389 / 419
竜の国
旅路(1)
しおりを挟む
クリスティナへ別れを告げたリーシャは、ルシアたちの元へと駆け出した。そこにルニルの姿もある。
「お待たせ」
「いーよ。早く帰ろうぜ」
「うん。じゃあルニル、私たち帰るからね。この国にはまた来るつもりだから、その時はまた遊ぼうね」
「げっ……また来ねぇとなんなねぇのかよ……」
ルシアからは嫌そうな反応が返ってきた。
けれど話しかけたはずのルニルからは何の反応も返ってこない。じっとリーシャの事を見つめているだけだった。
あまりにもそんな沈黙が長く続くため、このまま別れてもいいものかとリーシャは戸惑っていた。
「あの……ルニル?」
やはり返事がない。
目の前で手をひらひらさせて注意を引こうと試みても、反応がない。何か深く考え込んでいるようだ。
そしてようやく、ルニルが口を開いた。
「……グルルル?」
ルニルは首を傾げて何かを尋ねるように鳴いた。すると突然ルシアが声を荒らげだした。
「はぁ⁉ いや、お前はついてこなくていいんだよ!」
「グルルゥ。グルルル、グアウゥゥ」
「待て待て待て! お前何考えてんだ? それはまだ早いだろ」
「グワフッ!」
ルニルが胸を張って誇らしげに佇んだ。
竜は本来、警戒や不快以外の感情をあからさまに表に出す事はない。ルニルはというと、リーシャやルシア、エリアルの影響を強く受けてしまったようで、人間味のある仕草をする竜に育ってしまっていた。
そんなルニルの事を、ノアは眉間に皺を寄せ、エリアルは不安そうに見ていた。どうやら3兄弟の意にそわない事をルニルは言ったようだ。
リーシャはルシアに拒む理由を求めた。
「もしかして、ルニルも一緒に来たいって?」
「そんな感じ。なんか、遊びに行くかもしれないから、俺らの家の場所を教えて欲しいんだと」
「場所くらいならいいんじゃない? ずっと居続けようってわけじゃないんでしょ?」
「あー、うん。まあ、俺もそれくらいならとは思うけどさ……問題はその後! こいつ、家を確認したらそのまま旅に出るとか言ってんだよ!」
「旅ぃ⁉」
なんだかんだまだ甘えてくるルニルの口から旅に出たいなんて言葉が出てくるとは微塵も思っていなかったため、リーシャは目を丸くした。
「どうしたの、ルニル。なんで旅に出ようなんて思ったの?」
「グワァウ。グルル、グルルルルゥ」
ルニルは上機嫌でリーシャに向けて伝えてくるけれど、何と言っているかはやはりわからない。
わからず困っていると、ノアがスッと現れ、ルニルの言葉を訳しだした。
「この国のいろいろな場所を飛び回るのが楽しいし、もっといろんな場所や物を見たいと言っている」
最近のルニルは、近場とはいえ竜の国を出ている事もある。リーシャもそれは知っているし、どれだけ飛び回る事が好きなのかも知っている。
(ルニルが旅をしたいって言うなら、止めない方が良いんだろうけど……でも、ルニルはまだ……)
どう答えを出せばいいか決めかねていると、ノアがそっとリーシャの肩に手を置いた。
「お待たせ」
「いーよ。早く帰ろうぜ」
「うん。じゃあルニル、私たち帰るからね。この国にはまた来るつもりだから、その時はまた遊ぼうね」
「げっ……また来ねぇとなんなねぇのかよ……」
ルシアからは嫌そうな反応が返ってきた。
けれど話しかけたはずのルニルからは何の反応も返ってこない。じっとリーシャの事を見つめているだけだった。
あまりにもそんな沈黙が長く続くため、このまま別れてもいいものかとリーシャは戸惑っていた。
「あの……ルニル?」
やはり返事がない。
目の前で手をひらひらさせて注意を引こうと試みても、反応がない。何か深く考え込んでいるようだ。
そしてようやく、ルニルが口を開いた。
「……グルルル?」
ルニルは首を傾げて何かを尋ねるように鳴いた。すると突然ルシアが声を荒らげだした。
「はぁ⁉ いや、お前はついてこなくていいんだよ!」
「グルルゥ。グルルル、グアウゥゥ」
「待て待て待て! お前何考えてんだ? それはまだ早いだろ」
「グワフッ!」
ルニルが胸を張って誇らしげに佇んだ。
竜は本来、警戒や不快以外の感情をあからさまに表に出す事はない。ルニルはというと、リーシャやルシア、エリアルの影響を強く受けてしまったようで、人間味のある仕草をする竜に育ってしまっていた。
そんなルニルの事を、ノアは眉間に皺を寄せ、エリアルは不安そうに見ていた。どうやら3兄弟の意にそわない事をルニルは言ったようだ。
リーシャはルシアに拒む理由を求めた。
「もしかして、ルニルも一緒に来たいって?」
「そんな感じ。なんか、遊びに行くかもしれないから、俺らの家の場所を教えて欲しいんだと」
「場所くらいならいいんじゃない? ずっと居続けようってわけじゃないんでしょ?」
「あー、うん。まあ、俺もそれくらいならとは思うけどさ……問題はその後! こいつ、家を確認したらそのまま旅に出るとか言ってんだよ!」
「旅ぃ⁉」
なんだかんだまだ甘えてくるルニルの口から旅に出たいなんて言葉が出てくるとは微塵も思っていなかったため、リーシャは目を丸くした。
「どうしたの、ルニル。なんで旅に出ようなんて思ったの?」
「グワァウ。グルル、グルルルルゥ」
ルニルは上機嫌でリーシャに向けて伝えてくるけれど、何と言っているかはやはりわからない。
わからず困っていると、ノアがスッと現れ、ルニルの言葉を訳しだした。
「この国のいろいろな場所を飛び回るのが楽しいし、もっといろんな場所や物を見たいと言っている」
最近のルニルは、近場とはいえ竜の国を出ている事もある。リーシャもそれは知っているし、どれだけ飛び回る事が好きなのかも知っている。
(ルニルが旅をしたいって言うなら、止めない方が良いんだろうけど……でも、ルニルはまだ……)
どう答えを出せばいいか決めかねていると、ノアがそっとリーシャの肩に手を置いた。
0
お気に入りに追加
214
あなたにおすすめの小説
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
異世界で王城生活~陛下の隣で~
遥
恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。
グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます!
※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。
※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。
美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける
朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。
お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン
絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。
「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」
「えっ!? ええぇぇえええ!!!」
この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる