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竜の国

旅路(1)

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 クリスティナへ別れを告げたリーシャは、ルシアたちの元へと駆け出した。そこにルニルの姿もある。

「お待たせ」
「いーよ。早く帰ろうぜ」
「うん。じゃあルニル、私たち帰るからね。この国にはまた来るつもりだから、その時はまた遊ぼうね」
「げっ……また来ねぇとなんなねぇのかよ……」

 ルシアからは嫌そうな反応が返ってきた。
 けれど話しかけたはずのルニルからは何の反応も返ってこない。じっとリーシャの事を見つめているだけだった。
 あまりにもそんな沈黙が長く続くため、このまま別れてもいいものかとリーシャは戸惑っていた。

「あの……ルニル?」

 やはり返事がない。
 目の前で手をひらひらさせて注意を引こうと試みても、反応がない。何か深く考え込んでいるようだ。
 そしてようやく、ルニルが口を開いた。

「……グルルル?」

 ルニルは首を傾げて何かを尋ねるように鳴いた。すると突然ルシアが声を荒らげだした。

「はぁ⁉ いや、お前はついてこなくていいんだよ!」
「グルルゥ。グルルル、グアウゥゥ」
「待て待て待て! お前何考えてんだ? それはまだ早いだろ」
「グワフッ!」

 ルニルが胸を張って誇らしげに佇んだ。
 竜は本来、警戒や不快以外の感情をあからさまに表に出す事はない。ルニルはというと、リーシャやルシア、エリアルの影響を強く受けてしまったようで、人間味のある仕草をする竜に育ってしまっていた。
 そんなルニルの事を、ノアは眉間に皺を寄せ、エリアルは不安そうに見ていた。どうやら3兄弟の意にそわない事をルニルは言ったようだ。
 リーシャはルシアに拒む理由を求めた。

「もしかして、ルニルも一緒に来たいって?」
「そんな感じ。なんか、遊びに行くかもしれないから、俺らの家の場所を教えて欲しいんだと」
「場所くらいならいいんじゃない? ずっと居続けようってわけじゃないんでしょ?」
「あー、うん。まあ、俺もそれくらいならとは思うけどさ……問題はその後! こいつ、家を確認したらそのまま旅に出るとか言ってんだよ!」
「旅ぃ⁉」

 なんだかんだまだ甘えてくるルニルの口から旅に出たいなんて言葉が出てくるとは微塵も思っていなかったため、リーシャは目を丸くした。

「どうしたの、ルニル。なんで旅に出ようなんて思ったの?」
「グワァウ。グルル、グルルルルゥ」

 ルニルは上機嫌でリーシャに向けて伝えてくるけれど、何と言っているかはやはりわからない。
 わからず困っていると、ノアがスッと現れ、ルニルの言葉を訳しだした。

「この国のいろいろな場所を飛び回るのが楽しいし、もっといろんな場所や物を見たいと言っている」

 最近のルニルは、近場とはいえ竜の国を出ている事もある。リーシャもそれは知っているし、どれだけ飛び回る事が好きなのかも知っている。

(ルニルが旅をしたいって言うなら、止めない方が良いんだろうけど……でも、ルニルはまだ……)

 どう答えを出せばいいか決めかねていると、ノアがそっとリーシャの肩に手を置いた。
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