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第十九話:後輩、家に来る
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――ピンポーン!
しばらくすると、家のチャイムがなった。
「鍵開いてるよー!」
誰が来たか確認することなく、ドアまで行かずに大声を出して伝える。
すると「はーい」という返事に続いて、予想通り都築が入ってきた。
「こんにちはー。お、ちゃんと準備してますね。感心、感心」
「そりゃあね」
玄関まで行かなかったのは手がベタベタだったからだ。
ちょうど髪に整髪料をつけていたところだった。
普段はつけたりつけなかったりだから別にそのままでもいいんだけど、つけた方がなんとなく気合が入る。
ちなみに都築はすぐに来たわりに、薄めだがきちんとメイクしていた。
服装はこの前遊びに行ったときとはテイストが少し変わって、なんというかボーイッシュな感じだ。
「その服の方がお前っぽいな」
「えーっと……それってこっちの方が先輩の好みってことですか?」
「いや?」
「じゃあ前みたいな女の子っぽい方がいい?」
「そういうわけでもない」
「……わかりにくい!」
「別にどうでもいいだろ、俺の好みなんて」
「――っ、……せっかく遊ぶんだから好みに合わせたいじゃないですか!」
「服なんて相手に合わせるよりも好きな物着ればいいと思うぞ」
「そういうことじゃないんだけどなぁ……」
都築は難しい顔で首を捻っている。
いや、でも本当に何着てもいいと思うけどな。
前のも今のもよく似合ってるし。
「……うーん、まあ今日のところはいいや。それよりほら、食べましょ。家で温めてきたんで、早くしないと冷めちゃいますし」
「お。実はさっきからいい匂いがしてて気になってたんだよね。何持ってきてくれたの?」
「酢豚とポテトサラダです。汁物はちょっと持ってくるの難しかったのでインスタントのお味噌汁持ってきましたけど、飲みます? 合うかわかりませんが」
「飲む。てか都築って意外と気が利くよな」
「でしょ? ポイント高い?」
「高い高い」
「――よし! じゃあお湯沸かしたいんで、ケトル借りますね。先輩は向こうでテーブルの片付けをお願いします。終わったら配膳しに戻ってきてください」
「へい」
指示された通り、都築をキッチンに残して部屋に戻る。
テーブルには昨日読んでいた本と、つまんでいたお菓子の空箱がいくつか置きっぱなしになっていた。
本は本棚へと戻し、お菓子はまとめて捨ててスペースを作る。
紗香が頻繁に出入りしているだけあって散らかっているというほどではないので、すぐに片付いた。
「向こう終わったぞー」
「こちらも終わりました。はい、これどうぞ」
「あれ? タッパーから皿に移したんだ」
「え? だってなんか嫌じゃないですか? そのままだと見映え悪いし」
「そうか?」
「料理は見た目が大事と言いますしね。きっとこの方が美味しいですよ。ほら、持ってってください」
言わんとすることはわからないでもないので、反論はせずに大人しく運ぶ。
一人分しかないため当然、俺の場所にだけ置くことになるが、なんだかこれはこれで申し訳ない気分になる。
もう一度キッチンを往復して全ての皿と箸を並べ終えると、ちょうど空いたタッパーを洗いを終えた都築も戻ってきた。
対面に置かれたクッションに腰掛けて、こちらを見る。
「さ、どうぞ」
「ああ。いただきます――ってか、本当に俺だけで食べていいの?」
「え? いいですよ? 私は食べてきましたし」
「ならいいんだけどさ」
ま、いいか。一応確認はしたし。
本人がああ言っている以上、本当にいらないんだろ。
そう思い、改めて「いただきます」と唱えてから酢豚を箸で摘み、口へと運ぶ。
と、そこで都築がこちらをじっと見ているのに気が付いた。
なんだろう。もしかして味の感想でも聞きたいのかな。
口の中の物を咀嚼し終えてから、ぼそり呟く。
「――ん、美味い」
「……へへ。よかった。実はちょーっとだけ不安だったんですよね」
どうやら正解を引いたようだ。
都築はほっとしたように力を抜いた。
「こんだけ作れてて不味いわけないだろうに。てか昨日、自分でも食べたんだろ?」
「それでも不安なものは不安ですよ。だって、えっと……ほら、他人に自分の料理を食べさせる機会なんてないじゃないですか」
「この前作ってくれたじゃん。サンドイッチ」
「あれとこれとは別です。だってサンドイッチなら絶対に失敗しませんもん」
「そうか? ――ま、俺はしばらく食べてるから好きにしててくれ。俺を見てても面白くないだろ」
「んー、そんなこともないですけど。先輩がそういうならそうしようかな」
そう言って都築は部屋を見渡し、本棚に目を留めた。
そしてそちらへと移動し、一通り眺めてから漫画や小説などを手に取って品定めするようにパラパラとページを捲っている。
どうやら読むものを選んでいるらしい。
俺はそれを横目で見つつ、食事を続行した。
しばらくすると、家のチャイムがなった。
「鍵開いてるよー!」
誰が来たか確認することなく、ドアまで行かずに大声を出して伝える。
すると「はーい」という返事に続いて、予想通り都築が入ってきた。
「こんにちはー。お、ちゃんと準備してますね。感心、感心」
「そりゃあね」
玄関まで行かなかったのは手がベタベタだったからだ。
ちょうど髪に整髪料をつけていたところだった。
普段はつけたりつけなかったりだから別にそのままでもいいんだけど、つけた方がなんとなく気合が入る。
ちなみに都築はすぐに来たわりに、薄めだがきちんとメイクしていた。
服装はこの前遊びに行ったときとはテイストが少し変わって、なんというかボーイッシュな感じだ。
「その服の方がお前っぽいな」
「えーっと……それってこっちの方が先輩の好みってことですか?」
「いや?」
「じゃあ前みたいな女の子っぽい方がいい?」
「そういうわけでもない」
「……わかりにくい!」
「別にどうでもいいだろ、俺の好みなんて」
「――っ、……せっかく遊ぶんだから好みに合わせたいじゃないですか!」
「服なんて相手に合わせるよりも好きな物着ればいいと思うぞ」
「そういうことじゃないんだけどなぁ……」
都築は難しい顔で首を捻っている。
いや、でも本当に何着てもいいと思うけどな。
前のも今のもよく似合ってるし。
「……うーん、まあ今日のところはいいや。それよりほら、食べましょ。家で温めてきたんで、早くしないと冷めちゃいますし」
「お。実はさっきからいい匂いがしてて気になってたんだよね。何持ってきてくれたの?」
「酢豚とポテトサラダです。汁物はちょっと持ってくるの難しかったのでインスタントのお味噌汁持ってきましたけど、飲みます? 合うかわかりませんが」
「飲む。てか都築って意外と気が利くよな」
「でしょ? ポイント高い?」
「高い高い」
「――よし! じゃあお湯沸かしたいんで、ケトル借りますね。先輩は向こうでテーブルの片付けをお願いします。終わったら配膳しに戻ってきてください」
「へい」
指示された通り、都築をキッチンに残して部屋に戻る。
テーブルには昨日読んでいた本と、つまんでいたお菓子の空箱がいくつか置きっぱなしになっていた。
本は本棚へと戻し、お菓子はまとめて捨ててスペースを作る。
紗香が頻繁に出入りしているだけあって散らかっているというほどではないので、すぐに片付いた。
「向こう終わったぞー」
「こちらも終わりました。はい、これどうぞ」
「あれ? タッパーから皿に移したんだ」
「え? だってなんか嫌じゃないですか? そのままだと見映え悪いし」
「そうか?」
「料理は見た目が大事と言いますしね。きっとこの方が美味しいですよ。ほら、持ってってください」
言わんとすることはわからないでもないので、反論はせずに大人しく運ぶ。
一人分しかないため当然、俺の場所にだけ置くことになるが、なんだかこれはこれで申し訳ない気分になる。
もう一度キッチンを往復して全ての皿と箸を並べ終えると、ちょうど空いたタッパーを洗いを終えた都築も戻ってきた。
対面に置かれたクッションに腰掛けて、こちらを見る。
「さ、どうぞ」
「ああ。いただきます――ってか、本当に俺だけで食べていいの?」
「え? いいですよ? 私は食べてきましたし」
「ならいいんだけどさ」
ま、いいか。一応確認はしたし。
本人がああ言っている以上、本当にいらないんだろ。
そう思い、改めて「いただきます」と唱えてから酢豚を箸で摘み、口へと運ぶ。
と、そこで都築がこちらをじっと見ているのに気が付いた。
なんだろう。もしかして味の感想でも聞きたいのかな。
口の中の物を咀嚼し終えてから、ぼそり呟く。
「――ん、美味い」
「……へへ。よかった。実はちょーっとだけ不安だったんですよね」
どうやら正解を引いたようだ。
都築はほっとしたように力を抜いた。
「こんだけ作れてて不味いわけないだろうに。てか昨日、自分でも食べたんだろ?」
「それでも不安なものは不安ですよ。だって、えっと……ほら、他人に自分の料理を食べさせる機会なんてないじゃないですか」
「この前作ってくれたじゃん。サンドイッチ」
「あれとこれとは別です。だってサンドイッチなら絶対に失敗しませんもん」
「そうか? ――ま、俺はしばらく食べてるから好きにしててくれ。俺を見てても面白くないだろ」
「んー、そんなこともないですけど。先輩がそういうならそうしようかな」
そう言って都築は部屋を見渡し、本棚に目を留めた。
そしてそちらへと移動し、一通り眺めてから漫画や小説などを手に取って品定めするようにパラパラとページを捲っている。
どうやら読むものを選んでいるらしい。
俺はそれを横目で見つつ、食事を続行した。
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