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6 バターライスのオムライス
しおりを挟む「ロザリー!久しぶりー!」
「久しぶり~アンナ~」
訪れたのはオレンジブラウンの髪ともちもちの頬が柔らかそうな友達のロザリーの家。
しかもただの友達ではない。兄ディランの奥さんでもある。
そして現在妊娠中。兄は身重なロザリーを心配してちょくちょく仕事を抜けては家に帰って様子を見に行っているらしい。
確かにロザリーはおっとりとした性格だからそういう意味で多少過保護になる気持ちはわかるけど…。
「来てくれてありがと~。荷物、大変だったでしょ?」
「平気平気。この大荷物をロザリーに持たせるの怖いもん。大事な私の甥っ子か姪っ子がお腹にいるんだから」
「へへ~ありがと。ただでさえ太ってるのにもっと太っちゃったから運動しないとなんだけどね~」
ロザリーと話すとすごく癒される。
確かに少々ぽっちゃりしているが本人も大して気にしていない。
兄なんてロザリーに一目惚れしてその日から今日までうるさいほどロザリー一筋でいる。
兄の数少ない長所は女の見る目がいいところと一途なところだろう。
今回ここを訪れたのはメンテナンス注文を受けていた枕を届けることと、少し早い出産祝いを渡しに来たのだ。
枕屋らしく授乳クッションを作ったため枕とクッションを持ってきての訪問だ。
その2つを渡すと「やっとこの枕で寝れる~!」とギュウと枕を嬉しそうに抱きしめてくれた。
私が作った枕を好きでいてくれることが嬉しい。この枕じゃないと寝られない、と言われることがこの仕事のやりがいにもつながっている。
希望者にはメンテナンスで枕を預かっている間に代わりの枕を渡している。こっちも十分売り物になるものだ。
「代替枕を返すね。これでも寝心地良いけどやっぱりこの枕が1番だよ~!わぁ~!授乳クッション可愛い~!アンナありがとう!」
「気に入ってもらえてよかった!あ、お菓子も持ってきたんだ!よかったら一緒に食べよ!」
「何から何までありがとう~。じゃあお茶淹れるからちょっと待ってね~」
そう言ってロザリーがキッチンに立ち、手際よくお茶を淹れてくれた。
途端にお茶の香りがフワリと部屋中に香った。
「いい香りのお茶だね」
「そうでしょ~?元々好きなお茶なんだけど妊娠初期のときはこの匂いがほんとダメになっちゃったんだ」
「あぁ、匂いに敏感になるって言うもんね」
「うん。些細な匂いがだめになっちゃって外出できなくてさ~。そのときはストレスがすごかったよ~。今はもう平気だけどね」
「暇なときは連絡ちょうだいよ。遊びに来るし」
「っふふ、ありがとう、アンナ。良い親友で良い義妹をもてて幸せだよ」
「こちらこそだよー!あんな兄と結婚してくれて本当に本当にありがとう!!」
「あはは~」
「……あのさ、ロザリーはストレスが溜まったとき、どうやって解消する?」
“ストレス”というワードを聞いてレナード様のことを思い浮かべた。
いろいろ本を読んでストレス解消法を試してみたが、どうにもレナード様には当てはまりそうにないものばかりで完全に行き詰っているのだ。
「ストレス解消法?ん~…そうだな~…あっ」
「えっ!な、何!?教えて!!」
「ん~でもアンナにはちょっと言い辛いな…」
「どういうこと?」
「……好きな人とのハグとキス」
「あ~」
一瞬で私には難しいことと躊躇われたことの理由がわかった。
恋人がいない私に好きな人とのそういった行為はもちろん無理だし、ロザリーが誰とそういうことをしているのかなどすぐにわかる。そりゃ躊躇うよね…。
「あ、でもね!ハグとキスがストレス解消になるっていうのはわたしに限った話じゃないんだよ!産科のお医者さんに教えてもらったの!それに好きな人じゃなくて友達とか親しい人とのハグでもいいんだって!」
「ハグとキスか…」
「アンナ、ストレスすごいの?わたしで良ければ抱きしめようか?」
「…うん。ギュってして」
まだそこまでお腹は大きくないが潰さないように優しくロザリーを抱きしめると、ふんわりとした柔らかさを感じて確かに癒される。
「どう?ストレス解消になったかな?」
「ん~、というか私はロザリーと話すだけで癒されるからな」
「っフフ、アンナってばディラン君と同じこと言ってる。もう、ほんとに仲が良いんだから」
「兄さんと一緒にしないでよ…」
ロザリーに癒されながらレナード様のことを考えた。
レナード様はハグやキスしたりする相手、いるのかな?
そりゃあいるよね。あんなかっこいいし、優しいし、家事も完璧だし。
じゃあその人とハグやキスをするといいですよってアドバイスすればいいのかな。
でも、うちに来てから誰か女性と会っていたという雰囲気がない。そもそも恋人なら不眠症になった期間も会っていたんじゃないかな?
それならもうハグやキスはしていたはずだよね。
それでも治っていないということは効果がないってことかな?それか会ってはいたけどハグやキスもしなかったとか?
それとも、恋人なんていないのかな……?
レナード様は、どういう人が好きなのかな………
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