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02 出会いと別れ
夜戦
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降るような星空、という表現がよくあるけれど、高原の星空は既に降っている。
細くて暗い流れる星が、余すことなく夜空に線を描くのが見える。
溜め息が出るくらいに美しい。
わたしの知っている星はだいたい白色でたまに赤とか混ざってる程度だったけど、この世界の星空はかなり色鮮やかだ。
ほとんどが白なのは同じだけど、青とか緑とか赤褐色の星が見える。
星雲らしき星の集団まで見える。
「きれーだねー」
「キー」
「なに、眠いの?」
わたしは遺跡の残骸を枕にして、仰向けに寝そべっていた。
星は手を伸ばしたら届きそうなくらいにたくさんある。
あんなにたくさんあるんだから、1つくらいわたしのものになればいいのに。
この世界の月は赤と青の2つあるけど、今夜の月は暗い赤褐色。
だから余計に星が見える。
いつまでも星を眺めていたいところでもあるけれど、夜の魔石集めがやりたくて起きているわけなので、わたしは立ち上がった。
モンスターハウスは、闇に溶け込み姿が見えない。
でも間違えて入らないよう、ぼんやりした明かりが地面に落ちていてそれによって縁取られている。
ちょうどライトアップみたいなものだ。
足を踏み入れると、中は眩しいくらいに明るかった。
至る所に浮遊する明かりが灯っていて、その灯りの中、ひたすら戦い続けている人たちが見えた。
夜は昼間より、中心付近にいる人たちが多い。
安全にお金稼ぎをするために来る人たちじゃなくて、魔物を倒して安全を確保するために来る人たちばかりだからだ。
わたしがこうやって端っこでコソコソ小金稼ぎができるのも、真ん中の人たちの激戦あってこそ。
しっかり感謝しつつ、ロッドを構える。
「行くよ!」
「キー!」
わたしは形になってきた無詠唱で、石の魔物を殴る。
頭から崩れた魔物は、キラキラ輝く魔石を出した。
「……よし」
「キー!」
夜の遺跡にはゾンビみたいなお化けみたいな、そういう魔物もたまに出る。
そういう魔物はひたすら殴ってもダメージは少ないので、炎をコートして殴ると効く。
キースは魔術も使えるみたいで、わたしを手伝ってくれる。
ところでキースといえば、出会ってから一か月足らずで、メキメキ大きくなっている。
最初は手のひらに収まるくらい小さかったのに、今やモルモットくらいのサイズ。
「キー!」
キースがパタパタ翼を動かして、電気の球みたいなのを発射した。
それは魔物に当たったあとに近くの魔物を巻き込んで爆発して、わたしはその隙に2体を倒す。
「大丈夫?」
「キー……」
頑張るのはいいのだけどすぐにバテて、しょんぼりしながらわたしの頭の上にぺしゃっと潰れる。
わたしの頭を基地だとでも思っているのだろうか。
「シュート・エレメント・メラ!」
明かりと共に浮かぶランタンの化け物みたいなやつを、炎を発射して吹っ飛ばす。
よわよわなので、無双できてとても楽しい。
「キー! キー! キーキー!!」
振り返ると、なんだか分からないスライムの亜種みたいなのがこっちに向かって来ていた。
わたしを飲み込めるくらい大きなそれは、光の間をぬうようにして向かって来ている。
全身は黒く、闇に溶けている。
わたしは距離をとって炎を撃ち出す。
「シュート・エレメント・メラ!」
スライムに直撃したが、何事もなかったかのようにこっちに向かってくる。
「え、えぇ、なんでぇ?」
「キー、キー!」
キースは鳴いているが、まだ回復できていないらしい。
幸いにも動きはゆっくりなので、しっかり距離をとって敵を観察。
体は真っ黒だと思っていたけど、ところどころ星空みたいにキラキラ輝いている。
光を避けているので、それが弱点なんだろうけど。
「ねえキース、浮かんでる明かりを持ってきてくれない?」
「キー?」
「無理?」
「キー……キーキー!!」
キースはふわっと浮かび上がり、パタパタ飛んで、浮かんでいる明かりのうち1つをもぎ取って来た。
わたしはそれを受け取り、振りかぶって「コート・エレメント・ウィンド!」投げた。
吹っ飛んだ明かりはスライムに激突し、閃光がほとばしる。
「うわっ……」
「キキーッ!?」
猿みたいな声を上げて無様に落下したキースを受け止めれば、そのスライムはムクムクと大きくなっている。
わたしは慌てて反対側に向かって走った。
「や、やばい、やばいやばい!」
バァンッ、と大きな破裂音。
遠くの方で戦っていた冒険者たちが振り向く。
爆発四散したスライムは、壁と周囲の明かりに張り付き、シュウゥと音を立てている。
「どうにか……なった?」
しゅわしゅわもやがては消えていく。わたしはホッと一息ついた。
そして気がついた。魔石とは違う、キラキラ光る金属が見える。
「なんだろ、これ……」
「キー、キー!!」
わたしが触ろうとすると、キースが大声を上げて横からそれを咥えた。
「え?」
その金属の近くに大きな魔石が落ちていて、どうやらそれがこのスライムの魔石のようだった。
キースは金属がいたく気に入ったらしく、咥えて離さない。
「そんなに気に入ったの?」
「……!」
「わ、分かったってば。取らない取らない。でもちょっと見せてよ、そのくらいいいでしょ?」
キースはわたしの手の上に、それをポトッと落としてくれた。
それは、浮かんだ明かりに照らされて、金色と銀色の間みたいな色に輝いていた。
大きさはだいたい、わたしの手の平より少し小さいくらいだろうか。
きれいなコイン、っていう感じ。
「はい」
「キー!」
何がそんなに気に入ったのかは分からないけど、わたしが返すとキースは喜んでまたそれを咥えた。
カラスは光り物を集めるっていうし、コウモリもそういうのがあるのかな。
細くて暗い流れる星が、余すことなく夜空に線を描くのが見える。
溜め息が出るくらいに美しい。
わたしの知っている星はだいたい白色でたまに赤とか混ざってる程度だったけど、この世界の星空はかなり色鮮やかだ。
ほとんどが白なのは同じだけど、青とか緑とか赤褐色の星が見える。
星雲らしき星の集団まで見える。
「きれーだねー」
「キー」
「なに、眠いの?」
わたしは遺跡の残骸を枕にして、仰向けに寝そべっていた。
星は手を伸ばしたら届きそうなくらいにたくさんある。
あんなにたくさんあるんだから、1つくらいわたしのものになればいいのに。
この世界の月は赤と青の2つあるけど、今夜の月は暗い赤褐色。
だから余計に星が見える。
いつまでも星を眺めていたいところでもあるけれど、夜の魔石集めがやりたくて起きているわけなので、わたしは立ち上がった。
モンスターハウスは、闇に溶け込み姿が見えない。
でも間違えて入らないよう、ぼんやりした明かりが地面に落ちていてそれによって縁取られている。
ちょうどライトアップみたいなものだ。
足を踏み入れると、中は眩しいくらいに明るかった。
至る所に浮遊する明かりが灯っていて、その灯りの中、ひたすら戦い続けている人たちが見えた。
夜は昼間より、中心付近にいる人たちが多い。
安全にお金稼ぎをするために来る人たちじゃなくて、魔物を倒して安全を確保するために来る人たちばかりだからだ。
わたしがこうやって端っこでコソコソ小金稼ぎができるのも、真ん中の人たちの激戦あってこそ。
しっかり感謝しつつ、ロッドを構える。
「行くよ!」
「キー!」
わたしは形になってきた無詠唱で、石の魔物を殴る。
頭から崩れた魔物は、キラキラ輝く魔石を出した。
「……よし」
「キー!」
夜の遺跡にはゾンビみたいなお化けみたいな、そういう魔物もたまに出る。
そういう魔物はひたすら殴ってもダメージは少ないので、炎をコートして殴ると効く。
キースは魔術も使えるみたいで、わたしを手伝ってくれる。
ところでキースといえば、出会ってから一か月足らずで、メキメキ大きくなっている。
最初は手のひらに収まるくらい小さかったのに、今やモルモットくらいのサイズ。
「キー!」
キースがパタパタ翼を動かして、電気の球みたいなのを発射した。
それは魔物に当たったあとに近くの魔物を巻き込んで爆発して、わたしはその隙に2体を倒す。
「大丈夫?」
「キー……」
頑張るのはいいのだけどすぐにバテて、しょんぼりしながらわたしの頭の上にぺしゃっと潰れる。
わたしの頭を基地だとでも思っているのだろうか。
「シュート・エレメント・メラ!」
明かりと共に浮かぶランタンの化け物みたいなやつを、炎を発射して吹っ飛ばす。
よわよわなので、無双できてとても楽しい。
「キー! キー! キーキー!!」
振り返ると、なんだか分からないスライムの亜種みたいなのがこっちに向かって来ていた。
わたしを飲み込めるくらい大きなそれは、光の間をぬうようにして向かって来ている。
全身は黒く、闇に溶けている。
わたしは距離をとって炎を撃ち出す。
「シュート・エレメント・メラ!」
スライムに直撃したが、何事もなかったかのようにこっちに向かってくる。
「え、えぇ、なんでぇ?」
「キー、キー!」
キースは鳴いているが、まだ回復できていないらしい。
幸いにも動きはゆっくりなので、しっかり距離をとって敵を観察。
体は真っ黒だと思っていたけど、ところどころ星空みたいにキラキラ輝いている。
光を避けているので、それが弱点なんだろうけど。
「ねえキース、浮かんでる明かりを持ってきてくれない?」
「キー?」
「無理?」
「キー……キーキー!!」
キースはふわっと浮かび上がり、パタパタ飛んで、浮かんでいる明かりのうち1つをもぎ取って来た。
わたしはそれを受け取り、振りかぶって「コート・エレメント・ウィンド!」投げた。
吹っ飛んだ明かりはスライムに激突し、閃光がほとばしる。
「うわっ……」
「キキーッ!?」
猿みたいな声を上げて無様に落下したキースを受け止めれば、そのスライムはムクムクと大きくなっている。
わたしは慌てて反対側に向かって走った。
「や、やばい、やばいやばい!」
バァンッ、と大きな破裂音。
遠くの方で戦っていた冒険者たちが振り向く。
爆発四散したスライムは、壁と周囲の明かりに張り付き、シュウゥと音を立てている。
「どうにか……なった?」
しゅわしゅわもやがては消えていく。わたしはホッと一息ついた。
そして気がついた。魔石とは違う、キラキラ光る金属が見える。
「なんだろ、これ……」
「キー、キー!!」
わたしが触ろうとすると、キースが大声を上げて横からそれを咥えた。
「え?」
その金属の近くに大きな魔石が落ちていて、どうやらそれがこのスライムの魔石のようだった。
キースは金属がいたく気に入ったらしく、咥えて離さない。
「そんなに気に入ったの?」
「……!」
「わ、分かったってば。取らない取らない。でもちょっと見せてよ、そのくらいいいでしょ?」
キースはわたしの手の上に、それをポトッと落としてくれた。
それは、浮かんだ明かりに照らされて、金色と銀色の間みたいな色に輝いていた。
大きさはだいたい、わたしの手の平より少し小さいくらいだろうか。
きれいなコイン、っていう感じ。
「はい」
「キー!」
何がそんなに気に入ったのかは分からないけど、わたしが返すとキースは喜んでまたそれを咥えた。
カラスは光り物を集めるっていうし、コウモリもそういうのがあるのかな。
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