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#2 部屋の中

24 霧を隠した成果だ

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 意外にも、ブライドは恋愛小説が好きだという。
 勉強になるそうだ。何の勉強だよ。

「貴方は、本を読まないんですか」
「読むときもあるけど、最近は仕事が忙しいからな」
「同じ本を読んで、感想を語り合ってみたいです」
「そうなの? 嬉しい」

 最近、ブライドは俺に優しい。

 最初の塩対応っぷりはどこへやら、話しかけてくれるし返事も貰えるし、俺を頼って来てくれるのが本当に可愛い。

 俺の愛情が伝わったんだろうか?
 小動物を懐かせたような達成感を感じる。

「これは俺も読んだことあるよ」
「そうなんですか?」
「ああ。ちょっと前だけど……」

 俺は、だんだんブライドの基地となりつつあるベッドサイドの本を取ってパラパラとページを捲った。

「そう、俺この主人公好きなんだよ」
「え、そうですか?」
「ああ、なんでもできるタイプというか」

 そう言って俺は本をベッドサイドに戻した。

「典型的なできる男だろ?」
「そうなんですか?」
「俺の憧れだよ」
「……そうですか」

 俺は笑いながら食器を洗う。いつもと同じ日常が流れている。

 ふと俺は霧の外から、その白い闇を覗くことがある。しかし、霧から逃れても俺の意識は霧に囚われたままで、結局視線を外すことすらできないままに、俺は再び飲み込まれる。

 それを望む俺がどこかにいて、それが正しいと思う俺がいる。

 それを悟らせないほど、俺は大人になった。
 その事実に安堵していた。

「続きは明日話そう。おやすみ」
「おやすみなさい」

 俺はそのままソファに横になり、目を閉じた。

「……楽しみにしていますからね」

 と聞こえた気がした。
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