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 夜。



 サイドテーブルに置いている、先月リュカの誕生日プレゼントとしてあげた満月模様のベッドライトから放たれる淡い光だけを灯す暗い部屋の中。

 壁に大きく映る自分達の影は、一切離れることがなく激しく動いている。





「ヒアッ……ふっ、……っ、ンアァっ!」



 寝ている私を後ろから突くリュカの動きは一貫して激しくない。

 私の体と足を気遣っているのかもしれないが、その緩慢な動きと胸を包み込むように揉む手つきは快感という雪を津々と積もらせていくかのよう。その快感が苦しいのに、キスが止むことはなく満足に息を吸うことも吐くこともできない。



 まるで責め苦みたい。

 それなのに私はどこまでも幸福を感じている。



「ハッ、ンアッ゛……っひ、あぁ」

「ラーラ、舌、だして」

「――――~~~っっ゛!!」



 舌を吸われながら子宮口を押し付けられることが弱いと、この濃密な時間でわかったリュカは、嬉々としてそれを行ってくる。

 今まさにイッているために快楽にとっぷり浸かった私の目を、リュカは至近距離で見つめながら目を細めた。それが嬉しくて絶頂の余韻が長引いてしまう。すると今度はキスを止めて私の体の向きを変え、向い合せにし、未だ体が震えてしまう私のことを嬉しそうに見つめた。



「……かわいい」



 野性味を感じさせながらも恍惚に呟いたリュカは、繋がったまま私の膝を腕に絡めるようにして体を倒してきた。リュカの腕のせいで脚を下ろせず折りたたまれ、より奥に熱杭が埋まったように思え、ようやく余韻から少し抜け出そうとしていたのに引き戻されてしまう。



「ンンン~~~ッ、ヒッ、りゅ、りゅかぁ……ッ!」

「足、痛くない?」

「ぃっ、痛く、なっ……ァ、待っ……っ゛、奥、当たっ……――ヒグッ!?」





 激しくないけれど強いストロークに、快感が体の芯をかけ巡った。





 ドチュン、ドチュン、とリュカの熱杭が一突き一突き、深々と刺さってくる。

 その動きを潤滑にしているのリュカの白濁液と私の愛液が混ざったモノが、お尻の穴を伝ってゆっくりとベッドに落ちていく。



「ハッ、あ……ッンァ……き、もちっ、ぃい……ッ、ぁんっ!」

「うん。俺も、気持ちいいっ……」



 子宮口を圧し潰される度に声が出てしまう。

 それでも必死に享受されている刺激が悦いことを伝えると、リュカが安心したように笑いながら抽挿を深めていく。



「ァヒッ、んぅ……ハッ、ァアッ!」

「……っ、ラーラ、これで最後にするから、少し強くするよ?」

「んっ……ぅんっ……!」



 体を折りたたまれた私とは対照的に、リュカは体を伸ばして腰を振り、打擲音が暗い部屋に響いている。

 今までにない速い動きは、いつの間にかリュカによって作られた弱い部分を容赦なくノックして、恐ろしいほどの快楽が生まれている。だけど体を固定されているせいで、その快楽から逃げられない。



「アァッ゛!……ぁひっ、んン゛……ひぁ、あっ!」

「っ!締まっ……すげっ……っ」



 こんなに激しく動き、声を上げているというのに、それでも結合しているところから粘りを帯びた水音が聞こえてくる。



「ンァあ゛……っ、りゅ、かぁ……!ンアっ……ァ、リュカぁあっ!」

「……っ゛、も、イクっ」

「―――~~~ンンッ゛……!!」



 リュカの肌が一際くっついていると思ったと同時に、既にこの時間で何度も体感した熱がへその裏側でじんわりと広がっていく。

 すべて支配されるような激しい抽挿が止み、互いの体液でグチャグチャになっている部分が繋がったまま、唾液を絡めるようなキスを交わしていく。

 その間、リュカは「がんばったね」と言ってくれているかのようにずっと頭を撫でてくれた。







 ――リュカはいつも本当に優しい。



 だけどそれは、リュカが持つ“傷”がゆえのことだったのかもしれない。

 私は獣人よりも遥かに弱い人間で、しかも足も悪いから、だから大切に大切に守らなくちゃ、と思っていたのかもしれない。

 そんなことを知らず、日々リュカへの溢れる想いを伝えていた自分の能天気さに呆れてしまう。



 きっとリュカは、私人間と付き合うと決めるまでにたくさん迷って、そして付き合ってからもたくさん悩んできたんだね。

 男の人にとってソコが機能しなくなってしまうことがどれほどつらいのか、私には推し量れないけれど、それでも私を手放そうとしないでいてくれたことが本当に嬉しい。





 ありがとう。

 嬉しい。

 好き。





「私……リュカが好きすぎて、もうわけわかんない……」

「ハハッ!」



 情炎の熱が引かないまま、結局いつものように溢れ出る想いを口にすると、楽しそうに笑ったリュカと目が合った。

 リュカの満月色の瞳は、いつもよりも熱く、そしていつも通りの優しさでふわりと細まった。





「俺も、ラーラがいなくなるかもって考えただけで壊れるほど、ラーラが好きだよ」

「ッフフ」





 その言葉に少し笑ってしまってから、どちらからともなく唇を合わせた。





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