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 え、それで?②

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「そのせいで集中力も続かないし、体もだるくて食も細くなったからかなり筋力が落ちてしまった」

―――え、それで?
と思ったことは辛うじて言葉にすることを留められた。
今はレナード様の全盛期がどれほどの筋肉だったのか談義に花咲かすわけにはいかない。……それは治ったときにとっておこう。

「さっき薬を飲んでもダメって言っていましたけど睡眠薬を飲んでも眠れないんですか?」
「いや、眠れることは眠れるんだが大して眠っていないのに途中で起きてしまうんだ」
「ん~…それってなんでかわかります?例えば夢を見てるとか」
「夢は…見ているのかもしれないが起きるとまったく覚えていない。ただ自分がものすごく魘されているのはわかる。起きているのと眠りの間のような感覚のときがとても苦しいんだ。睡眠薬を飲むとすぐに眠れるようにはなるのだが、結局魘されてしまうし、薬のせいで起きづらくなってしまうからそれが余計に苦しい」
「なるほど…」


話を整理しよう。
ある日突然不眠症となり、医者も薬もお手上げ状態。
恐らく何かの悪夢を見てそれで魘されているのだろうが、その原因が本人はわかっていない…。

これらのことを考慮して導き出されること、――――それはつまり!!




    ト ラ ウ マ だ !!




親兄弟からひどい虐待をされていた、とか
愛していた恋人に手ひどくフラれ女性不信、とか
痛ましい場面に遭遇してしまった、とか

なんかそんなことが過去にあったのだろう!!

それが本人は無自覚だが2ヶ月前に傷付いてしまって、こういった状況になってしまった。そうに違いない!


となると、私は一体何をすればいいのだろうか…。
まぁまずできることと言えば枕作りかな。今は新規の依頼もないから時間に余裕はあるし、代金は愚かな兄からしっかりいただいている。

だけどやっぱり一緒に住むのはちょっとな…。
何故かそれを強いてくる兄がいろいろうるさく言うだろうけれど、レナード様も乗り気じゃなかったしどうやって兄を説得するかを一緒に話し合おう。

そう思ってカップに残っていたお茶を一気に呷った。――――その瞬間。





ガチャンッッッ!!!






急に何か重い物がダイニングテーブルに叩きつけられたような音がして、思わず少量のお茶と大量の空気を一気にゴックンと飲み込んでしまった。
何が起きたのかはカップを呷っていたせいで見ておらず、急いで顔の前から空のカップを退けると、レナード様が痛そうに、そして恥ずかしそうに額を擦っていた。

「??? どうされたのですか…?今の音は…?」
「いや、見ていなかったのならよかった……」
「見てなかったけど察しました。テーブルにおでこぶつけたんですか?」
「………」


照れてる…。
褐色の肌がみるみるうちに赤く染まっていく。

え、待って。

か、可愛い。
屈強マッチョ騎士様の照れ顔めっちゃ可愛い!!
危うく可愛さで昇天するところだった!


あまりの可愛さに真顔になってしまうと、そんな私の視線に耐えかねたのか、レナード様がさらに頬を染めて目線を外した。

「そ、そんなに冷めた目で見ないでくれっ……」



結局レナード様の照れ顔のあまりの可愛さに無事に昇天した。




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