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竜の国
後日談(16)
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リーシャがノアの答えにショックを受け、立ち尽くしていると、悪くなってしまった空気に耐えかねたらしいルシアが、わざとらしく大きな声を出した。
「やめやめ! そんな後ろ向きなもしもの話、今は考えないようにしようぜ」
「そっ、そうだよ。せっかくねぇさんが竜になってもいいかもって思ってくれてるのに、こんな話ばっかりしてたら、やっぱやめるって思っちゃうかもだよぉ」
エリアルも不安そうにノアへと訴えかけた。
冷静そうに見えていたノアも実はそうではなかったのか、落ち着こうとするように、大きな息を吐いた。
「そうだな。ただな、リーシャ。お前に負担を強いるのをわかったうえで言わせてくれ。お前がいなくなってしまっても、それを悲しみ、引きずる者がいる事も念頭に入れたうえで判断して欲しい」
「……うん、わかった」
気持ちの整理がつかないまま、リーシャはなんとなく返事をしていた。
いつも元気な少年のように弧を描いている眉を下げたエリアルが、リーシャの顔を覗き込む。
「ねぇさん、他は? ねぇさんが気にしてる事って、まだ何かあるの?」
心配してくれるエリアルの顔を見ていると、くすんでいた気持ちが少し晴れたように感じられた。
竜になる決断をできずにいる大きな理由は友人たちとの死別だけれど、気にかかっている要因はたしかにまだある。
「えっと。暮らし方、とかかな? 記憶を持ったまま転生出来ても、今みたいに人間としての暮しを手放せないと思うの」
リーシャは困ったように笑った。
竜の国で過ごしてみて思った事がある。今回は限られた期間の中だったため、苦には感じなかったけれど、娯楽にあふれた人間生活に慣れた自分がその生活を捨てて生きていく未来が想像できないのだ。
リーシャが人間の姿を持つ竜になれるかわからない。姿が変われば、今のままの生活を続ける事は困難になるだろう。
人間の姿になれたとしても、このまま生まれながらの竜であるノアたちを、今の生活に縛り続ける事に抵抗がある。
「だろうな。それはお前の好きにすればいい」
ノアの反応は、リーシャと共に生きる事以外には無関心で、それ以外に求める事はないと言っているようだった。
竜と人間の生き方は違う。
リーシャは自分と暮らさせるために、ノアたちに竜としての本能を抑え込ませているのではと思っていたのだけれど、反応を見る限りそうでもないのかもしれない。今と変わらない生活が送れるのなら、不満はない。
ただ、何もかもがリーシャ基準に決まっていくけれど、それが本当にノアたちの本心なのかという心配があった。
「決まり事とか、いろいろな事、ずっと人間に合わせないといけないんだよ? 今みたいな暮らし方を窮屈だとか思ってないの?」
「たしかに、揉め事を力で解決してはならない点は窮屈だとは思っている。気にくわない人間を消すこともできないからな」
「えっ、そこ?」
「だが、お前が竜となって俺たちと共に生きる決断をするというのなら、そんなことは些細な事だ。このまま人間に寄せた生き方のままでも構わない。重要なのはお前が番として側にい続ける事。俺はそれが叶うのなら、他はどうでもいい」
言葉通り、心底どうでもよさげに淡々と語る姿を見て、それがノアの本心だという事はわかった。
「やめやめ! そんな後ろ向きなもしもの話、今は考えないようにしようぜ」
「そっ、そうだよ。せっかくねぇさんが竜になってもいいかもって思ってくれてるのに、こんな話ばっかりしてたら、やっぱやめるって思っちゃうかもだよぉ」
エリアルも不安そうにノアへと訴えかけた。
冷静そうに見えていたノアも実はそうではなかったのか、落ち着こうとするように、大きな息を吐いた。
「そうだな。ただな、リーシャ。お前に負担を強いるのをわかったうえで言わせてくれ。お前がいなくなってしまっても、それを悲しみ、引きずる者がいる事も念頭に入れたうえで判断して欲しい」
「……うん、わかった」
気持ちの整理がつかないまま、リーシャはなんとなく返事をしていた。
いつも元気な少年のように弧を描いている眉を下げたエリアルが、リーシャの顔を覗き込む。
「ねぇさん、他は? ねぇさんが気にしてる事って、まだ何かあるの?」
心配してくれるエリアルの顔を見ていると、くすんでいた気持ちが少し晴れたように感じられた。
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「えっと。暮らし方、とかかな? 記憶を持ったまま転生出来ても、今みたいに人間としての暮しを手放せないと思うの」
リーシャは困ったように笑った。
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人間の姿になれたとしても、このまま生まれながらの竜であるノアたちを、今の生活に縛り続ける事に抵抗がある。
「だろうな。それはお前の好きにすればいい」
ノアの反応は、リーシャと共に生きる事以外には無関心で、それ以外に求める事はないと言っているようだった。
竜と人間の生き方は違う。
リーシャは自分と暮らさせるために、ノアたちに竜としての本能を抑え込ませているのではと思っていたのだけれど、反応を見る限りそうでもないのかもしれない。今と変わらない生活が送れるのなら、不満はない。
ただ、何もかもがリーシャ基準に決まっていくけれど、それが本当にノアたちの本心なのかという心配があった。
「決まり事とか、いろいろな事、ずっと人間に合わせないといけないんだよ? 今みたいな暮らし方を窮屈だとか思ってないの?」
「たしかに、揉め事を力で解決してはならない点は窮屈だとは思っている。気にくわない人間を消すこともできないからな」
「えっ、そこ?」
「だが、お前が竜となって俺たちと共に生きる決断をするというのなら、そんなことは些細な事だ。このまま人間に寄せた生き方のままでも構わない。重要なのはお前が番として側にい続ける事。俺はそれが叶うのなら、他はどうでもいい」
言葉通り、心底どうでもよさげに淡々と語る姿を見て、それがノアの本心だという事はわかった。
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