398 / 419
竜の国
後日談(7)
しおりを挟む
フェンリルも言われた事で今の格好はまずいと思ったらしく、すぐに居住まいを正し、気まずそうに咳払いをした。
「つーか、俺の態度の事なんてどうでもいいんだよ。それより報告だ報告!」
「……その話始めたの、フェンリルだけどね」
「……それじゃあ、例の魔道具について、の前に竜の国とやらについての報告をしてくれるか? 場所について教えて欲しいんだが」
何事もなかったかのような態度をするフェンリルの事を白い目で見つつも、リーシャは唐突に課せられた追加の報告の要求に答える事にした。とはいっても、フェンリルが欲しがっている答えはほとんど渡せないだろう。
「それはちょっと教えられないかな」
「機密事項として扱う。ダメか?」
「それでも無理だよ。万が一の事があるし、人が乗り込んでいくような事にはなってほしくないから、フェンリルにも詳しくは教えられない。ここからはずっと遠い、自然豊かな場所だった、くらいは言えるけど……」
フェンリルが溜め息をついた。
いつもリーシャの味方をしてくれるフェンリルだけれど、さすがに大陸全土に関係する竜問題についてとなると権力を行使してくるかもしれない。そう直感したリーシャは身構えた。
「わかった。そこはうまいこと俺の方から親父に伝えとく」
「えっ。いいの? ほんとに?」
「ああ。お前が人間と竜との間の微妙な立ち位置にいるのは、親父も理解してくれてる。だから竜連中に一番近いお前が、何が何でも言うべきではないと判断したなら、それを尊重するのが最善と判断すべきだと俺は考えてる。お前がこの国に仇を成そうってんなら話は変わるけどな」
ギラリと剣のように鋭く光る瞳に貫かれ、リーシャの心臓がドクンと嫌な脈を打った。これは敵を見る目だ。
「そっ、そんなこと考えるわけないよ! 私、この国のこと好きだし、シルバーとかアメリアとか、大切な仲間がいっぱいいるんだもん! そんなこと考えるわけないから!」
本気の忠告に、リーシャは立ち上がって全力で否定をした。
その焦りの姿に、フェンリルは目を丸くしていた。ルシアも飲み途中のカップに口をつけたままリーシャを見上げ、停止している。
この場にこの2人しかいないとはいえ、しんとした空気で冷静さを取り戻したリーシャは、やらかしたと顔を赤くした。
フェンリルはその様子に噴き出す。
「ブフッ! わっ、わりぃわりぃ。別にリーシャが反乱起こそうだとかそんな事考えてるとは全く思ってねぇから。ただの例え話だ。心配すんな」
「う、うん。私も、驚かせてごめん」
冷静を装いながら、リーシャは椅子に座り直した。
「つーか、俺の態度の事なんてどうでもいいんだよ。それより報告だ報告!」
「……その話始めたの、フェンリルだけどね」
「……それじゃあ、例の魔道具について、の前に竜の国とやらについての報告をしてくれるか? 場所について教えて欲しいんだが」
何事もなかったかのような態度をするフェンリルの事を白い目で見つつも、リーシャは唐突に課せられた追加の報告の要求に答える事にした。とはいっても、フェンリルが欲しがっている答えはほとんど渡せないだろう。
「それはちょっと教えられないかな」
「機密事項として扱う。ダメか?」
「それでも無理だよ。万が一の事があるし、人が乗り込んでいくような事にはなってほしくないから、フェンリルにも詳しくは教えられない。ここからはずっと遠い、自然豊かな場所だった、くらいは言えるけど……」
フェンリルが溜め息をついた。
いつもリーシャの味方をしてくれるフェンリルだけれど、さすがに大陸全土に関係する竜問題についてとなると権力を行使してくるかもしれない。そう直感したリーシャは身構えた。
「わかった。そこはうまいこと俺の方から親父に伝えとく」
「えっ。いいの? ほんとに?」
「ああ。お前が人間と竜との間の微妙な立ち位置にいるのは、親父も理解してくれてる。だから竜連中に一番近いお前が、何が何でも言うべきではないと判断したなら、それを尊重するのが最善と判断すべきだと俺は考えてる。お前がこの国に仇を成そうってんなら話は変わるけどな」
ギラリと剣のように鋭く光る瞳に貫かれ、リーシャの心臓がドクンと嫌な脈を打った。これは敵を見る目だ。
「そっ、そんなこと考えるわけないよ! 私、この国のこと好きだし、シルバーとかアメリアとか、大切な仲間がいっぱいいるんだもん! そんなこと考えるわけないから!」
本気の忠告に、リーシャは立ち上がって全力で否定をした。
その焦りの姿に、フェンリルは目を丸くしていた。ルシアも飲み途中のカップに口をつけたままリーシャを見上げ、停止している。
この場にこの2人しかいないとはいえ、しんとした空気で冷静さを取り戻したリーシャは、やらかしたと顔を赤くした。
フェンリルはその様子に噴き出す。
「ブフッ! わっ、わりぃわりぃ。別にリーシャが反乱起こそうだとかそんな事考えてるとは全く思ってねぇから。ただの例え話だ。心配すんな」
「う、うん。私も、驚かせてごめん」
冷静を装いながら、リーシャは椅子に座り直した。
0
お気に入りに追加
214
あなたにおすすめの小説
純潔の寵姫と傀儡の騎士
四葉 翠花
恋愛
侯爵家の養女であるステファニアは、国王の寵愛を一身に受ける第一寵姫でありながら、未だ男を知らない乙女のままだった。
世継ぎの王子を授かれば正妃になれると、他の寵姫たちや養家の思惑が絡み合う中、不能の国王にかわってステファニアの寝台に送り込まれたのは、かつて想いを寄せた初恋の相手だった。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
異世界召喚されたけどヤバい国だったので逃げ出したら、イケメン騎士様に溺愛されました
平山和人
恋愛
平凡なOLの清水恭子は異世界に集団召喚されたが、見るからに怪しい匂いがプンプンしていた。
騎士団長のカイトの出引きで国を脱出することになったが、追っ手に追われる逃亡生活が始まった。
そうした生活を続けていくうちに二人は相思相愛の関係となり、やがて結婚を誓い合うのであった。
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
【完結】レスだった私が異世界で美形な夫達と甘い日々を過ごす事になるなんて思わなかった
むい
恋愛
魔法のある世界に転移した割に特に冒険も事件もバトルもない引きこもり型エロライフ。
✳✳✳
夫に愛されず女としても見てもらえず子供もなく、寂しい結婚生活を送っていた璃子は、ある日酷い目眩を覚え意識を失う。
目覚めた場所は小さな泉の辺り。
転移して若返った?!と思いきやなんだか微妙に違うような…。まるで自分に似せた入れ物に自分の意識が入ってるみたい。
何故ここにいるかも分からないまま初対面の男性に会って5分で求婚されあれよあれよと結婚する事に?!
だいたいエロしかない異世界専業主婦ライフ。
本編完結済み。たまに番外編投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる