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竜の国

後日談(13)

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 スコッチは陸に乗り上げている部分だけでも、体を縮めているルニルより大きい。池の中に続く体も合わせると、このクラスの大きさの魔物はそうそういない。普段狩りで魔物を倒しまくっているルニルも、これほどの大きな魔物を目にしたのは初めてのはずだ。
 そんな未知の生物にじっと見られてもルニルは臆している様子はなく、かといって狩りの時に見せるような鋭い目つきもしていない。魔物を狩りの対象として見ているルニルも、リーシャたちが親し気に会話しているスコッチの事をどう認識したらいいのかわからないようだ。
 じっと見られ困ったルニルは、リーシャへとすり寄ってきた。

「グルルゥ?」
「この魔物さんは、私のお友達だよ。だから襲っちゃダメだからね」
「グル」

 スコッチもルニルに敵意がないとわかると、表情が和らがせようとしたのか、わずかに口角が上げた。

「ルニルくん? 私はスコッチって言うんだ。リーシャちゃんたちのお隣さんだよ。私とも仲良くしてくれると嬉しいな」
「グルッ!」

 ルニルは上機嫌な時に出す鳴き声を出した。
 それにつられたように、スコッチの声もさらに嬉しそうな声音へと変わっていく。

「うんうん。エリアルくんに似て、素直で元気な子だねぇ。実を言うとね、さっきまで寝てたんだけど、よくわからない気配にびっくりして目が覚めちゃったんだ。そしたらリーシャちゃんたちも帰って来てるし。まあ、リーシャちゃんの方が魔力大きかったから大丈夫だとは思ったんだけど、ちょっと心配になっちゃって、慌てて上がってきたんだよね」
「あっ、それであんなに勢いよく。驚かせてごめんなさい」

 スコッチは魔力に敏感だ。
 ルニルは生まれてまだ数ヶ月とはいえ、力の強い種族である竜である事には変わりはなく、魔物を狩る事ができるだけの実力は身につけている。そんな知らない竜が近づいて来ていると分かれば警戒するのももっともだ。
 そんな考えには至らず、スコッチを起こしてしまったのが申し訳なかった。
 けれど起こされた当の本人はというと、不快そうにするどころか上機嫌のままだ。

「いいんだよ。新しいお友達ができて私は大満足だから。フフフッ。それじゃあ、皆の元気な姿も見られて安心できたし、今日はお暇させてもらうかな。向こうでの事教えて欲しいけど、君たちも疲れているだろうからまたにするよ。今日はもうお休み。周りも暗いことだしね」
「うん。そうさせてもらうね」
「それじゃね。おやすみ」
「おやすみなさい」

 スコッチはヒレを振って池の底へと戻っていった。暗い池のせいで、いつもより早くその姿がくすんだ水に溶けていく。
 スコッチが見えなくなると、気がはやるエリアルが「おうちおうち」とまた1番に家に向かって駆け出して行った。その後をリーシャたちはゆっくりと追っていく。

「ねぇさん、早く鍵開けて!」
「はいはい」

 扉を開けると、3兄弟はぞろぞろと中へと入っていった。本当の住処に着いて気が抜けた様子だ。
 ルニルはというと、その場から動こうとはせず、ノアたちが住処へと入っていくのを眺めていた。このまま旅立とうとしているのだろうか。
 もう少し一緒にいたいと思ったリーシャは手招きをした。

「ルニルも、今日はもう遅いから旅に出るのは明日にしようね。おいで」
「グルル!」

 ルニルも嬉しそうに家の中へと入っていった。
 もしかすると、自分の縄張りではないためどうしていいか戸惑っていただけなのかもしれない。
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