107 / 143
10 最終章
友達のお姉さん
しおりを挟む
わたしは夕方から夜にかけてクルルさんの仕事を手伝った後、テウォンの家に泊めてもらうことになった。
家というか、キャンプの一部、仮設テントなのだけど。
その作りはかなりしっかりしていて、見た目には全然テントに見えない。
布でできてるけど、普通の家みたいだ。すごいなぁ。
部屋には、半分水で半分陸になっているような水槽があり、クドはその中に収納されている。
今は陸に上がり、甲羅を干しているようだ。
見た目だけじゃなく、扱いまでカメなんだな……
「また会えて嬉しいですわ、スズネさん」
「お姉さんは……その、大変だったですね……」
相変わらず、美人なお姉さんだ。
わたしに対しても丁寧に話してくれるのは、やっぱり宿屋のお姉さんだからなのだろうか。
優しく微笑むお姉さんは、ホットミルクを差し出しながら「心配ありませんよ」と言った。
「テウォンがよく手伝ってくれますから」
「そうなんですか。テウォン、優しいですね」
「そんなことねーよ。家族を手伝うなんて、当然のことだろ」
テウォンは、本当に何でもなさそうにそう言った。
「じゃあオレ、洗濯に行くけどさ。スズネはなんか洗濯するものあるか?」
「わたしも手伝うよ」
「いいよ。オマエ、今日こっち来たばっかりなんだろ? 疲れてるだろうし、今日は休んどけよ」
「キー!」
「ん?」
急にキースが鳴いた。
キースは、テント内の天井の柱に逆さにぶら下がっているらしい。
「キー、キー」
「なんて言ってんだ?」
「クドと遊びたいんだって」
「それなら、遊んだら? 暴れたりしないから。じゃ、オレは行く」
テウォンはそう言い、ランドリーバッグを持って出て行った。
この世界にも、コインランドリー的なものがあったりするんだろうか?
わたしはいつも魔術でざぶざぶ洗っちゃうから、分からないけど……
「キー」
キースはさっそく水槽に近づき、クドに話しかけ始めた。同じ幻獣同士、何か通じ合うものがあったりするのかもしれない。
「クゥ」
「キーキー」
「……クゥ」
「キー?」
「クゥー」
哺乳類と爬虫類の会話が続く。
「キー」
キースはハムスターくらいのサイズになり、水槽に入った。
有利を取れてるのは体長によるものなんだから、絶対やめた方がいいと思うけど……
「スズネさんは、テウォンと仲良くしてくださっているんですね」
「えっ?」
キースの翼がいつパクッといかれるのかと、ひやひやして眺めていたわたしは、お姉さんに話しかけられて、思わず聞き返してしまった。
お姉さんは優しく微笑んでいる。
「スズネさんは、テウォンと優しくしてくださってるんだなと。姉の私も、あんなに楽しそうなテウォンなんて滅多に見ませんから」
「えっ……だ、大丈夫なんですか?」
「ふふっ。大丈夫ですよ。最近は、可愛いお友達もできましたから」
クドを見つめながら、お姉さんは微笑む。
「あの子、冒険者さんからもらったんですよね?」
「そうみたいですね。スズネさんのお知り合いの冒険者の方だとか」
「え、わたしの?」
確か、テウォンは「ドワーフの冒険者」とか言ってたはずだけど。
わたし、ドワーフの冒険者の知り合いなんていたかな……
「あの子は、本当に喜んでいましたわ。何もかもスズネさんのおかげですね」
「そんなこと……ないですよ。テウォンって、本当に、わたし以外に付き合いないんですか?」
「この辺りには、子供が少ないですからね」
と、お姉さんはまた穏やかにそう言った。
「ですが近頃は、職人さん方のところにお世話になっているみたいで、そちらで楽しくしているようですよ。あの子も懲りたのか、坑道でも無茶をすることが減りました」
「そうなんですか。お姉さんも、安心ですね」
「ええ」
お姉さんは、わたしにミルクのおかわりをくれた。
「キー!」
キースが大きな声を上げたので、わたしは水槽の方を見た。
クドは両手両足に首まで全部、甲羅の中に仕舞って動かなくなっていた。
キースはそれをなんとかほじくりだそうとして、甲羅に噛みついてみたりしている。
「キース、ダメだよやめてあげて」
「キー、キー」
「小さいんだから、優しくしてあげなきゃ。疲れて眠たいんだよ。そっとしておいてあげようよ」
「……キー」
キースは嫌々ながら納得し、わたしの方に飛んできた。
そしてわたしの目の前にぺたっとなったので、わたしはそれをよしよし撫でる。
キラキラもいいけど、やっぱりわたしはもふもふ派かな。
家というか、キャンプの一部、仮設テントなのだけど。
その作りはかなりしっかりしていて、見た目には全然テントに見えない。
布でできてるけど、普通の家みたいだ。すごいなぁ。
部屋には、半分水で半分陸になっているような水槽があり、クドはその中に収納されている。
今は陸に上がり、甲羅を干しているようだ。
見た目だけじゃなく、扱いまでカメなんだな……
「また会えて嬉しいですわ、スズネさん」
「お姉さんは……その、大変だったですね……」
相変わらず、美人なお姉さんだ。
わたしに対しても丁寧に話してくれるのは、やっぱり宿屋のお姉さんだからなのだろうか。
優しく微笑むお姉さんは、ホットミルクを差し出しながら「心配ありませんよ」と言った。
「テウォンがよく手伝ってくれますから」
「そうなんですか。テウォン、優しいですね」
「そんなことねーよ。家族を手伝うなんて、当然のことだろ」
テウォンは、本当に何でもなさそうにそう言った。
「じゃあオレ、洗濯に行くけどさ。スズネはなんか洗濯するものあるか?」
「わたしも手伝うよ」
「いいよ。オマエ、今日こっち来たばっかりなんだろ? 疲れてるだろうし、今日は休んどけよ」
「キー!」
「ん?」
急にキースが鳴いた。
キースは、テント内の天井の柱に逆さにぶら下がっているらしい。
「キー、キー」
「なんて言ってんだ?」
「クドと遊びたいんだって」
「それなら、遊んだら? 暴れたりしないから。じゃ、オレは行く」
テウォンはそう言い、ランドリーバッグを持って出て行った。
この世界にも、コインランドリー的なものがあったりするんだろうか?
わたしはいつも魔術でざぶざぶ洗っちゃうから、分からないけど……
「キー」
キースはさっそく水槽に近づき、クドに話しかけ始めた。同じ幻獣同士、何か通じ合うものがあったりするのかもしれない。
「クゥ」
「キーキー」
「……クゥ」
「キー?」
「クゥー」
哺乳類と爬虫類の会話が続く。
「キー」
キースはハムスターくらいのサイズになり、水槽に入った。
有利を取れてるのは体長によるものなんだから、絶対やめた方がいいと思うけど……
「スズネさんは、テウォンと仲良くしてくださっているんですね」
「えっ?」
キースの翼がいつパクッといかれるのかと、ひやひやして眺めていたわたしは、お姉さんに話しかけられて、思わず聞き返してしまった。
お姉さんは優しく微笑んでいる。
「スズネさんは、テウォンと優しくしてくださってるんだなと。姉の私も、あんなに楽しそうなテウォンなんて滅多に見ませんから」
「えっ……だ、大丈夫なんですか?」
「ふふっ。大丈夫ですよ。最近は、可愛いお友達もできましたから」
クドを見つめながら、お姉さんは微笑む。
「あの子、冒険者さんからもらったんですよね?」
「そうみたいですね。スズネさんのお知り合いの冒険者の方だとか」
「え、わたしの?」
確か、テウォンは「ドワーフの冒険者」とか言ってたはずだけど。
わたし、ドワーフの冒険者の知り合いなんていたかな……
「あの子は、本当に喜んでいましたわ。何もかもスズネさんのおかげですね」
「そんなこと……ないですよ。テウォンって、本当に、わたし以外に付き合いないんですか?」
「この辺りには、子供が少ないですからね」
と、お姉さんはまた穏やかにそう言った。
「ですが近頃は、職人さん方のところにお世話になっているみたいで、そちらで楽しくしているようですよ。あの子も懲りたのか、坑道でも無茶をすることが減りました」
「そうなんですか。お姉さんも、安心ですね」
「ええ」
お姉さんは、わたしにミルクのおかわりをくれた。
「キー!」
キースが大きな声を上げたので、わたしは水槽の方を見た。
クドは両手両足に首まで全部、甲羅の中に仕舞って動かなくなっていた。
キースはそれをなんとかほじくりだそうとして、甲羅に噛みついてみたりしている。
「キース、ダメだよやめてあげて」
「キー、キー」
「小さいんだから、優しくしてあげなきゃ。疲れて眠たいんだよ。そっとしておいてあげようよ」
「……キー」
キースは嫌々ながら納得し、わたしの方に飛んできた。
そしてわたしの目の前にぺたっとなったので、わたしはそれをよしよし撫でる。
キラキラもいいけど、やっぱりわたしはもふもふ派かな。
3
お気に入りに追加
671
あなたにおすすめの小説
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
異世界転生 勝手やらせていただきます
仏白目
ファンタジー
天使の様な顔をしたアンジェラ
前世私は40歳の日本人主婦だった、そんな記憶がある
3歳の時 高熱を出して3日間寝込んだ時
夢うつつの中 物語をみるように思いだした。
熱が冷めて現実の世界が魔法ありのファンタジーな世界だとわかり ワクワクした。
よっしゃ!人生勝ったも同然!
と思ってたら・・・公爵家の次女ってポジションを舐めていたわ、行儀作法だけでも息が詰まるほどなのに、英才教育?ギフテッド?えっ?
公爵家は出来て当たり前なの?・・・
なーんだ、じゃあ 落ちこぼれでいいやー
この国は16歳で成人らしい それまでは親の庇護の下に置かれる。
じゃ16歳で家を出る為には魔法の腕と、世の中生きるには金だよねーって事で、勝手やらせていただきます!
* R18表現の時 *マーク付けてます
*ジャンル恋愛からファンタジーに変更しています
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
異世界居酒屋さわこさん細腕繁盛記
鬼ノ城ミヤ(天邪鬼ミヤ)
ファンタジー
陸奥さわこ 3*才独身
父が経営していた居酒屋「酒話(さけばなし)」を父の他界とともに引き継いで5年
折からの不況の煽りによってこの度閉店することに……
家賃の安い郊外へ引っ越したさわこだったが不動産屋の手違いで入居予定だったアパートはすでに入居済
途方にくれてバス停でたたずんでいたさわこは、そこで
「薬草を採りにきていた」
という不思議な女子に出会う。
意気投合したその女性の自宅へお邪魔することになったさわこだが……
このお話は
ひょんなことから世界を行き来する能力をもつ酒好きな魔法使いバテアの家に居候することになったさわこが、バテアの魔法道具のお店の裏で居酒屋さわこさんを開店し、異世界でがんばるお話です
めんどくさがり屋の異世界転生〜自由に生きる〜
ゆずゆ
ファンタジー
※ 話の前半を間違えて消してしまいました
誠に申し訳ございません。
—————————————————
前世100歳にして幸せに生涯を遂げた女性がいた。
名前は山梨 花。
他人に話したことはなかったが、もし亡くなったら剣と魔法の世界に転生したいなと夢見ていた。もちろん前世の記憶持ちのままで。
動くがめんどくさい時は、魔法で移動したいなとか、
転移魔法とか使えたらもっと寝れるのに、
休みの前の日に時間止めたいなと考えていた。
それは物心ついた時から生涯を終えるまで。
このお話はめんどくさがり屋で夢見がちな女性が夢の異世界転生をして生きていくお話。
—————————————————
最後まで読んでくださりありがとうございました!!
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる