滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!

白夢

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10 最終章

相棒自慢

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「噂はこっちまで届いてたの。スズネは自慢のお客さんなの!」

 クルルさんは嬉しそうにスキップしている。
 転けそうで心配だ。

「キー、キー!」
「キースも元気そうで何よりなの。バッテリーの調子はどうなの?」
「キー!」
「きしししし! それは何よりなの!」

 そういえば、クルルさんはキースと喋れたんだった。
 ……あれ、わたしもいつの間にか喋れるようになってるような。


「それで、クルルさん。今はどこに向かってるんですか?」

「職人仲間のところなの。ギルドでお金が手に入ったから、みんなに報告しに行くの。全部スズネのおかげなの! うう、すっかり立派になって……ククルは感無量なの……」

「お母さんみたいなこと言わないでください」

 ギルドのお姉さんは、クルルさんがわたしと知り合いなのを見て、わたしが渡した分を、そっくりそのままクルルさんに預けてくれた。
 

「クルルさんは変わりなかったですか?」

「こんなことになっちゃったし、変わりはあったに決まってるの。でも、特に怪我もなかったし、元気なの。これから仕事も始められるし、とっても楽しみなの」

「工房は……」
「もちろん沈んだの。でも、炉の火は持って来たから大丈夫なの。ドワーフの火が消えない限り、ククルの工房は不滅なの~」

 クルルさんは最後に会ったときと同じくらいに、朗らかだった。
 あんまり過度に落ち込んでるわけでもなさそうだ。少なくとも怪我がないなら何より。
 
 
「ところで、テウォンがどこに行ったか知りませんか? お姉さんと一緒なのかな」

「テウォンは、ククルのところで見習いをしてるの。でも、この時間なら病院にいるの」


「えっ、病院? テウォン、怪我をしたんですか?」
「違うの。お姉さんの送迎なの」

「お姉さんが怪我をしたんですか?」
「もともと脚が悪くて、それがちょっと悪化したらしいの」

 テウォンのお姉さんといえば、テウォンとは似てないクールな美人さんで、とても上品な人だ。

 脚が悪かったとは知らなかったけど。


「テウォンに会いに行くの?」
「うーん……そう、しようかな。また後で行きます」
「分かったの! 工房ができたら、その剣の手入れもしてあげるの。待ってるの~」

 ククルさんはタタタッと軽快に走って行った。

「キース、テウォンに会いに行こう」
「キー」

 キャンプにはテントだけではなく、簡易式の建物も建設されている。
 
 商店なんかはさすがに屋台だけど、大きめの施設はしっかり建物になっていて、病院もそうだ。遠くから見ても分かるように、塔みたいなものが見える。


 街をすれ違う人にも活気が見える。冒険者の人も多い。

 遠くの方では、森の木を切り倒して土地を広げる人たちや、その木を加工して建材にする人たちが働いている。
 まだ水没していなかった頃とは、また違った雰囲気。
 
 ……そう思うのは、わたしが変わったから?
 

「おい、オマエ」
「ふぁっ?」

 急に肩を叩かれ、振り向いた先には、わたしより一回りくらい年上の男の子がいた。
 スードルよりもやや年下くらい。
 大きなバックパックを背負っているので、冒険者かなとも一瞬思ったのだけど、武器らしきものを持っていない。
 

「やっぱりスズネだよな! そんな目立つ幻獣連れてんの、オマエだけだし」


 まだ病院までの距離はだいぶあった。
 だから、わたしはそれがテウォンだとは分からなかった。

 というか、声をかけられて振り返ってからも、しばらく信じられなかった。


「て……テウォン?」
「なんだよ、ボケーッとしちゃってさ。オマエ、冒険してきたんだろ? オレに話聞かせろよ」

 男子3日会わざれば刮目して見よとは言ったものだけど、それにしたって限度がある。

 やや早めの成長期を迎えたらしいテウォンは、わたしよりも身長拳1つ分くらい伸びていた。

 キースに至っては、困惑しすぎて無言になり、わたしの頭の上に乗っかっている。


「なんかその……大きくなったね……」
「親戚のばあちゃんかよ。オレだって大きくなるに決まってるだろ」

「思った以上に大きくなってて……大人になったというか、落ち着いたというか」

「オレ、元々こんな感じだったと思うけどなー。変わったといえば、スズネの方が変わったよ」

「わたし?」
「うん。なんかさ、こう……すげー楽しそうじゃん。前は死にそうだったのに。キースとも、いいコンビっていうか」
「死に……?」

 そんな風に思われてたのか、わたし……?
 

「まあ、クルルにこき使われて、オレもちょっと鍛えたかもな。でもその程度だよ」
 
 そういえば、クルルさんのイメージに流されてたけど、テウォンは基本的に無愛想だ。
 無愛想というかクールな性格なんだと思う。初対面の時とか、接客業なのにニコリともしてなかったし。
 
 クールで美女なお姉さんに似てるのだろうか。お姉さんに初めて会ったときは、あんまり似てないと思ったんだけどな。

 ……うん、思い出してきた。


「そうだ。オマエにはまだ、見せてなかったよな? オレの相棒」
「え、相棒?」

「うん。オレもほしいって、言ってただろ。あれからもオレ、坑道に潜ってて。そこで会った冒険者が、オレにくれたんだ」

「連れて帰ったの?」
「そうだよ。こっち」

 テウォンはわたしを手招き、スルスルと路地裏へ入っていく。


 わたしもそれについていくと、簡単に人通りの少ない裏通りに出た。

「すごいねテウォン、まるで犯罪者みたい!」
「……よく、分かんねーけど……まあいいや」

 テウォンはバックパックを下ろし、その蓋を開けた。

「ほら、見て」

 テウォンは、心底自慢げにそれを見せる。


 わたしはバックパックの中を覗き込んだ。

「……」

 中には普通に荷物が入っていたけど、その上に大事に置かれた何かがいた。
 それは、手の平サイズの、カメのような不思議な生物だった。

 暗い中でも不思議と光を放つその生物は、全身が宝石に包まれている。

「これ、何? 魔物?」
「幻獣だってさ。なんか小さいし、可愛いだろ?」


 テウォンは、バッグに手を入れて、それをゆっくりと取り出した。

「……」

 出てくると、それはやっぱりカメだった。
 甲羅の部分だけではなく、手足のウロコの1枚1枚に至るまで、キラキラ光る宝石だ。

 テウォンはポケットから魔石を何個か取り出して、カメに食べさせた。カメはポリポリと音を立てて魔石を頬張る。


「ダンジョンで拾ってきたの?」
「オレがスズネの話をしたらさ、ドワーフの冒険者がくれたんだ。こいつも幻獣だって言ってた」

「……クゥ」

 魔石を食べ終わった幻獣ちゃんが、キラキラした目でテウォンを見る。
 めっちゃ可愛い。
 

「か……可愛い……何この子、めっちゃ可愛い……」

「だよな! すっごい可愛くて、いつも一緒なんだ。でもこいつ、ダンジョンの中にいる魔物と似ててさ……見つかると騒ぎになるかもしれないから、中に入れてるんだ」

「こんなに可愛いんだから、大丈夫なような気もするけど……ところで、名前はなんていうの?」

「クーって鳴くから、クドって呼んでるんだ」
「クゥ、クゥ」
「あはは、呼んだわけじゃねーよ」


 テウォンに反応し、よちよち寄っていくクド。
 めっちゃ可愛い。本当に可愛い。

「うわぁ、うわぁ! いいなぁ、懐いてるんだね! 触ってもいい?」
「頭突っつくなよ、噛み付くから。背中は叩いても平気なんだ」

 甲羅はちょっと冷たくて、宝石みたいに輝いている。
 さっき食べた魔石の色に、ゆっくりゆっくり変化している。
 
 わたしが甲羅を触っても、気づいてないのか無視してるのか、反応しない。
 

「キー!」

 と、キースがわたしの頭を引っ掻いた。

「はは、やきもち妬いてんだな。クドは硬いけど、キースはふわふわだ」

 キースはクドを掬い上げるように持ち上げる。

「キー、キー」
「なにー、キースも抱っこしてほしいの?」
「キー!」

 キースがキーキー鳴くので、わたしはキースを胸元で抱っこした。
 大きめのフクロウくらいのサイズなので、手の平に乗せるには無理がある。
 

「やっぱオマエら、仲いいよな。キースはいい相棒だし。なークド、オレとも仲良くしような」
「……クゥ」
「キーキー!」

 キースは褒められて嬉しかったのか、またキーキーと鳴いている。

 それに呼応するように、クドが小さく「クゥ」と鳴いた。
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