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02 出会いと別れ
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鉱山へ向かう道には、たくさんの人がいる。
何日かはかかるけど、わたしの足でも歩いて行けるそうなので、わたしは歩いて行くことにした。
長旅をするので、わたしは大きめのバックパックを買った。
行商人の醤油さんのものよりは全然小さいけど、それでも十分すぎるくらいの容量がある。
「スズネ、本当に行っちゃうの……?」
スードルは結構泣いていた。
わたしもちょっとうるっとしていたのに、スードルの号泣のせいで涙が出ない。
「うっ、うぅ……」
「泣くな」
「でもでも、寂しいよー!」
「泣くな」
全員が抜けるというわけにはいかず、見送りに来てくれたのはスードルとフェンネルさん、そしてレイスさんだけだった。
でも、わたしにとっては、それで十分だった。
「あの、フェンネルさんも、レイスさんも……本当にありがとうございました。わたし、みなさんのおかげで、すごく……すごく楽しかったです」
「こちらこそだよ!」
「……そう。あたしも」
フェンネルさんはいつもと変わらず無表情。
レイスさんは笑い泣きみたいな感じだった。
「僕……せっかく友達になれたのに寂しいよ!」
スードルは子供みたいにわんわん泣きながら、わたしに抱きついてきた。
「だ、大丈夫だよ……死ぬわけじゃないんだから。また会えるよ」
わたしが慰めると、スードルは何度も頷いた。
「また会える、会えるよね?」
「うん……だから、スードルも元気でいてね」
「分かった!」
これじゃあ、どっちが年上か分からない。
キースはわたしの頭の上で潰れたまま、相変わらずコインを噛み締めている。
「あの。アリスメードさんにも、ロイドさんにも、シアトルさんにも……わたしが感謝してたって、伝えてください。皆さんがいなかったら、今のわたしはないと、思います」
「分かった」
「うわーーん、スズネー!」
「うわぁ!」
「!?」
レイスさんまでわたしに突進してきた。
わたしはぎゅうぎゅうされて、キースは叩き落とされた。
「ちょ、レイスさん! くるじいですぅ……」
「スズネがいなくなっちゃうなんて、寂しい、寂しいよー!」
「レイス」
フェンネルさんが助けてくれた。
「スズネ。アリスが心配してた。ロイドとシアトルは応援してた。期待、裏切らないで」
言外に「死ぬな」と言われた気がした。
何があるか分からない世界だ、これが最後の別れ……かもしれないということなのだろう。
「わたしは、楽しく観光するだけだから平気です。フェンネルさんこそ、怪我とかしないでくださいね。アリスメードさんとロイドさんにも、そう言ってください」
「……うん」
「あと、仲良くしてくださいって言っといてください」
「……分かった。強く言っとく」
フェンネルさんは大きく頷く。
結局、彼らの過去に何があったのかは分からない。
これからどうするのかを見届けるわけにもいかない。
でも、またどこかで会えたら、そういうことを知る機会もあるだろう。
「それから……これ、持って行って」
「え?」
フェンネルさんは、筒状の何かをわたしにくれた。
見てみると、それは短刀だった。
「これは……?」
「ナイフ。対人用」
「わ、わたし人に向かってナイフなんて使えないですよ!」
わたしはびっくりして返そうとする。でもフェンネルさんは、笑ってそれを断った。
「エルフの迷信。持ち主を守ってくれる……らしい。あたしはエルフじゃないけど、お守り。みんな説得したの、あたしだし。スズネに何かあったら、責められるから」
フェンネルさんはそう言って、わたしの肩を叩いた。
「スズネなら大丈夫。心配いらない。荷物増やして、意地悪しただけ」
ふふっ、とフェンネルさんは笑った。
わたしは、なんか意味もわからず泣きそうになった。
「そ、それじゃあ、わたしはもう行きます」
「えぇ、もう? もう少し話そうよスズネ……ねえ、出発はまた明日でもいいでしょ?」
「スードル、女々しい。諦めろ」
フェンネルさんが、諦めの悪いスードルを嗜める。
「安心しろ。また会える」
「そうだよね! また会える!」
「う、うぅ……はい……またね、スズネ!」
鉱山は、山を越えた先にある。
わたしは歩き出した。
振り返ったら忘れ物でも思い出しそうだったから、とにかく前だけ向いて歩いた。
しばらく、たぶん1時間以上くらい登って、わたしはふと振り返った。
切り立った山岳に広がる花畑。
天空に浮かぶ遺跡。
そこに鎮座する立方体。
「キー」
頭に乗っかったキースが、コインを咥えたまま一声鳴いた。
わたしはまた前を向いて、歩き出した。
名残惜しいけど、わたしの旅はまだまだ始まったばかり。
こうなったら、この世界が滅びる前に、世界の全部、思いっきり楽しもう。
何日かはかかるけど、わたしの足でも歩いて行けるそうなので、わたしは歩いて行くことにした。
長旅をするので、わたしは大きめのバックパックを買った。
行商人の醤油さんのものよりは全然小さいけど、それでも十分すぎるくらいの容量がある。
「スズネ、本当に行っちゃうの……?」
スードルは結構泣いていた。
わたしもちょっとうるっとしていたのに、スードルの号泣のせいで涙が出ない。
「うっ、うぅ……」
「泣くな」
「でもでも、寂しいよー!」
「泣くな」
全員が抜けるというわけにはいかず、見送りに来てくれたのはスードルとフェンネルさん、そしてレイスさんだけだった。
でも、わたしにとっては、それで十分だった。
「あの、フェンネルさんも、レイスさんも……本当にありがとうございました。わたし、みなさんのおかげで、すごく……すごく楽しかったです」
「こちらこそだよ!」
「……そう。あたしも」
フェンネルさんはいつもと変わらず無表情。
レイスさんは笑い泣きみたいな感じだった。
「僕……せっかく友達になれたのに寂しいよ!」
スードルは子供みたいにわんわん泣きながら、わたしに抱きついてきた。
「だ、大丈夫だよ……死ぬわけじゃないんだから。また会えるよ」
わたしが慰めると、スードルは何度も頷いた。
「また会える、会えるよね?」
「うん……だから、スードルも元気でいてね」
「分かった!」
これじゃあ、どっちが年上か分からない。
キースはわたしの頭の上で潰れたまま、相変わらずコインを噛み締めている。
「あの。アリスメードさんにも、ロイドさんにも、シアトルさんにも……わたしが感謝してたって、伝えてください。皆さんがいなかったら、今のわたしはないと、思います」
「分かった」
「うわーーん、スズネー!」
「うわぁ!」
「!?」
レイスさんまでわたしに突進してきた。
わたしはぎゅうぎゅうされて、キースは叩き落とされた。
「ちょ、レイスさん! くるじいですぅ……」
「スズネがいなくなっちゃうなんて、寂しい、寂しいよー!」
「レイス」
フェンネルさんが助けてくれた。
「スズネ。アリスが心配してた。ロイドとシアトルは応援してた。期待、裏切らないで」
言外に「死ぬな」と言われた気がした。
何があるか分からない世界だ、これが最後の別れ……かもしれないということなのだろう。
「わたしは、楽しく観光するだけだから平気です。フェンネルさんこそ、怪我とかしないでくださいね。アリスメードさんとロイドさんにも、そう言ってください」
「……うん」
「あと、仲良くしてくださいって言っといてください」
「……分かった。強く言っとく」
フェンネルさんは大きく頷く。
結局、彼らの過去に何があったのかは分からない。
これからどうするのかを見届けるわけにもいかない。
でも、またどこかで会えたら、そういうことを知る機会もあるだろう。
「それから……これ、持って行って」
「え?」
フェンネルさんは、筒状の何かをわたしにくれた。
見てみると、それは短刀だった。
「これは……?」
「ナイフ。対人用」
「わ、わたし人に向かってナイフなんて使えないですよ!」
わたしはびっくりして返そうとする。でもフェンネルさんは、笑ってそれを断った。
「エルフの迷信。持ち主を守ってくれる……らしい。あたしはエルフじゃないけど、お守り。みんな説得したの、あたしだし。スズネに何かあったら、責められるから」
フェンネルさんはそう言って、わたしの肩を叩いた。
「スズネなら大丈夫。心配いらない。荷物増やして、意地悪しただけ」
ふふっ、とフェンネルさんは笑った。
わたしは、なんか意味もわからず泣きそうになった。
「そ、それじゃあ、わたしはもう行きます」
「えぇ、もう? もう少し話そうよスズネ……ねえ、出発はまた明日でもいいでしょ?」
「スードル、女々しい。諦めろ」
フェンネルさんが、諦めの悪いスードルを嗜める。
「安心しろ。また会える」
「そうだよね! また会える!」
「う、うぅ……はい……またね、スズネ!」
鉱山は、山を越えた先にある。
わたしは歩き出した。
振り返ったら忘れ物でも思い出しそうだったから、とにかく前だけ向いて歩いた。
しばらく、たぶん1時間以上くらい登って、わたしはふと振り返った。
切り立った山岳に広がる花畑。
天空に浮かぶ遺跡。
そこに鎮座する立方体。
「キー」
頭に乗っかったキースが、コインを咥えたまま一声鳴いた。
わたしはまた前を向いて、歩き出した。
名残惜しいけど、わたしの旅はまだまだ始まったばかり。
こうなったら、この世界が滅びる前に、世界の全部、思いっきり楽しもう。
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