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竜の国
後日談(5)
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以前この城に呼ばれたのはどれほど前の事だっただろう。
ずいぶん経つような気もするけれど、ついこの前だったようにも感じられる。その間を振り返って考えてみると、いろいろな出来事が起きたものだとしみじみ感じられた。
竜王と出会い、魔法学校へ赴いて教師をし、従兄に攫われ、竜の国へ行き。その他にもいろいろな出来事が起きた。
ノアたち兄弟と出会うまでとは比べ物にならないほどに、目まぐるしく日々が過ぎ去っていった。それにノアたちに出会わなければ、こうして城へ出向くことも、フェンリルと知り合う事もなかっただろう。
久々の豪華な城の内装に囲まれる中、雰囲気そっちのけでそんな物思いに耽りながらぼんやり歩いていると、フェンリルが正面を向いたまま話しかけてきた。
「なぁ、リーシャ」
「何?」
「なんで何カ月も連絡寄こさなかったんだ。お前なら状況報告する方法なんかあっただろ。こっちはかなり心配したんだぞ」
「あっ……」
感情を押し殺しているかのような苦し気な声に、リーシャは何故そんな簡単な事に気がつけなかったのかと後悔した。
危険な場所に飛び込んで行った仲間から、何カ月もの間一切連絡がないのだ。死んでしまってはいないかと、嫌な想像を膨らませていたかもしれない。
きっとそれはフェンリルだけではなく、シルバーやアメリアも同じで、ひどく心配しているかもしれない。
「ごめんなさい。そんな考え全くなかった。早く帰らないととは思ったんだけど……」
「お前な……いや、送り出したときにこうなる可能性に気付けなかった俺も悪かったな。リーシャ、もし次に危険な場所に行くときは、可能なら定期連絡しろよ」
「うん。ほんとごめんなさい」
「頼むぞ」
フェンリルはリーシャの方を向かないまま、押し殺していた感情を潜めたような声で告げた。それが余計に申し訳なさを感じさせる。
とぼとぼとついて行っていると、ルシアが飽きたような口調でフェンリルに尋ねた。
「なあ、フェンリル。俺らどこに連れて行かれるわけ? いつまで歩かせるんだよ。俺、3日もずっと飛びっぱなしで疲れてんだけど」
「もう少しくらい我慢しろよ。敷地が広すぎるから、どうしても移動には時間がかかるんだよ」
「広すぎるって……自慢かよ」
「なんだ? 羨ましいのか?」
ようやくフェンリルは後ろを振り返った。ルシアをからかうようにニヤついた顔をしている。
ムキになって反論するのかと思いルシアの方を見ると、意外にも冷静な様子だった。
「別にぃ。住処なんて、広けりゃいいってもんじゃねぇからな。狭い方が別々になにかしてても、リーシャと兄貴とエリアルを近くに感じられるから、俺はそっちのがいい。つーか、今の家くらいが丁度いい。こんなに広いとさ、会いたいって思った時、探し出すの大変じゃね?」
「……たしかにな。同感だ」
「だよなっ」
同意を得られたルシアは嬉しそうだった。
対するフェンリルは笑顔を見せてはいたけれど、どこか少し浮かない表情だ。幼い頃から暮らし続け、そう思った事が多々あったのだろう。
ずいぶん経つような気もするけれど、ついこの前だったようにも感じられる。その間を振り返って考えてみると、いろいろな出来事が起きたものだとしみじみ感じられた。
竜王と出会い、魔法学校へ赴いて教師をし、従兄に攫われ、竜の国へ行き。その他にもいろいろな出来事が起きた。
ノアたち兄弟と出会うまでとは比べ物にならないほどに、目まぐるしく日々が過ぎ去っていった。それにノアたちに出会わなければ、こうして城へ出向くことも、フェンリルと知り合う事もなかっただろう。
久々の豪華な城の内装に囲まれる中、雰囲気そっちのけでそんな物思いに耽りながらぼんやり歩いていると、フェンリルが正面を向いたまま話しかけてきた。
「なぁ、リーシャ」
「何?」
「なんで何カ月も連絡寄こさなかったんだ。お前なら状況報告する方法なんかあっただろ。こっちはかなり心配したんだぞ」
「あっ……」
感情を押し殺しているかのような苦し気な声に、リーシャは何故そんな簡単な事に気がつけなかったのかと後悔した。
危険な場所に飛び込んで行った仲間から、何カ月もの間一切連絡がないのだ。死んでしまってはいないかと、嫌な想像を膨らませていたかもしれない。
きっとそれはフェンリルだけではなく、シルバーやアメリアも同じで、ひどく心配しているかもしれない。
「ごめんなさい。そんな考え全くなかった。早く帰らないととは思ったんだけど……」
「お前な……いや、送り出したときにこうなる可能性に気付けなかった俺も悪かったな。リーシャ、もし次に危険な場所に行くときは、可能なら定期連絡しろよ」
「うん。ほんとごめんなさい」
「頼むぞ」
フェンリルはリーシャの方を向かないまま、押し殺していた感情を潜めたような声で告げた。それが余計に申し訳なさを感じさせる。
とぼとぼとついて行っていると、ルシアが飽きたような口調でフェンリルに尋ねた。
「なあ、フェンリル。俺らどこに連れて行かれるわけ? いつまで歩かせるんだよ。俺、3日もずっと飛びっぱなしで疲れてんだけど」
「もう少しくらい我慢しろよ。敷地が広すぎるから、どうしても移動には時間がかかるんだよ」
「広すぎるって……自慢かよ」
「なんだ? 羨ましいのか?」
ようやくフェンリルは後ろを振り返った。ルシアをからかうようにニヤついた顔をしている。
ムキになって反論するのかと思いルシアの方を見ると、意外にも冷静な様子だった。
「別にぃ。住処なんて、広けりゃいいってもんじゃねぇからな。狭い方が別々になにかしてても、リーシャと兄貴とエリアルを近くに感じられるから、俺はそっちのがいい。つーか、今の家くらいが丁度いい。こんなに広いとさ、会いたいって思った時、探し出すの大変じゃね?」
「……たしかにな。同感だ」
「だよなっ」
同意を得られたルシアは嬉しそうだった。
対するフェンリルは笑顔を見せてはいたけれど、どこか少し浮かない表情だ。幼い頃から暮らし続け、そう思った事が多々あったのだろう。
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