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11 名前を呼んで
しおりを挟む「少し早いが昼食にしよう。デザートもあるからがっつきすぎないようにな?」
「別に私、食べ物にがっつくタイプじゃないんですけど…」
「何を言ってる。いつも元気におかわりしているだろ?」
手際よくバスケットからお弁当を次々とシートの上に広げていく。
そしてあっという間になんともオシャレなピクニックランチセットが出来上がっていた。
「レナード様が作るご飯が美味しいだけです。おかげで結構太ったんですけど」
「店主は今だって細すぎて心配だからむしろもっと太らせよう」
「嫌ですよ!それにレナード様がいなくなったらどうせ痩せるし!」
レナード様が虚を突かれたような顔をして、急に俯きながらお皿に料理を盛り始めた。
長いまつげによって隠されたライムグリーンの瞳が、よく見えない。
そのときになって『レナード様がいなくなったら』という言葉に反応したのだとわかった。
この同居が終わってしまうことを、悲しく思ってくれているのかな……。
それを嬉しく思い、同居が終わる近い未来を寂しく思った。
「あなたの言う痩せるは、やつれると言うんだ。ちゃんと食べてくれ」
「1人でいると食事が面倒だから…」
「食事は体の資本だ。今だって店主は細すぎる。だき……」
急にレナード様の言葉も、取り分ける手も止まった。
「? どうしました?」
「…いや、なんでもない」
「?」
「ほら、食べて?コーンスープも持ってきたんだ」
「わーい!レナード様のコーンスープ大好き!」
私はレナード様が作る物ならなんでも、なんならレナード様自身のことも大好きなのだ!
「はぁ…お腹いっぱい…」
満腹感と心地いい陽気はなんとも素晴らしい。
自分でも呆れるのだがお腹いっぱいになったら眠くなってきてしまった。赤ちゃんか。赤ちゃんはレナード様だぞ。…本人嫌がってるけど。
「眠いのなら寝てもいいんだぞ?」
うつらうつらとしている私の眠りを助長するような優しい声でレナード様が言った。
「んん……でも、…まだレナード様と……キャッチボール、してない……」
「ッハハ、俺とキャッチボールするつもりだったのか?そういえば荷物にボールがあったな」
「だって、ピクニックって言ったら……キャッチボールか、バドミントンでしょ?」
「わかったわかった。少し眠ったあとにキャッチボールしような」
「ん…」
もう目も開けられない。
頭が振り子のようにグラングランと揺れているのがわかる。
横になりたい。
だけどそれすらも億劫だ。
あぁ、眠い。
「――――……こっちにおいで」
レナード様の声はいつだって優しい。
レナード様の瞳もいつだって優しい。
だけど、夜は、違う。
レナード様の手はいつだって熱い。
レナード様の力はいつだって強い。
沈む意識の中、体を優しく動かされている気がする。
コロン、と横になって頭の下にクッションでない何かがあるのがわかった。
いい匂いがする。
そうしてゆっくりと頭を撫でられる。
ゆっくり、ゆっくりと。
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