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竜の国
黒の解放(2)
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今まで支えていた竜王の体がグラリと大きく揺れ、急にズシリと重くなった。
「へっ⁉ うわあっ‼」
「おっと……ごめんね。終わったと思ったら、力が抜けちゃって。放してくれて、かまわないよ」
「大丈夫ですか?」
「うん。もう無理して、意識を保っていないと、いけないわけじゃないから。あとは、彼に任せていいよ」
竜王の視線がシャノウの視線と絡まった。
「グゥアウ」
竜王が呟くような声を出すと、シャノウは相変わらずの傲慢な態度で竜の言葉を返していた。そんな態度は昔からなのだろう。変わらないシャノウが嬉しいようで、竜王の鳴き声はいつもより浮かれているようだった。
ただ、その間にも竜王の瞼はじわじわと閉じられ、今にも眠りの海へと落ちそうになっていく。無理やり魔力を絞り出していたのだ。これ以上意識を保ち続ける事は難しいだろう。
リーシャが意識の遠のいていく竜王を心配して様子を見ていると、フイっと顔を向けてきた竜王と目が合った。
「リーシャ」
「あ、はい! 何ですか?」
「私は、ねぐらに戻ろうと思う。それでね。これまでの事を考えると、次いつ目覚められるか、わからない。それまでの、間の事は、彼にお願いしたから、まだ残るなら、それでもいい、けど、私、が、目覚めるの、を、待つ、必要は、ない。君たち、の、好きな、ように、して……」
竜王はいかにも眠そうな声で、近づいてくる意識の限界に負けないよう、懸命にリーシャに語りかけた。体も大きく前後へ揺れている。
「あの、大丈夫ですか? ルシアにねぐらまで運ばせましょうか?」
「ううん。彼に、連れ帰って、もらう……か、ら…………」
「竜王様?」
ついに竜王の体が重力に逆らえなくなり、大きな音を立てて地に伏した。
大きな寝息を立てていて、ただ眠っただけだというのは明らかだ。けれど、それでも芽生えた少しの不安にリーシャの体は動かされ、足が竜王の元へと向いた。
一歩踏み出した時、突然強い風が襲い掛かってきた。ほんの数秒の事ではあったけれど、まともに目を開けてはいられない強風だった。
収まってから目を開くと、シャノウが竜王を足で鷲掴み、骨の羽を羽ばたかせ、宙に浮いていた。
「グルル」
そう一声唸ると、シャノウは竜王のねぐらへと飛び去って行った。
声に敵意や憎しみのような感情はのっていなかったように思える。かといって、あまり良い意味合いの言葉は向けられてはいないだろう。
「今の、なんて言ったの?」
リーシャが3兄弟に向けて尋ねると、ノアの眉間に皺が寄った。勘は合っていたようだ。
「……礼は言わない、だと」
「あのクソおっさん……俺がどんだけ時間を費やしてやったと思ってんだよ……! むかつくおっさんだって事はわかってたけど、今回はめちゃくちゃ腹立つ……礼くらい言ってけってんだよぉぉ‼」
「誰のために、わざわざこんな場所に出向いてやったと……」
不満を噴火させ荒立つルシアと、静かな苛立ちを孕ませたノアの2人それぞれが、目の前を飛び回る煩わしい虫を見るかのように、シャノウの後姿へと視線を送っていた。
リーシャも思うところはある。けれど、シャノウには手詰まりの状況で何度も手を差し伸べてもらったという恩があるため、2人に類した感情までは抱く事はなかった。
「へっ⁉ うわあっ‼」
「おっと……ごめんね。終わったと思ったら、力が抜けちゃって。放してくれて、かまわないよ」
「大丈夫ですか?」
「うん。もう無理して、意識を保っていないと、いけないわけじゃないから。あとは、彼に任せていいよ」
竜王の視線がシャノウの視線と絡まった。
「グゥアウ」
竜王が呟くような声を出すと、シャノウは相変わらずの傲慢な態度で竜の言葉を返していた。そんな態度は昔からなのだろう。変わらないシャノウが嬉しいようで、竜王の鳴き声はいつもより浮かれているようだった。
ただ、その間にも竜王の瞼はじわじわと閉じられ、今にも眠りの海へと落ちそうになっていく。無理やり魔力を絞り出していたのだ。これ以上意識を保ち続ける事は難しいだろう。
リーシャが意識の遠のいていく竜王を心配して様子を見ていると、フイっと顔を向けてきた竜王と目が合った。
「リーシャ」
「あ、はい! 何ですか?」
「私は、ねぐらに戻ろうと思う。それでね。これまでの事を考えると、次いつ目覚められるか、わからない。それまでの、間の事は、彼にお願いしたから、まだ残るなら、それでもいい、けど、私、が、目覚めるの、を、待つ、必要は、ない。君たち、の、好きな、ように、して……」
竜王はいかにも眠そうな声で、近づいてくる意識の限界に負けないよう、懸命にリーシャに語りかけた。体も大きく前後へ揺れている。
「あの、大丈夫ですか? ルシアにねぐらまで運ばせましょうか?」
「ううん。彼に、連れ帰って、もらう……か、ら…………」
「竜王様?」
ついに竜王の体が重力に逆らえなくなり、大きな音を立てて地に伏した。
大きな寝息を立てていて、ただ眠っただけだというのは明らかだ。けれど、それでも芽生えた少しの不安にリーシャの体は動かされ、足が竜王の元へと向いた。
一歩踏み出した時、突然強い風が襲い掛かってきた。ほんの数秒の事ではあったけれど、まともに目を開けてはいられない強風だった。
収まってから目を開くと、シャノウが竜王を足で鷲掴み、骨の羽を羽ばたかせ、宙に浮いていた。
「グルル」
そう一声唸ると、シャノウは竜王のねぐらへと飛び去って行った。
声に敵意や憎しみのような感情はのっていなかったように思える。かといって、あまり良い意味合いの言葉は向けられてはいないだろう。
「今の、なんて言ったの?」
リーシャが3兄弟に向けて尋ねると、ノアの眉間に皺が寄った。勘は合っていたようだ。
「……礼は言わない、だと」
「あのクソおっさん……俺がどんだけ時間を費やしてやったと思ってんだよ……! むかつくおっさんだって事はわかってたけど、今回はめちゃくちゃ腹立つ……礼くらい言ってけってんだよぉぉ‼」
「誰のために、わざわざこんな場所に出向いてやったと……」
不満を噴火させ荒立つルシアと、静かな苛立ちを孕ませたノアの2人それぞれが、目の前を飛び回る煩わしい虫を見るかのように、シャノウの後姿へと視線を送っていた。
リーシャも思うところはある。けれど、シャノウには手詰まりの状況で何度も手を差し伸べてもらったという恩があるため、2人に類した感情までは抱く事はなかった。
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