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08 異世界
強さは全てじゃない
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まさか、またホーンウルフに乗ってこの白玉の森に戻ってくることになるなんて、誰が想像できただろう。
あの時は恐ろしく感じた巨大な魔獣も、今となっては不思議と平気だ。
それはわたしが成長したからか、それとも、仲間がいるからか。
「キース、お願い!」
「キー!」
心なしかキースの電撃も強くなっている気がする。
ホーンウルフの速度に匹敵する飛行速度を手に入れたキースは、入り組んだ森の中を我が物顔で飛び回り、魔獣を撹乱しながら電撃を放っている。
結構疲れるので連発はできないとか言ってたのに、元気だなぁ。
「空を飛べるって、いいよな」
わたしは例の如く以前のように、ロイドさんと一緒のホーンウルフに乗っていた。
しかしポジションは変わらなくても、ロイドさんは以前と違う。
少したくましくて、めっちゃ獣臭い。
「アリスメードさんは空、飛ぶんじゃないんですか? ロイドさんもそうすればいいのに」
「アリスは特殊な人間だ。普通の人間は飛べない。飛べたとしても死ぬ」
「確かに」
アリスさんが特殊っていうのは、全体的に同意できる。
フェンネルさんの強さは超人的って感じだけど、アリスメードさんの強さは人外的だ。
ロイドさんの強さは……強さ…………強さ、はないけど、個性は同じくらい、あると思う。
「鳥さんを仲間にするわけにはいかないんですか? ロイドさん、動物好きなのに」
「俺とは相性が悪いんだ。アリスが根絶やしにしていることが向こうにバレてる」
「なんで根絶やしに? アリスさんは鳥さんに対して何か恨みがあるんですか?」
「百発百中の矢が、装甲の薄い鳥類を貫いて無事なわけがない」
「百発百中なんですか?」
「少なくとも、俺は外したところを見たことがない」
「えぇ……」
つまりは、キースの天敵なのか。アリスメードさん。
わたしはオオカミに跨るアリスメードさんをチラッと見る。
本気になれば、キースは無惨な串刺しになってしまうのだろう。
そうとも知らず、飛び方のレクチャーを受けていたなんて……
……面白いなぁ。
「接近戦ができないのがアリスの弱点だが、適切な間合いをとって戦えば、パーティの中で最強だからな」
「え、魔術が使えるんだからレイスさんの方が得意なんじゃないんですか? アリスメードさんは魔獣みたいに巨大じゃないから、内臓をグチャッてしたらおしまいだと思うんですけど……」
「いつから殺し合いが前提になってるんだよ。スズネ、たまに怖いこと言うよな……」
ロイドさんは苦笑する。
「魔術は小さくて素早い相手に対しては有効じゃない。発動までにタイムラグがあるし、射速も速くないから避けられる。レイスは雑な性格だし、そんなに防御力もないからな」
「じゃあ、そんなに強くないってことですか?」
「そんなわけないだろ」
「何が強さなんですか?」
「火力」
「確かに」
わたしはオオカミに乗るレイスさんをチラッと見る。
もうワイルドな方が慣れてしまったらしいレイスさんは、ロイドさん以上に獣臭い。
「ちなみに、適切な間合いを取らないときの最強は誰なんですか?」
「口喧嘩ならシアトルだ」
「口喧嘩は戦闘じゃないからダメです」
「近接ならフェンネルだし、不意打ちができるならシアトル。単純な破壊能力なら、レイスだろうな。勉強ならスードルが一番だと思う。あいつは物覚えがいい」
「勉強は戦闘じゃないからダメです」
「ロイドさんは?」
「俺は戦いはしない。俺が傷付いたら、こいつらが悲しむから」
わたしの出会った中で随一の残念イケメン、ロイドさんは堂々とそう言った。
「強いて戦ったとしたら、ロイドさんは強いんですか?」
「生身で戦って強いわけないだろ。俺はテイマーなんだよ。村人に戦闘力はいらないんだよ」
確かに、羊飼いみたいな職業ではあるけれど、飼ってるものはオオカミなのだから納得できない。
「じゃあ、オオカミさんたちと戦えばいいじゃないですか」
「我が子を戦場に送り出せるか? 俺にはそんな残酷なことはできない。可哀想だろ」
「わたしは子供だから分かんないんですけど、大事な仲間が戦場に行くのはいいんですか?」
「別にいい」
「畜生すぎませんか?」
「ありがとう」
「褒めてないです。畜生は褒め言葉ではないです」
ロイドさんって、面白い人だなー。
「パーティ全員で、全力の殺し合いをしたら誰が生き残りますか?」
「そんなことは絶対に起こらない。なんでそんなに最強を決めたいんだよ」
「だって、お互いに怒ったりすることもあるじゃないですか。それがエスカレートしたりするんじゃないですか?」
「怒ることはあっても、殺し合いになることはないだろ。アリスは仲間を失うことを嫌がるからな、仲間を手にかけるくらいなら、自ら死を選ぶ。そういう奴なんだよ」
「……例えば、ロイドさんは、スードルとかがホーンウルフに意地悪してたらどうするんですか?」
「絶対に殺す」
「ロイドさん、パーティに馴染めてないって言われませんか?」
「ウォンッ!」
ロイドさんの代わりに、元気な返事が返ってきた。
あの時は恐ろしく感じた巨大な魔獣も、今となっては不思議と平気だ。
それはわたしが成長したからか、それとも、仲間がいるからか。
「キース、お願い!」
「キー!」
心なしかキースの電撃も強くなっている気がする。
ホーンウルフの速度に匹敵する飛行速度を手に入れたキースは、入り組んだ森の中を我が物顔で飛び回り、魔獣を撹乱しながら電撃を放っている。
結構疲れるので連発はできないとか言ってたのに、元気だなぁ。
「空を飛べるって、いいよな」
わたしは例の如く以前のように、ロイドさんと一緒のホーンウルフに乗っていた。
しかしポジションは変わらなくても、ロイドさんは以前と違う。
少したくましくて、めっちゃ獣臭い。
「アリスメードさんは空、飛ぶんじゃないんですか? ロイドさんもそうすればいいのに」
「アリスは特殊な人間だ。普通の人間は飛べない。飛べたとしても死ぬ」
「確かに」
アリスさんが特殊っていうのは、全体的に同意できる。
フェンネルさんの強さは超人的って感じだけど、アリスメードさんの強さは人外的だ。
ロイドさんの強さは……強さ…………強さ、はないけど、個性は同じくらい、あると思う。
「鳥さんを仲間にするわけにはいかないんですか? ロイドさん、動物好きなのに」
「俺とは相性が悪いんだ。アリスが根絶やしにしていることが向こうにバレてる」
「なんで根絶やしに? アリスさんは鳥さんに対して何か恨みがあるんですか?」
「百発百中の矢が、装甲の薄い鳥類を貫いて無事なわけがない」
「百発百中なんですか?」
「少なくとも、俺は外したところを見たことがない」
「えぇ……」
つまりは、キースの天敵なのか。アリスメードさん。
わたしはオオカミに跨るアリスメードさんをチラッと見る。
本気になれば、キースは無惨な串刺しになってしまうのだろう。
そうとも知らず、飛び方のレクチャーを受けていたなんて……
……面白いなぁ。
「接近戦ができないのがアリスの弱点だが、適切な間合いをとって戦えば、パーティの中で最強だからな」
「え、魔術が使えるんだからレイスさんの方が得意なんじゃないんですか? アリスメードさんは魔獣みたいに巨大じゃないから、内臓をグチャッてしたらおしまいだと思うんですけど……」
「いつから殺し合いが前提になってるんだよ。スズネ、たまに怖いこと言うよな……」
ロイドさんは苦笑する。
「魔術は小さくて素早い相手に対しては有効じゃない。発動までにタイムラグがあるし、射速も速くないから避けられる。レイスは雑な性格だし、そんなに防御力もないからな」
「じゃあ、そんなに強くないってことですか?」
「そんなわけないだろ」
「何が強さなんですか?」
「火力」
「確かに」
わたしはオオカミに乗るレイスさんをチラッと見る。
もうワイルドな方が慣れてしまったらしいレイスさんは、ロイドさん以上に獣臭い。
「ちなみに、適切な間合いを取らないときの最強は誰なんですか?」
「口喧嘩ならシアトルだ」
「口喧嘩は戦闘じゃないからダメです」
「近接ならフェンネルだし、不意打ちができるならシアトル。単純な破壊能力なら、レイスだろうな。勉強ならスードルが一番だと思う。あいつは物覚えがいい」
「勉強は戦闘じゃないからダメです」
「ロイドさんは?」
「俺は戦いはしない。俺が傷付いたら、こいつらが悲しむから」
わたしの出会った中で随一の残念イケメン、ロイドさんは堂々とそう言った。
「強いて戦ったとしたら、ロイドさんは強いんですか?」
「生身で戦って強いわけないだろ。俺はテイマーなんだよ。村人に戦闘力はいらないんだよ」
確かに、羊飼いみたいな職業ではあるけれど、飼ってるものはオオカミなのだから納得できない。
「じゃあ、オオカミさんたちと戦えばいいじゃないですか」
「我が子を戦場に送り出せるか? 俺にはそんな残酷なことはできない。可哀想だろ」
「わたしは子供だから分かんないんですけど、大事な仲間が戦場に行くのはいいんですか?」
「別にいい」
「畜生すぎませんか?」
「ありがとう」
「褒めてないです。畜生は褒め言葉ではないです」
ロイドさんって、面白い人だなー。
「パーティ全員で、全力の殺し合いをしたら誰が生き残りますか?」
「そんなことは絶対に起こらない。なんでそんなに最強を決めたいんだよ」
「だって、お互いに怒ったりすることもあるじゃないですか。それがエスカレートしたりするんじゃないですか?」
「怒ることはあっても、殺し合いになることはないだろ。アリスは仲間を失うことを嫌がるからな、仲間を手にかけるくらいなら、自ら死を選ぶ。そういう奴なんだよ」
「……例えば、ロイドさんは、スードルとかがホーンウルフに意地悪してたらどうするんですか?」
「絶対に殺す」
「ロイドさん、パーティに馴染めてないって言われませんか?」
「ウォンッ!」
ロイドさんの代わりに、元気な返事が返ってきた。
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