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05 試練と挑戦
図書館
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スードルが午後の授業に行ってしまったので、わたしは大学の図書館で世界樹の都市について調べることにした。
さすがに王都の図書館というだけあって警備も厳重で、わたしは一度ギルドに戻って身分証明書みたいなものを受け取って来なければならなかった。
そこで、わたしは自分の冒険者ランクがいつの間にかCランクになっていたことを知った。
「はい、確認できました」
警備の気のいいお兄さんは、親切に利用方法まで教えてくれた。
書籍の貸出は行っていなくて、ほとんどの本は、閲覧するにも許可がいるそうだ。
読みたい本をカウンターに持っていって、登録してからでないと中身が見られない。
魔術書とかを下手に扱って魔法が暴発しては困るらしい。
図書館の中はすごく静かで、しかもすごく広い。
入口のカウンターからやや下るので、わたしは本棚に邪魔されずに書庫の全体を眺めることができた。
図書館の中央の高い天井は透明な水晶でできていて、布で遮られた優しい日差しが降り注いでいる。
本棚は規則正しく左右にずらっと並べられて、中央の通路には頭上に案内板が備えられ、それぞれのその列にある本のおおよその種類が書いてあった。
左右と奥の壁は丸ごと本棚になっていて、バルコニーみたいな通路がついていた。3階まであるみたいだ。
古びた紙とインクの香ばしい香りが心地よく、天井近くまで積まれた本棚に隙間なく敷き詰められた本と紙束が見える。
カウンターから横のところを通っていくとそんな本棚の裏側に出ることができて、そこは本を読んだり、学生や研究者が勉強や仕事ができるデスクなど色々なものがあった。
わたしは一階の書庫の中央の通路を歩いていた。
「どこから調べればいいんだろ……」
わたしは書架の間をキョロキョロしながら歩く。
幻の都市というくらいだし、地図には載ってないだろう。
そうやって歩いていると、ふと、とある表示が目に入った。
「幻獣……?」
キースは本の匂いで眠たくなったのか、わたしに抱っこされてすやすやと眠っている。
コウモリのくせに明らかに寝すぎなキースの生態が、調べられるかもしれない。
わたしはその棚にある本を取り出したり、戻したり、色々見て回る。
その中の一冊に、キースに似た白いコウモリが表紙のものを見つけた。
表紙には『雪の巨人の正体』と書いてある。
「……まあいっか」
キースは巨人という感じはしないけど、魔力を使えば大きくなるとか言ってたし、表紙の絵がキースに似ている。
もしかしたらキースのことが分かるかもしれない。
本なんか読まなくても、キースに聞けば分かるかもしれないけど。
わたしは寝ているキースを頭の上に乗せて、本を抱えてカウンターに持っていき、読書室に行くことにした。
授業中だからか、席は空いている。
わたしは適当な席に座り、本と頭のキースをデスクの上に置いて、読み始めた。
「……」
本を書いたのは、雪原の小さな村出身の研究者の人だそうだ。
この幻獣はその村の人が伝統的に仕えている、精霊族という人たちが管理しているらしい。
稀に村に訪れた際には、決して傷つけてはならず、手厚く保護しなければならないそうだ。
いずれ、その子を親や仲間が迎えにやって来る。
そのときに、もし気に入られれば、精霊の里まで連れて行ってもらえる。
彼らは雪崩よりも速く飛ぶことができ、翼を持たない精霊族が空を訪ねるときに乗ったり、あとは雪が得意なので娯楽として乗ったりもする。
精霊族は言葉を持たないため、その幻獣がどう呼ばれているのかは分からない。
人々は、その幻獣のことを、天翔ける雲の竜、フォグ・ドラゴンと呼んでいる。
「どら……ごん?」
ドラゴンといえばトカゲ。
コウモリがそう呼ばれているのはちょっと不思議だ。
あのもふもふのことを霧と表現しているのだとしたら、残りは翼なので、ドラゴンと評するのも間違いではないような気もするけれど。
わたしはスヤスヤと眠るキースの毛を撫でた。
「好きなものとかないのかなぁ……キース、食べ物食べないもんなぁ」
この旅でわたしがキースにあげたものといえば、わたしの魔力くらいしかない。
この足に着けてるのだって、勝手に拾ってきて勝手に依頼してたし。
わたしはキースに色々してもらってるけど、キースにはあんまりしてあげられてない。
幻獣という生物故に、食事をしない。もちろんお菓子も食べない。水も飲まない。魔力だけで生きていける。
おいしいものを食べさせてあげたいという気持ちはもちろんあるけど、変なものを食べさせて病気になったら可哀想だし。
だから好きなものとか何かご褒美になるようなことがあれば、それをしてあげようと思ったのだけど、詳しい解説はないようだ。
「……キー?」
キースが目を覚ました。わたしは長い耳の付け根を撫でる。
「ねー、キース。何か好きなものないの?」
「キー?」
「好きなもの。血液とか?」
キースはしばらく考えるみたいに大きな目を見開いて、天井を見ていた。
しかし目を閉じ、またテーブルの上にぺちゃんこになる。
「……スズ」
キースは気持ちよさそうに、またうとうとし始めた。
「ちょっとー、寝ないでよ」
わたしはその頭を突っついてみる。すると突然、キースが頭を上げた。
「キー」
「あら、奇遇ね」
振り向くと、そこには美人エルフのシアトルさんが、にっこり笑って立っていた。
さすがに王都の図書館というだけあって警備も厳重で、わたしは一度ギルドに戻って身分証明書みたいなものを受け取って来なければならなかった。
そこで、わたしは自分の冒険者ランクがいつの間にかCランクになっていたことを知った。
「はい、確認できました」
警備の気のいいお兄さんは、親切に利用方法まで教えてくれた。
書籍の貸出は行っていなくて、ほとんどの本は、閲覧するにも許可がいるそうだ。
読みたい本をカウンターに持っていって、登録してからでないと中身が見られない。
魔術書とかを下手に扱って魔法が暴発しては困るらしい。
図書館の中はすごく静かで、しかもすごく広い。
入口のカウンターからやや下るので、わたしは本棚に邪魔されずに書庫の全体を眺めることができた。
図書館の中央の高い天井は透明な水晶でできていて、布で遮られた優しい日差しが降り注いでいる。
本棚は規則正しく左右にずらっと並べられて、中央の通路には頭上に案内板が備えられ、それぞれのその列にある本のおおよその種類が書いてあった。
左右と奥の壁は丸ごと本棚になっていて、バルコニーみたいな通路がついていた。3階まであるみたいだ。
古びた紙とインクの香ばしい香りが心地よく、天井近くまで積まれた本棚に隙間なく敷き詰められた本と紙束が見える。
カウンターから横のところを通っていくとそんな本棚の裏側に出ることができて、そこは本を読んだり、学生や研究者が勉強や仕事ができるデスクなど色々なものがあった。
わたしは一階の書庫の中央の通路を歩いていた。
「どこから調べればいいんだろ……」
わたしは書架の間をキョロキョロしながら歩く。
幻の都市というくらいだし、地図には載ってないだろう。
そうやって歩いていると、ふと、とある表示が目に入った。
「幻獣……?」
キースは本の匂いで眠たくなったのか、わたしに抱っこされてすやすやと眠っている。
コウモリのくせに明らかに寝すぎなキースの生態が、調べられるかもしれない。
わたしはその棚にある本を取り出したり、戻したり、色々見て回る。
その中の一冊に、キースに似た白いコウモリが表紙のものを見つけた。
表紙には『雪の巨人の正体』と書いてある。
「……まあいっか」
キースは巨人という感じはしないけど、魔力を使えば大きくなるとか言ってたし、表紙の絵がキースに似ている。
もしかしたらキースのことが分かるかもしれない。
本なんか読まなくても、キースに聞けば分かるかもしれないけど。
わたしは寝ているキースを頭の上に乗せて、本を抱えてカウンターに持っていき、読書室に行くことにした。
授業中だからか、席は空いている。
わたしは適当な席に座り、本と頭のキースをデスクの上に置いて、読み始めた。
「……」
本を書いたのは、雪原の小さな村出身の研究者の人だそうだ。
この幻獣はその村の人が伝統的に仕えている、精霊族という人たちが管理しているらしい。
稀に村に訪れた際には、決して傷つけてはならず、手厚く保護しなければならないそうだ。
いずれ、その子を親や仲間が迎えにやって来る。
そのときに、もし気に入られれば、精霊の里まで連れて行ってもらえる。
彼らは雪崩よりも速く飛ぶことができ、翼を持たない精霊族が空を訪ねるときに乗ったり、あとは雪が得意なので娯楽として乗ったりもする。
精霊族は言葉を持たないため、その幻獣がどう呼ばれているのかは分からない。
人々は、その幻獣のことを、天翔ける雲の竜、フォグ・ドラゴンと呼んでいる。
「どら……ごん?」
ドラゴンといえばトカゲ。
コウモリがそう呼ばれているのはちょっと不思議だ。
あのもふもふのことを霧と表現しているのだとしたら、残りは翼なので、ドラゴンと評するのも間違いではないような気もするけれど。
わたしはスヤスヤと眠るキースの毛を撫でた。
「好きなものとかないのかなぁ……キース、食べ物食べないもんなぁ」
この旅でわたしがキースにあげたものといえば、わたしの魔力くらいしかない。
この足に着けてるのだって、勝手に拾ってきて勝手に依頼してたし。
わたしはキースに色々してもらってるけど、キースにはあんまりしてあげられてない。
幻獣という生物故に、食事をしない。もちろんお菓子も食べない。水も飲まない。魔力だけで生きていける。
おいしいものを食べさせてあげたいという気持ちはもちろんあるけど、変なものを食べさせて病気になったら可哀想だし。
だから好きなものとか何かご褒美になるようなことがあれば、それをしてあげようと思ったのだけど、詳しい解説はないようだ。
「……キー?」
キースが目を覚ました。わたしは長い耳の付け根を撫でる。
「ねー、キース。何か好きなものないの?」
「キー?」
「好きなもの。血液とか?」
キースはしばらく考えるみたいに大きな目を見開いて、天井を見ていた。
しかし目を閉じ、またテーブルの上にぺちゃんこになる。
「……スズ」
キースは気持ちよさそうに、またうとうとし始めた。
「ちょっとー、寝ないでよ」
わたしはその頭を突っついてみる。すると突然、キースが頭を上げた。
「キー」
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