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バターライスのオムライス③
しおりを挟むお互いお風呂から上がり、日課の眠りの治療の時間。
いつもはここでリラックスハーブティーを淹れて、お香を焚きながらレナード様にマッサージしてあげたり、眠くなるほどつまらない本を読んだり、とにかくレナード様が眠れるように試行錯誤する。
だけど今日は少し趣向を変えてみる。
そのためにきちんと確認しなければならないことがある。
「あの、レナード様…」
「ん?」
「今日の治療の前に聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」
「いいよ。なんでも聞いて?」
すっかり見慣れたパジャマ姿のレナード様が、リラックスした様子でソファの背もたれに体を預けている。ラフな姿なのに妖艶に見えるのはどうしてなのだろうか。
そして何故だろう。
今から聞くことに、私は緊張している。
無意識に膝の上で握っていた拳がパジャマを掴んだ。
「レナード様は……心に決めている方は、いますか?」
「えっ…」
レナード様が呼吸が止まったかのように固まった。
心なしか顔色が悪くなっていっている気がする。
「あの…?」
「ディランから聞いた、のか…?」
「え?何を」
「すまない、話さずにいて……。そ、そうだよな…、知っていたほうがいいよな…」
「んん?」
いや別に一緒に住んでいるとはいえ恋人の有無の申告は絶対ではないけども。そしてそれを深刻に受け止めなくてもいいんだけども…。
というかこれ、あれだな。恋人いるな。
あ~~~まぁ、そりゃそうか…。
こんなハイスぺイケメンなんだから誰もが放っておくわけないし。でも私と一緒に住めるってことは遠距離なのかな?嫉妬深い人だったらこんな同居、許してくれてないよね?寛容な人なのかな?…それとも、もう別れそうな感じとか?
「すみません、急に。恋人さんがいるようなら……」
「いないんだ……。俺に、決めた人なんて……」
「――――んぅえ?」
今まで生きてきてダントツで間抜けな声が出た。
その間抜け声にレナード様も何故かしていた深刻な表情を消してまた驚いたように私を見た。
え、だって恋人いないことにそんな落ち込む?
いや多少は落ち込んでもいいけどそこまで?心配せずともめっちゃイケメンだからすぐできるでしょうよ。
わけのわかっていない私を置いてレナード様が苦しそうに「ハア…」と嘆くように髪をぐしゃりと握って息を吐いた。
「だが、俺は純血じゃないから…」
「待って待ってレナード様!まずは私の話を聞いてください」
「あ、あぁ…?」
どうにも噛み合っていないような気がしないでもないが、とにかく今は聞くこと聞いてしまおう。
「ではもう1つ聞きますね」
「え?あ、あぁ……」
「私がレナード様に触れたら、不快に思いますか?」
「まさか。そんなはずない」
即答された。
じわじわと込み上げる嬉しさのせいで口角がゆっくりと上がってしまったが、コホンと咳ばらいをしてそれをなんとか拭い去る。
「……店主?この質問の意図はいったい…?」
「っぇと…」
先程から明らかに様子がおかしい私をクマがひどいライムグリーンの瞳が戸惑いながら見つめてくる。
理由のわからない緊張を隠せないまま気付けば膝の上にあった拳が移動され、無意識に自分の胸の部分の服を強く握った。
「あの、レナード様を……だ、抱きしめても……いい、ですか?」
少し声が震えてしまった。
私を見つめるレナード様の鮮やかな瞳を見られなくて強く目を瞑って顔を逸らした。
「……」
「……」
ドクン、ドクン、と自分の鼓動の音が聞こえるほどの無言が続き、その無音に耐えきれなくなって薄く目を開けながらレナード様のほうを見た瞬間、
――――手足の熱が瞬時に消えたような思いとなった。
レナード様の表情が、愕然と悲痛と絶望をごちゃ混ぜにしたものだったからだ。
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