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02 出会いと別れ

グッドコンビネーション

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 キャンプにはギルドよりもたくさんの人がいたが、屋外でかつ水平に広かったせいか、ギルドよりも人混み感は少なかった。

 遺跡は崩れていて、誰も住んではいなかった。

 けれど建物の形自体はかなりきれいに残っていて、キャンプもそれを利用して作られているらしい。


「キー」

 キースは目を覚まし、わたしの肩にしがみつく。

 普通の鳥のように、両足で肩を掴むようなことはできないらしく、無様にべちゃっと潰れていたが、邪魔にもならないのでとりあえずそのままに。


「フェンネルさんたちと合流するんですか?」
「そうだな。とりあえず……」

「フェンネルは先に行ったみたいよ、ロイド」

 シアトルさんがロイドさんにそう言った。


「先にって?」

「モンスターハウスに、よ。ちょうど波だったみたい。私はスードルと合流するけど、レイスはフェンネルの方へ行くそうよ」
「うん、行くんだー!」

「二人はどうするかしら?」


 レイスさんはホーンウルフから荷物を降ろしている。

 フェンネルさんのいるところまでは、徒歩で向かうのだろう。


「俺は獣舎に行く」
「あ、えと、わたしはレイスさんと行きます」

「あらぁ、そうなのね。分かったわ、気をつけて頂戴」

 シアトルさんはニコニコ笑ってそう言った。


「レイス、すぐにフェンネルと合流しなさいよ」
「分かってるよー! スズネ、行こっ!」

 レイスさんはわたしの手を引いて歩き出す。
 わたしもそれに従った。


「モンスターハウスって、なんですか?」
「魔力が溜まってて、そこからいっぱい魔物が出て来る場所、かな?」

「魔物って、魔力が濃い場所から勝手に出て来るんですか」

「うーん、あたしはよく分かんない。ダンジョンの中によくあるんだけど、外にもたまにできちゃうんだよね」


 レイスさんはあまり詳しくないようだった。

 それから、すれ違う冒険者たちに「こんにちは!」と明るく挨拶している。

「ダンジョンの中とは違って、外のモンスターハウスはある程度活動したらなくなるけどね。活動中は、危険なところなんだよー!」

 あれだよー、とレイスさんが指さした先には、謎の壁があった。


 壁は四方を囲んでいて、天井もある。

 その大きさは大きく、一辺が100mくらいありそうだ。

 壁は透明のようにも見えたけど、よく見ると半透明の鏡みたいな感じで、中の様子はよく見えない。

 どこかで見た形だなと思ったら、立方体だった。あの白い部屋と同じ形だ。

 地面がデコボコしているからか、恐らく半分くらいめり込んでいる。


「大きいですね」
「うん、あたしもびっくり。こんなに大きいのは初めてだよー」

 ロイドにワンちゃんたち連れて来てもらった方がいいかなとかレイスさんは言っていた。


「フェンネルは真ん中の方にいるだろうけど、真ん中は危ないから、端っこの方で待ってて! 端っこの方に湧く魔物は強くないし、外まで逃げれば他の人が助けてくれるから!」

 分かりました、と返事をすると、レイスさんは走って行った。


 つまり中心の方の魔物は強くて、外側はそうではないということだろう。

「キー、キー」

 と、耳元で声が聞こえて思い出した。


「あ、そうじゃん。忘れてた。キース、危ないからここで待ってて」

 わたしはキースを摘まみ上げ、自分の肩から離した。


「キー!」

 しかし、飛び上がったキースはもう一度肩に戻って来た。
 どうやら一緒に行きたいようだ。


「えー、別にいいけど……」

 どうなっても知らないよ、とか言って、わたしはその壁にそろそろ近づいて触れた。


「うっ……」

 一気に喧噪に包まれた。

 そこかしこで聞こえる怒号、血の匂い、何かが壊れるような音。

 ここが戦場か。わたしは理解した。


 範囲が広いため人が密集しているようなことはなかったが、そうこうしている間にも目の前に魔物が湧く。

 カタカタと音を立てながら小石がひとりでに動き出した。

「シュート・エレメント・メラ!」


 小石の集合体は小さく後退したが、わたしの方へ向かって来た。

「コート・エレメント・クレイ!」

 魔力をまとわせると同時にロッドで叩く。

 ボキッ、という、乾いた木を殴ったみたいな軽い手当たりと共に、魔物はばらばらと崩れた。


「うん、いい感じ」

 わたしはその小石の山から、小さな魔石を拾った。
 スライムのそれよりも結構大きい。

 わたしは壁に背中を預けるように、またすぐに構えた。


 今度は土の中から這い出してきた。

「シュート・エレメント・アクア!」

 ドロドロの形が完成する前に押し流される。


「キー、キー!」

 知らないうちにキースが飛んでいた。

 鳴き声につられてそちらを見ると、地面から出て来た魔物の上半身がほぼ完成していた。


「シュート・エレメント・アクア!」

 少し怯んだが、また形を作り始める。


「シュート・エレメント・アクア!」

 もう一度撃つと、完全に押し流された。


「キー!」

 どうやら、キースは魔物を教えてくれるようだ。

 わたしはまた振り返る。


「キー、キー!」

 小石のモンスターの完成形みたいなやつがこちらにゆっくり近づいている。


「シュート・エレメント・クレイ! コート・エレメント・クレイ!」

 土の塊を当てて怯ませてから、距離を詰めてロッドをコートして叩きつける。

 弱いと言われていただけあって、簡単にボロボロと崩れ落ちた。


「キー!」

 休む間もなくまた次が来る。


「キース、魔石探して拾ってくれる?」
「キー、キー!!」

 嫌みたいだ。

 まあ小さいコウモリだし、地面に降りたら踏み潰されそうだからだろう。


「よし、また教えてね」

 わたしは魔石を3個素早く拾って回収した。


「キー!」
「はーい!」

 わたしはまた構えた。

 不思議と疲労感はなく、いつまでも動き続けられるような気がした。
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