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竜の国
黒の柱(3)
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竜王がそんな状態でも、指輪からの粉は次第に量を増していく。そして魔法陣を覆うように広がると急に勢いづき、空へと吹き上げた。まるで火山が噴火するように立ち上り、あまりの光の粉の量に、魔法陣の内側は黒く染めあげられている。
「いつまで、かかるの、かな? そろそろ私も限界、だよ」
黒い突風が空へと吹き上がる音の中で、竜王の苦し気な声が響いた。
リーシャはすぐにでも、もういいと言いたかった。けれど、残念な事にシャノウが解き放たれる気配は全くない。
竜王は長い時間、人間が数十人がかりでようやく補える量の魔力をずっと使い続けている。リーシャも一瞬ならば同等量の魔力を引き出せるかもしれないけれど、これほど長い時間となるとできる自信はない。それほどの魔力を消費しているのだ。魔力を豊富に持つ竜とはいえかなりの負担なはずだ。
「そうだ! 竜王様、今日はいったん中断して、クリスティナの体調が戻ったら協力してもらいましょう! それなら竜王様の負担も少し減るから、どうにかなるんじゃないですか?」
「クリスティナか……」
竜王の声はあまり乗り気ではないようだった。自分が使い続けている魔力量から鑑みて、クリスティナの体力では耐えられないと判断したのだろう。
竜王は魔力を止めることなく、魔法陣に向かい続けていた。
「いや、せっかくここまで、やったんだ。それに今止めたら、おそらく私は、しばらく魔力が使えない状態に、なるだろうから。多少、無理をしてでも、一気に終わらせてしまおう」
「できそう、なんですか?」
「成してみせるさ」
竜王は宣言通り、これまでと変わらない魔力を魔法陣に送り続けた。
途中意識が途切れそうになっていたけれど、どうにか踏みとどまった。倒れてしまえば、おそらくそこで竜王の意識は途絶えるだろう。
「竜王様!」
リーシャは駆け出し、竜王が倒れないように脇から支えようとした。体を縮めているとはいえ、自分より大きく、重たい竜王を支えるのは、体を強化してもかなり苦しい。
それでもどうにかリーシャは竜王がふらつかないよう、支え続けた。光の魔力を持たないリーシャでは、手伝いたくてもこれくらいの事しかできない。竜王が倒れそうになりながらも、シャノウを助けようとしているのだから、何もできないのならせめてこれくらいはと、動かずにはいられなかった。
そんなリーシャの姿を見たノアたち兄弟も、すぐさまリーシャと同じように竜王を支えた。
「リーシャ、俺と兄貴が元の姿に戻って支えとくから、リーシャは手、離していいぞ」
後ろで竜王を支えていたルシアが言った。
たしかに黒竜の姿に戻ったルシアたちなら、軽々と竜王を支えられるのだろう。けれどこれ以上、できる事を人任せにはしたくなかった。
「私も、少しでも何かしたくて……」
「そっか。じゃあ、皆で支えるか」
ルシアはそれ以上何も言わず、人間の姿のままで竜王を支え続けた。
「ありがとう。少し、楽になった」
「竜王様。シャノウさんの事、私の先祖がやった事なのに、こんな事しかできなくてごめんなさい」
「いや。前も言ったけど、君がやった事では、ないんだ。それは、気にしなくて、いいよ。それに君は、君たちは、彼を自由にするために、ここまで頑張って、くれたんだ。私も、友人のために、できる事を、したいんだ」
竜王の声は息も絶え絶え。今にも意識が飛びそうな気さえしてくる。けれど、どこか嬉しそうにも聞こえた。
竜王の意識が途絶えるのが先か、シャノウが解放されるのが先か。リーシャは竜王の傍らで、解放されたシャノウの姿が早く現れるよう願い続けた。
「いつまで、かかるの、かな? そろそろ私も限界、だよ」
黒い突風が空へと吹き上がる音の中で、竜王の苦し気な声が響いた。
リーシャはすぐにでも、もういいと言いたかった。けれど、残念な事にシャノウが解き放たれる気配は全くない。
竜王は長い時間、人間が数十人がかりでようやく補える量の魔力をずっと使い続けている。リーシャも一瞬ならば同等量の魔力を引き出せるかもしれないけれど、これほど長い時間となるとできる自信はない。それほどの魔力を消費しているのだ。魔力を豊富に持つ竜とはいえかなりの負担なはずだ。
「そうだ! 竜王様、今日はいったん中断して、クリスティナの体調が戻ったら協力してもらいましょう! それなら竜王様の負担も少し減るから、どうにかなるんじゃないですか?」
「クリスティナか……」
竜王の声はあまり乗り気ではないようだった。自分が使い続けている魔力量から鑑みて、クリスティナの体力では耐えられないと判断したのだろう。
竜王は魔力を止めることなく、魔法陣に向かい続けていた。
「いや、せっかくここまで、やったんだ。それに今止めたら、おそらく私は、しばらく魔力が使えない状態に、なるだろうから。多少、無理をしてでも、一気に終わらせてしまおう」
「できそう、なんですか?」
「成してみせるさ」
竜王は宣言通り、これまでと変わらない魔力を魔法陣に送り続けた。
途中意識が途切れそうになっていたけれど、どうにか踏みとどまった。倒れてしまえば、おそらくそこで竜王の意識は途絶えるだろう。
「竜王様!」
リーシャは駆け出し、竜王が倒れないように脇から支えようとした。体を縮めているとはいえ、自分より大きく、重たい竜王を支えるのは、体を強化してもかなり苦しい。
それでもどうにかリーシャは竜王がふらつかないよう、支え続けた。光の魔力を持たないリーシャでは、手伝いたくてもこれくらいの事しかできない。竜王が倒れそうになりながらも、シャノウを助けようとしているのだから、何もできないのならせめてこれくらいはと、動かずにはいられなかった。
そんなリーシャの姿を見たノアたち兄弟も、すぐさまリーシャと同じように竜王を支えた。
「リーシャ、俺と兄貴が元の姿に戻って支えとくから、リーシャは手、離していいぞ」
後ろで竜王を支えていたルシアが言った。
たしかに黒竜の姿に戻ったルシアたちなら、軽々と竜王を支えられるのだろう。けれどこれ以上、できる事を人任せにはしたくなかった。
「私も、少しでも何かしたくて……」
「そっか。じゃあ、皆で支えるか」
ルシアはそれ以上何も言わず、人間の姿のままで竜王を支え続けた。
「ありがとう。少し、楽になった」
「竜王様。シャノウさんの事、私の先祖がやった事なのに、こんな事しかできなくてごめんなさい」
「いや。前も言ったけど、君がやった事では、ないんだ。それは、気にしなくて、いいよ。それに君は、君たちは、彼を自由にするために、ここまで頑張って、くれたんだ。私も、友人のために、できる事を、したいんだ」
竜王の声は息も絶え絶え。今にも意識が飛びそうな気さえしてくる。けれど、どこか嬉しそうにも聞こえた。
竜王の意識が途絶えるのが先か、シャノウが解放されるのが先か。リーシャは竜王の傍らで、解放されたシャノウの姿が早く現れるよう願い続けた。
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