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21 ちょーほーぶたい

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 その日、ジャックの背中に乗っかって、ルルは空を見上げていた。

「めぇ?」
「……」

 だんだん怪しくなってきた空模様、そうかと思えば唐突に、雨が降り出した。

「めぇ!? めぇめぇ!!」
「めっ」

 びっくりしたジャックが、騒ぎながら逃げようとするが、ルルは非情にもそのツノを掴んで離さない。

「戻ったぞ、ルル!」
『タダイマ!』

 ぽちゅん、とルルの目の前のジャックの頭に落ちてきた水滴は、その後に降り注ぐ雨粒を吸収し、大きくなっていく。

「ん」

 ルルは満足げに頷き、両手でポポを掬い上げた。


「ジャック、やね」
「めぇ!」

 ルルは、慌てて軒下に逃げ込んだジャックから飛び降りる。
 
 そして、ジャックがぶるぶる体を振って水滴を飛ばしたのを見計らい、再びその上に上る。


「おつかい、どうだった?」

『タノシカッタ!』
「ん」

 ルルはポポを抱きしめ、頬ずりして褒めたたえる。

「ルルはポポに甘いんだな」
「ん。ポポ、ぽよぽよ。いつくしむ」

「ジャックにも、たまには優しくしてやった方がいいんじゃないか?」
「……」
「……」
「……」
「……ルル?」

「それはともかくとして、おつかい、どうだった?」
「そんな露骨な話題の逸らし方あるか?」

 ルルはポポをひざの上に置き、撫でながらニコに尋ねる。


「……そうだな。言われた通り、ワラワは中央都市へ向かい、この地にて起きたことの真実を調べて来たぞ。教会、とかいうところで聞いたので、これはほとんど間違いのない事実だ。侵入にはちょっと苦労したが」

「ごくろう」
「いよいよ、魔物の王の風格が出てきたようで何よりだ」

 ニコはポポの中から答える。


「この地に疫病が蔓延っている、というのは、どうやら民衆の間に広められた偽りだったようだ。
「この地には教会の保有する研究所という場所の支部があり、その支部が研究のため捕らえたフラメン・ケイが、そのまま逃げ出してしまったのを、なんとか包み隠そうとした結果だ」

「……」

「フラメン・ケイは生物に寄生するだろう。この地の民衆に寄生してしまった彼らを排除するため、寄生が疑われる民衆を見つけ次第収容、調査、処刑する口実として、疫病を利用したのだ」

「……」

「実際に流行していた疫病らしきものは、教会が撒いた毒、だったようだ。しかし、最後にはむしろそのせいで収集が付かなくなり、結局全ての人間が退避する事態となったようだが」

「……」

「本部の方はそれを承知しておらず、中央都市の方ではかなり揉めていたぞ。こちらが完全にノーマークだったのはそのせいだ。
「しかしその揉め事も、最近解決してしまったようだな。近々、疫病もといフラメン・ケイを殲滅するための作戦が開始されてしまう」


「ほうほうは?」

「方法? あぁ、作戦のか。もちろん調べて来たぞ。何人も水の……いや、知恵を得たスライムの耳からは逃れられないからな。消毒薬を撒くそうだ。もちろん、実際には消毒どころか、有毒だが」

「……」

「この辺りの環境への影響も鑑みて、中止すべきだという意見もあったが、恐らく、止まらないだろうな。それほど教会の力というのは大きいようだ」

「ん」

 ルルは満足げに頷き、ポポをひざから降ろしてジャックの背中に横になった。


「いや、ん。じゃない。どうするんだ? 早く彼らを移動させないと、皆殺しだぞ」

「みんな、いどう、しない」

「ここを守り抜くのか? 確かに、この前は上手くいったかもしれないが、今度やって来るのは新人冒険者じゃない。それに、この街は細長くて周囲の地形も険しいから、魔法陣も難しいんじゃないのか?」

「だいじょうぶ」

 ルルは頷き、また空を見上げた。


「きょうかい、つぶす」
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