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#1 実験体
04 まるで感情がないみたいだ
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レビィは予定外の俺の訪問に、文字通り嫌な顔一つせず対応してくれた。
もちろんいい顔をされたわけではない。
無表情だ。仏頂面ともいう。俺としては嫌な顔をされるより傷つく。
「何か不都合があったか?」
疲れたような、そうでないような、そんな風にレビィは言った。
「ねえレビィ、俺から一生のお願いがあるんだけど聞いてもらっていいかな?」
「一生のお願いということは、その願いを聞いたら、私はもう二度とお前の願いを聞き入れなくてもいいということだな?」
半ギレという奴だろうか。レビィは恐ろしく冷静な声でそう言った。
冗談なのかそうじゃないのか、本当に分からない。
「え、ああうん、まあ……そういうことだと思う……」
「どんな無茶を私に言うつもりだ? 例えばお前を安楽死させろとか。なるほど、一生のお願いにするには合理的だな」
遠回しに死ねと言われているような気もするし、そうじゃないような気もする。
ジャックさんはやたらとレビィが可愛いとか言うのだけど、俺には一生理解できる気がしない。
冗談なのか本気なのか分からないのが怖すぎる。
レビィは困惑する俺を無視して、また何かを書いている。
俺には興味がないのか、それとも手元の仕事が相当忙しいか……たぶん、両方だろう。
レビィは多忙だし、同時に無関心だ。
「実験体5924、いるだろ?」
「要らん。処分しろと言っただろ」
「いや、そうじゃなくて、その……彼女を、処分しないで欲しい、です……」
レビィは、ペンを止めて少し考える仕草を見せた。
そのあと、俺を見て少しだけ首を傾げた。こういう所作はちょっと可愛いと思う。
「それは、例の実験を再開させろということか?」
「いや、そうじゃなくて! 俺……その、彼女に死んでほしくなくて……」
「では、別の実験に使えということか?」
「そうじゃなくて……」
「それならどうしたい?」
聞かれて、俺は少しだけ言葉に詰まった。
「生かすこと自体は構わん。好きにすればいい。保管するよりもコストが安いから殺すまでだ」
レビィはそう言い、俺を見つめた。
蛇のような目をしている。
「だがある程度の安全策は取る。私としても、組織としても、妥協できることとできないことがある。それともお前は、ただ単に、見知った人間に死んでほしくないというだけでそう言っているのか?」
責めるようにも聞こえたが、これは恐らく単純な問いかけなのだろう。俺にも辛うじて分かった。
レビィはルシファーの名の下に容易く他人の命を奪い去るけども、一応、「人は殺したくない」という世間一般的な感覚は理解しているし、別にそれを蔑んでいるわけでもない。
だから俺は至って素直に、自分の気持ちを話した。
「一目惚れした」
「ふざけるな」
レビィは言葉の刃をあまりにも容赦なく俺に突き刺した。
世間一般の気持ちは尊重するのに、俺の気持ちは蔑むようだ。泣きそう。
「私は、お前が一目惚れした結果がプラスに向いた前例を一つも知らんぞ」
「今回は大丈夫だから!」
「何も大丈夫じゃない」
「俺の恋愛なんだから勝手にさせろよ!」
「刑事責任能力のない奴が偉そうなことを言うな」
レビィは容赦なかった。それはちょっと気にしてるので言わないでほしい。
「……しかし先ほども言ったが、私はお前の『お願い』を聞き入れようと思っている」
とレビィは言った。
「お前の恋愛はほぼ間違いなく悪い結果に終わり、稀に最低な結果に終わるが、それは偉大な発明を生み出した多くの実験でも同じことだ。次は成功するかもしれない。例え今まで成功したことがなくても」
「そうそう、その通りだよ。ありがとうレビィ、俺すごく嬉しいよ」
「だが、今まで起きたことがないような、さらに悪い事態が起きるとも限らない」
「でもレビィ、貯金ほとんど騙し取られて借金肩代わりさせられて、その上危うく売り飛ばされそうになる以上に最低のことってある? 二回くらいあったけど」
「だがお前は今こうして、五体満足で生きているだろう。もし手足が切り飛ばされたり、命を奪われたりしたらどうなる? ルシファーがどれほど悲しむと思う?」
「ああ……うん。それはほら、気を付けるからさ」
「お前の注意力が高いとは到底思えんな。二度も身売りされそうになっておいて」
まさにぐうの音も出ない。
俺はただ項垂れるしかなかった。
確かに俺の人を見る目はない。
歴代の友達も恋人も、揃いも揃って皆クズだ。
唯一、家族だけは俺の味方でいてくれたけど、そんなルシファーは、俺が選んだから俺を育ててくれたわけじゃない。
俺は選ばれた方だ。
証拠に俺が選んで生まれてきたであろう両親は、生まれて間もなく俺を捨てた。
「……ところで話は変わるが、5924の方はお前に惹かれているのか?」
「レビィ、俺ほどの美男子なら一方通行だろうがなんだろうが、成立するんだ」
「いいや、お前はストーカー容疑で二度投獄されかけている。恋愛は一方的なものではない。私は後始末に追われている」
「ごめんなさい。反省しています」
「しかしお前は確かに美男子だな。ルシファーの次に」
会話の流れが読めないのもレビィの特徴だ。彼は机から身を乗り出して俺の頭に手を伸ばした。
手首は痩せていて、指は長い。
怒りに任せて首をへし折りに来たようにも見えたが、なんか撫でてくれた。もうそんな年じゃないんだけど。
「ルシーは美男子っていうか、普通に可愛い男児じゃないか……?」
「慎め、不敬だ。身内でなければ命はなかった」
これは冗談だ。少し笑っているのが分かる。
しかしその微笑みは、笑顔というにはあまりにも小さい。
「レビィ。俺たまに思うんだけど、もしかしなくてもレビィってルシーのこと大好きすぎるよ。実の兄のあんなでかい肖像画飾る人なかなかいないよ。しかもほら、小さいサイズの奴が五種類も。肖像画ってこんなに大量に所有するものじゃないよ」
「五種類じゃない。七種類ある。日替わりだ」
「うっそだろ」
ジャックさんはそこまででもないのに、レビィは本当、ルシーのことが大好きだ。
表情にこそ出さないが、多分この人はルシーの為なら死ねるタイプだと思う。
立場上、色んな人に崇拝されているルシーだけど、やっぱり一番はこのレビィ。
どんな信者にも負けない忠誠心と信仰心がある。
レビィはジャックさんと同じ、ルシーとは血の繋がった兄弟だ。
ジャックさんはルシーの双子の弟で、レビィは年の離れた弟という関係の違いからか、二人のルシーに対する態度はまるで違う。
ジャックさんはルシーのことを尊敬してはいても信仰しているわけではなくて、その意見とか行動に対しても反対したり、議論を戦わせたりすることも多い。
レビィはルシーに対して絶対服従で、反対意見なんか全く言わないし、ルシーのために積極的に手を汚し、身を切って血を流すことを厭わない。
「では、惹かれていないにしても少しくらい懐かれているのか?」
「なんかすごい睨まれてるんだよね。侮蔑の視線で」
「どうして蔑まれている相手にそこまで好意を寄せる? お前はマゾヒストなのか?」
「そうだと思う」
「残念でならない。お前の能力と同じくらい残念だ。では、お前は5924を具体的にどうしたい?」
「あーっと、うん、えっと、できれば側にいたい……です」
「お前が収容室に住むということか?」
「あ、えっと、できれば逆の方向で……」
「そうか。お前は難しいことを言うな」
レビィは毛ほども困った様子を見せないままにそう呟く。本当に困っていないのか、それとも冗談なのか、やはり分からない。
「私は一つ現実的な案をお前に提案しよう」
「えっと、あれだよな? 死体として側に置くとかそういうことではなく?」
「無論だ。そんな事はしない」
いや、しそうなんだよ。レビィはやりかねないんだよ。
心の中で激しく突っ込みつつ、俺は努めて神妙な面持ちをする。
「マゾヒストのお前なら、『首輪』は知っているな」
「なんか言い方に棘があるような気がするけど知ってるよ」
人には、天に定められた寿命がある。それを天寿といい、天寿は『糸』と直結する。
だから、その『糸』が切れたら死んでしまうらしい。
普通の人には『糸』は見えない。ルシファー自身と、彼に仕える使徒と呼ばれる人たちには見える。
例えば、ジャックさんは使徒なので見えるのだけど、レビィには見えない。
「天寿と直結する『糸』を縛って、天寿を主に握らせる契約技術だろ?」
「さすがマゾヒストだな」
「褒めてくれてるならありがとう。それがどうしたんだ?」
「褒めていない。全くお前は棍棒のように鈍いな」
「棍棒? 棍棒のように鈍いってどういうこと?」
「それを使う」
「棍棒を?」
「殺すぞ」
「ごめんなさい」
「5924の首輪の『鍵』はお前が握れ。これをお前に渡しておく」
レビィは、デスクの引き出しから小瓶を取り出した。
「仲介人は私になっている。使い方は分かるな?」
「一応知ってるよ、やったことないけど……」
「操作自体は単純だ。知識があれば問題ない」
淡々とした口調で、レビィは一通り使い方を説明してくれた。
「でも、刺し違える覚悟で襲ってきたりするんじゃ?」
「5924は、私の知る限りお前のように向こう見ずな自殺志願者ではない」
「俺と気が合わないわけだな……」
「だから自分の天寿を縛られているとあれば、お前は殺さないはずだ」
「俺以外のを殺す危険性はないのか?」
「可能性は極めて低い」
レビィは迷いなく言い切る。
「アレは、人類を殺す価値もない存在だと確信している。殺人は5924にとって娯楽にもならない。自らに害を及ぼすならまだしも、全く関りのない人間を殺すことはあり得ない」
「いやでも、さっき殺人兵器とか言ってなかった? つまり、研究員を殺しちゃったんだろ?」
「5924は快楽殺人鬼ではない。取り押さえられそうになった故に、過剰に反撃しただけだ」
「……えっと、じゃあ、大丈夫なんだよな?」
「そうだな、構わん。切るなり焼くなり食うなり、好きなようにすればいい」
多分冗談なんだろうけど、冗談に見えなかった。
やっぱり俺は、この人が苦手だ。
もちろんいい顔をされたわけではない。
無表情だ。仏頂面ともいう。俺としては嫌な顔をされるより傷つく。
「何か不都合があったか?」
疲れたような、そうでないような、そんな風にレビィは言った。
「ねえレビィ、俺から一生のお願いがあるんだけど聞いてもらっていいかな?」
「一生のお願いということは、その願いを聞いたら、私はもう二度とお前の願いを聞き入れなくてもいいということだな?」
半ギレという奴だろうか。レビィは恐ろしく冷静な声でそう言った。
冗談なのかそうじゃないのか、本当に分からない。
「え、ああうん、まあ……そういうことだと思う……」
「どんな無茶を私に言うつもりだ? 例えばお前を安楽死させろとか。なるほど、一生のお願いにするには合理的だな」
遠回しに死ねと言われているような気もするし、そうじゃないような気もする。
ジャックさんはやたらとレビィが可愛いとか言うのだけど、俺には一生理解できる気がしない。
冗談なのか本気なのか分からないのが怖すぎる。
レビィは困惑する俺を無視して、また何かを書いている。
俺には興味がないのか、それとも手元の仕事が相当忙しいか……たぶん、両方だろう。
レビィは多忙だし、同時に無関心だ。
「実験体5924、いるだろ?」
「要らん。処分しろと言っただろ」
「いや、そうじゃなくて、その……彼女を、処分しないで欲しい、です……」
レビィは、ペンを止めて少し考える仕草を見せた。
そのあと、俺を見て少しだけ首を傾げた。こういう所作はちょっと可愛いと思う。
「それは、例の実験を再開させろということか?」
「いや、そうじゃなくて! 俺……その、彼女に死んでほしくなくて……」
「では、別の実験に使えということか?」
「そうじゃなくて……」
「それならどうしたい?」
聞かれて、俺は少しだけ言葉に詰まった。
「生かすこと自体は構わん。好きにすればいい。保管するよりもコストが安いから殺すまでだ」
レビィはそう言い、俺を見つめた。
蛇のような目をしている。
「だがある程度の安全策は取る。私としても、組織としても、妥協できることとできないことがある。それともお前は、ただ単に、見知った人間に死んでほしくないというだけでそう言っているのか?」
責めるようにも聞こえたが、これは恐らく単純な問いかけなのだろう。俺にも辛うじて分かった。
レビィはルシファーの名の下に容易く他人の命を奪い去るけども、一応、「人は殺したくない」という世間一般的な感覚は理解しているし、別にそれを蔑んでいるわけでもない。
だから俺は至って素直に、自分の気持ちを話した。
「一目惚れした」
「ふざけるな」
レビィは言葉の刃をあまりにも容赦なく俺に突き刺した。
世間一般の気持ちは尊重するのに、俺の気持ちは蔑むようだ。泣きそう。
「私は、お前が一目惚れした結果がプラスに向いた前例を一つも知らんぞ」
「今回は大丈夫だから!」
「何も大丈夫じゃない」
「俺の恋愛なんだから勝手にさせろよ!」
「刑事責任能力のない奴が偉そうなことを言うな」
レビィは容赦なかった。それはちょっと気にしてるので言わないでほしい。
「……しかし先ほども言ったが、私はお前の『お願い』を聞き入れようと思っている」
とレビィは言った。
「お前の恋愛はほぼ間違いなく悪い結果に終わり、稀に最低な結果に終わるが、それは偉大な発明を生み出した多くの実験でも同じことだ。次は成功するかもしれない。例え今まで成功したことがなくても」
「そうそう、その通りだよ。ありがとうレビィ、俺すごく嬉しいよ」
「だが、今まで起きたことがないような、さらに悪い事態が起きるとも限らない」
「でもレビィ、貯金ほとんど騙し取られて借金肩代わりさせられて、その上危うく売り飛ばされそうになる以上に最低のことってある? 二回くらいあったけど」
「だがお前は今こうして、五体満足で生きているだろう。もし手足が切り飛ばされたり、命を奪われたりしたらどうなる? ルシファーがどれほど悲しむと思う?」
「ああ……うん。それはほら、気を付けるからさ」
「お前の注意力が高いとは到底思えんな。二度も身売りされそうになっておいて」
まさにぐうの音も出ない。
俺はただ項垂れるしかなかった。
確かに俺の人を見る目はない。
歴代の友達も恋人も、揃いも揃って皆クズだ。
唯一、家族だけは俺の味方でいてくれたけど、そんなルシファーは、俺が選んだから俺を育ててくれたわけじゃない。
俺は選ばれた方だ。
証拠に俺が選んで生まれてきたであろう両親は、生まれて間もなく俺を捨てた。
「……ところで話は変わるが、5924の方はお前に惹かれているのか?」
「レビィ、俺ほどの美男子なら一方通行だろうがなんだろうが、成立するんだ」
「いいや、お前はストーカー容疑で二度投獄されかけている。恋愛は一方的なものではない。私は後始末に追われている」
「ごめんなさい。反省しています」
「しかしお前は確かに美男子だな。ルシファーの次に」
会話の流れが読めないのもレビィの特徴だ。彼は机から身を乗り出して俺の頭に手を伸ばした。
手首は痩せていて、指は長い。
怒りに任せて首をへし折りに来たようにも見えたが、なんか撫でてくれた。もうそんな年じゃないんだけど。
「ルシーは美男子っていうか、普通に可愛い男児じゃないか……?」
「慎め、不敬だ。身内でなければ命はなかった」
これは冗談だ。少し笑っているのが分かる。
しかしその微笑みは、笑顔というにはあまりにも小さい。
「レビィ。俺たまに思うんだけど、もしかしなくてもレビィってルシーのこと大好きすぎるよ。実の兄のあんなでかい肖像画飾る人なかなかいないよ。しかもほら、小さいサイズの奴が五種類も。肖像画ってこんなに大量に所有するものじゃないよ」
「五種類じゃない。七種類ある。日替わりだ」
「うっそだろ」
ジャックさんはそこまででもないのに、レビィは本当、ルシーのことが大好きだ。
表情にこそ出さないが、多分この人はルシーの為なら死ねるタイプだと思う。
立場上、色んな人に崇拝されているルシーだけど、やっぱり一番はこのレビィ。
どんな信者にも負けない忠誠心と信仰心がある。
レビィはジャックさんと同じ、ルシーとは血の繋がった兄弟だ。
ジャックさんはルシーの双子の弟で、レビィは年の離れた弟という関係の違いからか、二人のルシーに対する態度はまるで違う。
ジャックさんはルシーのことを尊敬してはいても信仰しているわけではなくて、その意見とか行動に対しても反対したり、議論を戦わせたりすることも多い。
レビィはルシーに対して絶対服従で、反対意見なんか全く言わないし、ルシーのために積極的に手を汚し、身を切って血を流すことを厭わない。
「では、惹かれていないにしても少しくらい懐かれているのか?」
「なんかすごい睨まれてるんだよね。侮蔑の視線で」
「どうして蔑まれている相手にそこまで好意を寄せる? お前はマゾヒストなのか?」
「そうだと思う」
「残念でならない。お前の能力と同じくらい残念だ。では、お前は5924を具体的にどうしたい?」
「あーっと、うん、えっと、できれば側にいたい……です」
「お前が収容室に住むということか?」
「あ、えっと、できれば逆の方向で……」
「そうか。お前は難しいことを言うな」
レビィは毛ほども困った様子を見せないままにそう呟く。本当に困っていないのか、それとも冗談なのか、やはり分からない。
「私は一つ現実的な案をお前に提案しよう」
「えっと、あれだよな? 死体として側に置くとかそういうことではなく?」
「無論だ。そんな事はしない」
いや、しそうなんだよ。レビィはやりかねないんだよ。
心の中で激しく突っ込みつつ、俺は努めて神妙な面持ちをする。
「マゾヒストのお前なら、『首輪』は知っているな」
「なんか言い方に棘があるような気がするけど知ってるよ」
人には、天に定められた寿命がある。それを天寿といい、天寿は『糸』と直結する。
だから、その『糸』が切れたら死んでしまうらしい。
普通の人には『糸』は見えない。ルシファー自身と、彼に仕える使徒と呼ばれる人たちには見える。
例えば、ジャックさんは使徒なので見えるのだけど、レビィには見えない。
「天寿と直結する『糸』を縛って、天寿を主に握らせる契約技術だろ?」
「さすがマゾヒストだな」
「褒めてくれてるならありがとう。それがどうしたんだ?」
「褒めていない。全くお前は棍棒のように鈍いな」
「棍棒? 棍棒のように鈍いってどういうこと?」
「それを使う」
「棍棒を?」
「殺すぞ」
「ごめんなさい」
「5924の首輪の『鍵』はお前が握れ。これをお前に渡しておく」
レビィは、デスクの引き出しから小瓶を取り出した。
「仲介人は私になっている。使い方は分かるな?」
「一応知ってるよ、やったことないけど……」
「操作自体は単純だ。知識があれば問題ない」
淡々とした口調で、レビィは一通り使い方を説明してくれた。
「でも、刺し違える覚悟で襲ってきたりするんじゃ?」
「5924は、私の知る限りお前のように向こう見ずな自殺志願者ではない」
「俺と気が合わないわけだな……」
「だから自分の天寿を縛られているとあれば、お前は殺さないはずだ」
「俺以外のを殺す危険性はないのか?」
「可能性は極めて低い」
レビィは迷いなく言い切る。
「アレは、人類を殺す価値もない存在だと確信している。殺人は5924にとって娯楽にもならない。自らに害を及ぼすならまだしも、全く関りのない人間を殺すことはあり得ない」
「いやでも、さっき殺人兵器とか言ってなかった? つまり、研究員を殺しちゃったんだろ?」
「5924は快楽殺人鬼ではない。取り押さえられそうになった故に、過剰に反撃しただけだ」
「……えっと、じゃあ、大丈夫なんだよな?」
「そうだな、構わん。切るなり焼くなり食うなり、好きなようにすればいい」
多分冗談なんだろうけど、冗談に見えなかった。
やっぱり俺は、この人が苦手だ。
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