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10 最終章
収集中……
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市場には、たくさんの人がいた。
店の種類も雑多に並んでいる。
食料品店の隣に衣料品店があったり、靴屋さんの向かいに屋台があったり、武器屋や素材屋、その他様々な屋台や露店がランダムかつ乱雑に立ち並んでいる。
「はい。ここはいい店だよ。他より値は張るけど、味は一番。値段も、ぼったくりってほどでもねーし」
「ありがとテウォン」
わたしは、シアトルさんに渡されたリストに書かれたものを、おつかいで買い集めている。
例の如くいつものようについてきた、テウォンと一緒だ。
別に頼んだわけではないのだけど、話の流れでダンジョンに行く話をしたら、クルルさんを説得し、案内してくれることになった。
正直、すごく助かっている。テウォンはこの街のことを知り尽くしていて、商品の相場や店ごとの特徴まで分かって、わたしを案内してくれた。
「スズ、おやつ?」
「おやつ? 魔石のこと?」
ついでに、キースは人の姿になってついてきている。
未だに二足歩行は慣れないみたいで、ちょっとヨタヨタしてるけど、すごく楽しそうだ。
その理由は明白で、キースの手の中にある。
「クゥ、クゥ」
「そうだって。これ、これほしい」
キースは、両手をお皿の形にして、その上にクドを乗せていた。
クドもクドで、外を散歩できるのが嬉しいらしく、周囲を見回しては、クゥクゥ鳴いている。
「オマエ、オレといる時より楽しそうだなー」
テウォンがちょっと嫉妬している。テウォンの嫉妬は怖い。
わたしは、スードルとテウォンが言い争ったときを思い出し、絶対に言い争わないように微妙に話題を逸らすことにした。
「えーっと、テウォンは、いつもバッグの中に入れてるんだっけ?」
「前は、肩とか頭に乗せてたんだけどな。冒険者の人がさ、襲われてんじゃねーかとか言って来るんだよ」
「襲われて……?」
「なんか、きせーされてるように見えるらしくてさ」
「き、寄生……」
そんな魔物もいるんだろうか。
声をかけた冒険者さんも、心配してくれたんだろうけど……寄生……
「でも、キースは大丈夫だよね。あんまり言われない」
「スズネは見るからに冒険者だからな。テイマーに見えるんじゃねーの?」
「確かに、キースは特別感あるかも……」
キースには、精霊族の女の子さんに貰った魔眼がある。
オッドアイなので、すっごい目立つのだ。
「クドも、キースみたいになれねーのかなー」
「うーん……難しい、かもね」
「ふーん、まあいいや。小さいのもかわいーしな」
クドは、買ってもらった魔石を、ぽりぽり齧って食べている。
魔石はとてもポピュラーなので、小さいものなら基本的にどんなお店でも売っていることが多い。
もちろん、決して幻獣のおやつ用ではない。
「あらまぁ」
お店の人が、びっくりして目を丸くしている。わたしの知ってる限り、ホーンウルフも魔石は食べない。
直でバリバリするのは、珍しい光景だろうなぁ……
「えっと。すみません。これ、いっぱいありますか?」
「ええ。お嬢ちゃん、おつかいかしら?」
「あ、はい。頼まれたんです」
「偉いわねぇ」
わたしは、携帯食糧を買って、ちゃんと数を数え、リストにチェックを入れた。
「そんなに買うのか?」
「うん。人数分必要だし、予備も必要なんだって」
「ふーん……冒険者も、色々考えてんだな。あ、おばさん、オレも買うよ」
「あら、あなたもお使いなの?」
「オレは違うよ。自分で食べる」
テウォンも、わたしと同じ携帯食糧を買っていた。
お菓子みたいなものだから、おやつ代わりに食べたりするのかもしれない。
「次はどこ? 着替えとかもいるんだろ」
「着替えは買わなくても大丈夫だよ。いつも旅してるから」
「じゃあ、旅は慣れてんだな」
「うん。ダンジョンは初めてだけどね。次は、魔道具かな。23階で使うんだって」
「魔道具だな」
テウォンは歩き出した。キースはその間に、わたしは、そのすぐ後ろをついていく。
「クゥ」
「うん、うん」
「クゥ……」
「スズは、いいって言ってた」
「クゥ、クー」
「そうだよ」
「クー」
「キースも」
キースは、クドと何かを話している。
幻獣同士、何か共通点とかあるんだろうか。
話は弾んでるみたいだ。
内容が気にならなくもないけど、せっかく楽しそうだしそっとしとこう。
わたしはキースを追い抜かして、テウォンの横に並んだ。
「テウォン、ここらへん詳しいんだね」
「いつも来てるから」
「買い物?」
「あと暇つぶし」
「暇つぶし?」
「家にいても、つまんねーし。最近は忙しいけどさー、クルルのとこにも、そんなに仕事があるわけじゃねーから」
テウォンは暗殺者みたいに人混みを難なくすり抜けていく。
まるで歩いてる人の思考を読んでるみたいだ。
「テウォンって、人がたくさんいるところを通るの、得意だよね」
「そうか? 別に、普通だろ。そんなに人にぶつかったりしねーよ」
テウォンはわたしを振り返り、後ろ向きに歩き出した。それでも誰かとぶつかることはない。
「今はクドがいるしな。先を教えてくれる。それにオレは、影が薄いってよく言われるんだよ」
「それは違うと思うけど……」
「そうか? オレ、自分でも影は薄いと思うけどな」
「そ、そんな悲しいこと言わないでよ、テウォン……」
「別に悲しくねーだろ。魔獣に気づかれることもねーし、こっそり坑道にも入れるし、便利だよ。ゲートとかも反応しねーし。大人にくっついていけば、どこにでも入れる」
あまりそういう感じはしなかったけど、わたしが尾行に気づけないのも、そういう理由があったりするんだろうか。
確かに、そこまで来ると一種の才能だったりするのかな……
「……あのさ、スズネ」
テウォンは、少し首を傾げて言った。
「何かあった?」
「ダンジョン、明日行くんだろ」
「そうだよ」
「何時?」
「え、何時って、どうして?」
「……クルルに聞いて来いって言われたんだよ。見送りたいんだってさ」
「え、悪いよそんなの。クルルさんも忙しいでしょ?」
「オマエは困らないだろ。クルクルクルルが行きたいなら行かせてやれよ」
まあ確かに、無理に断るほどでもない。
わたしは何とはなしに、テウォンに答えた。
「一応、お昼の予定だよ」
「ふーん。昼休みじゃん。ちょうどいいな」
「テウォンも来てくれるの?」
「何に?」
「見送り。来てくれる?」
「行かねーよ。オレは明日、忙しいし」
「あ……そうなんだ」
来てくれるのかと思ったから、なんかちょっと拍子抜けだ。
まあでも、忙しいなら仕方ない。
急に決まったことだし。
テウォンは、全部のお店を、最後まで淡々と案内してくれた。
キースとクドは相変わらず仲良しで、キーキークークー、楽しそうに会話していた。
店の種類も雑多に並んでいる。
食料品店の隣に衣料品店があったり、靴屋さんの向かいに屋台があったり、武器屋や素材屋、その他様々な屋台や露店がランダムかつ乱雑に立ち並んでいる。
「はい。ここはいい店だよ。他より値は張るけど、味は一番。値段も、ぼったくりってほどでもねーし」
「ありがとテウォン」
わたしは、シアトルさんに渡されたリストに書かれたものを、おつかいで買い集めている。
例の如くいつものようについてきた、テウォンと一緒だ。
別に頼んだわけではないのだけど、話の流れでダンジョンに行く話をしたら、クルルさんを説得し、案内してくれることになった。
正直、すごく助かっている。テウォンはこの街のことを知り尽くしていて、商品の相場や店ごとの特徴まで分かって、わたしを案内してくれた。
「スズ、おやつ?」
「おやつ? 魔石のこと?」
ついでに、キースは人の姿になってついてきている。
未だに二足歩行は慣れないみたいで、ちょっとヨタヨタしてるけど、すごく楽しそうだ。
その理由は明白で、キースの手の中にある。
「クゥ、クゥ」
「そうだって。これ、これほしい」
キースは、両手をお皿の形にして、その上にクドを乗せていた。
クドもクドで、外を散歩できるのが嬉しいらしく、周囲を見回しては、クゥクゥ鳴いている。
「オマエ、オレといる時より楽しそうだなー」
テウォンがちょっと嫉妬している。テウォンの嫉妬は怖い。
わたしは、スードルとテウォンが言い争ったときを思い出し、絶対に言い争わないように微妙に話題を逸らすことにした。
「えーっと、テウォンは、いつもバッグの中に入れてるんだっけ?」
「前は、肩とか頭に乗せてたんだけどな。冒険者の人がさ、襲われてんじゃねーかとか言って来るんだよ」
「襲われて……?」
「なんか、きせーされてるように見えるらしくてさ」
「き、寄生……」
そんな魔物もいるんだろうか。
声をかけた冒険者さんも、心配してくれたんだろうけど……寄生……
「でも、キースは大丈夫だよね。あんまり言われない」
「スズネは見るからに冒険者だからな。テイマーに見えるんじゃねーの?」
「確かに、キースは特別感あるかも……」
キースには、精霊族の女の子さんに貰った魔眼がある。
オッドアイなので、すっごい目立つのだ。
「クドも、キースみたいになれねーのかなー」
「うーん……難しい、かもね」
「ふーん、まあいいや。小さいのもかわいーしな」
クドは、買ってもらった魔石を、ぽりぽり齧って食べている。
魔石はとてもポピュラーなので、小さいものなら基本的にどんなお店でも売っていることが多い。
もちろん、決して幻獣のおやつ用ではない。
「あらまぁ」
お店の人が、びっくりして目を丸くしている。わたしの知ってる限り、ホーンウルフも魔石は食べない。
直でバリバリするのは、珍しい光景だろうなぁ……
「えっと。すみません。これ、いっぱいありますか?」
「ええ。お嬢ちゃん、おつかいかしら?」
「あ、はい。頼まれたんです」
「偉いわねぇ」
わたしは、携帯食糧を買って、ちゃんと数を数え、リストにチェックを入れた。
「そんなに買うのか?」
「うん。人数分必要だし、予備も必要なんだって」
「ふーん……冒険者も、色々考えてんだな。あ、おばさん、オレも買うよ」
「あら、あなたもお使いなの?」
「オレは違うよ。自分で食べる」
テウォンも、わたしと同じ携帯食糧を買っていた。
お菓子みたいなものだから、おやつ代わりに食べたりするのかもしれない。
「次はどこ? 着替えとかもいるんだろ」
「着替えは買わなくても大丈夫だよ。いつも旅してるから」
「じゃあ、旅は慣れてんだな」
「うん。ダンジョンは初めてだけどね。次は、魔道具かな。23階で使うんだって」
「魔道具だな」
テウォンは歩き出した。キースはその間に、わたしは、そのすぐ後ろをついていく。
「クゥ」
「うん、うん」
「クゥ……」
「スズは、いいって言ってた」
「クゥ、クー」
「そうだよ」
「クー」
「キースも」
キースは、クドと何かを話している。
幻獣同士、何か共通点とかあるんだろうか。
話は弾んでるみたいだ。
内容が気にならなくもないけど、せっかく楽しそうだしそっとしとこう。
わたしはキースを追い抜かして、テウォンの横に並んだ。
「テウォン、ここらへん詳しいんだね」
「いつも来てるから」
「買い物?」
「あと暇つぶし」
「暇つぶし?」
「家にいても、つまんねーし。最近は忙しいけどさー、クルルのとこにも、そんなに仕事があるわけじゃねーから」
テウォンは暗殺者みたいに人混みを難なくすり抜けていく。
まるで歩いてる人の思考を読んでるみたいだ。
「テウォンって、人がたくさんいるところを通るの、得意だよね」
「そうか? 別に、普通だろ。そんなに人にぶつかったりしねーよ」
テウォンはわたしを振り返り、後ろ向きに歩き出した。それでも誰かとぶつかることはない。
「今はクドがいるしな。先を教えてくれる。それにオレは、影が薄いってよく言われるんだよ」
「それは違うと思うけど……」
「そうか? オレ、自分でも影は薄いと思うけどな」
「そ、そんな悲しいこと言わないでよ、テウォン……」
「別に悲しくねーだろ。魔獣に気づかれることもねーし、こっそり坑道にも入れるし、便利だよ。ゲートとかも反応しねーし。大人にくっついていけば、どこにでも入れる」
あまりそういう感じはしなかったけど、わたしが尾行に気づけないのも、そういう理由があったりするんだろうか。
確かに、そこまで来ると一種の才能だったりするのかな……
「……あのさ、スズネ」
テウォンは、少し首を傾げて言った。
「何かあった?」
「ダンジョン、明日行くんだろ」
「そうだよ」
「何時?」
「え、何時って、どうして?」
「……クルルに聞いて来いって言われたんだよ。見送りたいんだってさ」
「え、悪いよそんなの。クルルさんも忙しいでしょ?」
「オマエは困らないだろ。クルクルクルルが行きたいなら行かせてやれよ」
まあ確かに、無理に断るほどでもない。
わたしは何とはなしに、テウォンに答えた。
「一応、お昼の予定だよ」
「ふーん。昼休みじゃん。ちょうどいいな」
「テウォンも来てくれるの?」
「何に?」
「見送り。来てくれる?」
「行かねーよ。オレは明日、忙しいし」
「あ……そうなんだ」
来てくれるのかと思ったから、なんかちょっと拍子抜けだ。
まあでも、忙しいなら仕方ない。
急に決まったことだし。
テウォンは、全部のお店を、最後まで淡々と案内してくれた。
キースとクドは相変わらず仲良しで、キーキークークー、楽しそうに会話していた。
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