菓子買って帰るね!」
「あぁ。じゃあな」
「来月にはちゃんと職場復帰するだろ?」
「そのつもりだ」
「おっけ。それまでゆっくり過ごせよな」
「ジャン、今度お前に話があるんだ。できたら復職する前に…」
友人を呼び止めたレナード様の声はどこか逼迫しているように思えた。
身動きなどしていないが、なお一層気配を消すようにジッとする。
「…わかった。どのみち復職の前に書類渡さないといけないから別の奴に頼もうと思っていたけど僕が持っていくよ。そのときでもいい?」
「あぁ…、頼む」
「うん。じゃあ本当に僕行くね。じゃあ!」
同僚さんが去った後も私の頭を撫でていた手はすっかり止まってしまったまま。
レナード様からため息もなにも聞こえないのに、なぜだか気落ちしているような空気がひしひしと感じられた。
きっと今は起きてはいけない。
やっぱりあと5分はこのままでいよう。――――そう思った。
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