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10 理解できないこと

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朝食を食べ終えてソファに腰を落ち着けると、レナード様がマダムシャロンの占い雑誌を私の近くに置いてくれる。
そして私の隣に座り、自分は新聞を読むのがお決まりだ。

「はい、いつもの雑誌」
「ありがとうございます!さーて、今日の運勢はどんなかな~」
「店主には悪いが俺には占いのなにが楽しいかわからないな。適当なことが書いてあるだけだろ?」

あからさまに嫌そうな口調をするのは珍しい。
どうやら占いの類はお嫌いのようだ。

「でもいい暇潰しというか、1日の始まりの活力みたいなのになりますよ。新聞にもコラムとか載ってるでしょ?あれを読むみたいな感覚です」
「そう言われるとわからないでもないが…俺はどうにも胡散臭く感じて好かないな。占いとか呪術とか魔法とか、そんなものファンタジー小説の中だけだ」
「でもレナード様と初めて会った日は“人から頼られる”って書かれてましたよ。実際に当たってるでしょ?」

そしてそのあとに苦悩するということも、だけど結果として運勢が良かったことも当たっている。
レナード様を好きになったことを私は喜んでいるし、レナード様に毎夜されることを苦悩している。
それをレナード様には言わないけれど。

「んん…だがどうにも占いを信じることはできないな」
「私もこのマダムシャロンさんに本当に不思議な力があるって思ってるわけじゃないですけど、世の中霊感がある人とか第六感が働く人もいるじゃないですか。そういう他の人には絶対に理解されない“力”みたいなのって結構普通にあると思いますよ」

レナード様が虚を突かれたような顔をした。

「例えば……私、実を言うとりんごの皮が嫌いなんです」
「皮?」
「りんごは好きなんですよ。でも実と皮を一緒には食べられないんです」
「皮なんて味しないだろう」
「ん~味というかあのツルッてした感じとか?とにかくダメなんです。でも、レナード様はりんごの皮がだめって思う私を理解できないでしょう?」
「…まぁ。でもそれとは何か違うような…」
「でも、私からしたらりんごの皮を食べられるってことが理解ができないです。つまりね、何が言いたいかって言うと、人はみんな、多かれ少なかれ人には理解ができない力や考えを持っているっていうことです」
「人には理解できない、考え……」
「国によっても人は考え方が違うでしょう?王様を敬うところもあれば見えない神様を敬う人たちもいる。ある国では国民食の食べ物が違う国では廃棄されている、とかね。人が違えば文化も考え方も違うからそれがある種、他の人からしたら理解できない“力”になってしまうのかなって思います」
「…」

なんだかレナード様が僅かに気落ちしたように見えて慌てて言葉を続けた。

「なんかごめんなさい、偉そうにわけわかんないこと言っちゃって」
「いや…」

レナード様が呆けた表情をしていることに居た堪れなくなって逃げるように雑誌に目を移し、今日の運勢を読み始めた。

以前は全体運をまっさきに読んでから全体を読んでいたが、最近になって1番初めに読む場所が無意識に変わってしまった。
恋愛運。―――そこが真っ先に目に飛び込むようになってしまったのだ。

今日の恋愛運は……あら、あんまり良くない。
『気になる人がいるあなたは思い切って彼をデートに誘ってみよう。彼との関係に変化があるかも!ただし、それが進展とは限りません!ガンバレ☆』


う~ん…。これ結局どうすりゃいいんだろ。



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