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竜の国
1度だけ(4)
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「! きたっ!」
礫の1つが火竜の足の付け根に突き刺さった。ダメージ自体は大したものではないだろう。ただ、リーシャがこの攻撃を続けていた真の目的は、火竜にダメージを与える事ではなかった。
リーシャは操る対象を礫だけではなく、竜の体から生えている鱗へと広げた。
魔力の糸は、対象物を手の代わりに糸で動かすだけの技だ。そのため、たとえ生き物の鱗や毛に繋げたところで、その生き物事態を操れるわけではない。現状は、糸でリーシャと火竜がただ結びついただけだ。
「シャノウさん! お願いします!」
「グァァウ‼」
リーシャ1人だったなら、火竜の力強い動きに振り回されるだけだっただろう。けれど、今はどの種の竜よりも力のある種だったシャノウがいる。そしてその力はおそらく今も健在のはずだ。
シャノウはリーシャの掛け声とともに、勢いよく火竜から距離を取った。
リーシャは他の礫を操っていた魔力の糸を断ち切り、その分の魔力を火竜へと繋がる1本の糸へと回した。
火竜は、リーシャとシャノウが作戦を立てていたなどとは気づきもしていなかっただろう。突然のシャノウの全力の引きに、大きくバランスを崩した。
「氷よ!」
リーシャは早い段階で作り上げていた巨大な氷の塊の1つを火竜へと投げつけた。
すぐさま体勢を立て直せない火竜は、その氷をどうにか息吹で迎え撃とうと、口を広げだ。
ここまでは作戦通り。リーシャの口元が緩んだ。
火竜の息吹と衝突した氷は大きな爆発音とともに、広範囲に白い靄を発生させ、火竜を包み込んだ。予想外の展開に、火竜の息吹は止まり、代わりに焦りの鳴き声が聞こえてくる。
「作戦通り上へ!」
その指示に従い、シャノウは火竜の真上へと位置取った。
シャノウが停止すると、リーシャはしゃがみこみ、シャノウの頭を撫でながら呟いた。
「シャノウさん、お願いしますね」
『ああ、わかっている』
会話の直後、火竜が攻撃を仕掛けてこようとしているのか、靄の中が真っ赤に光った。リーシャたちの位置はわかっているようで、標準は合っているようだ。
「氷よ!」
リーシャは火竜に向けて残りの氷の塊を落下させた。2つの攻撃は先ほどと同じように、衝突した途端に靄と爆音を発生させる。今度の火竜は爆音には驚かず、息吹も止めなかったようで、炎の柱がリーシャたちへと迫ってきた。
次の瞬間、リーシャの足がシャノウの頭から離れた。
礫の1つが火竜の足の付け根に突き刺さった。ダメージ自体は大したものではないだろう。ただ、リーシャがこの攻撃を続けていた真の目的は、火竜にダメージを与える事ではなかった。
リーシャは操る対象を礫だけではなく、竜の体から生えている鱗へと広げた。
魔力の糸は、対象物を手の代わりに糸で動かすだけの技だ。そのため、たとえ生き物の鱗や毛に繋げたところで、その生き物事態を操れるわけではない。現状は、糸でリーシャと火竜がただ結びついただけだ。
「シャノウさん! お願いします!」
「グァァウ‼」
リーシャ1人だったなら、火竜の力強い動きに振り回されるだけだっただろう。けれど、今はどの種の竜よりも力のある種だったシャノウがいる。そしてその力はおそらく今も健在のはずだ。
シャノウはリーシャの掛け声とともに、勢いよく火竜から距離を取った。
リーシャは他の礫を操っていた魔力の糸を断ち切り、その分の魔力を火竜へと繋がる1本の糸へと回した。
火竜は、リーシャとシャノウが作戦を立てていたなどとは気づきもしていなかっただろう。突然のシャノウの全力の引きに、大きくバランスを崩した。
「氷よ!」
リーシャは早い段階で作り上げていた巨大な氷の塊の1つを火竜へと投げつけた。
すぐさま体勢を立て直せない火竜は、その氷をどうにか息吹で迎え撃とうと、口を広げだ。
ここまでは作戦通り。リーシャの口元が緩んだ。
火竜の息吹と衝突した氷は大きな爆発音とともに、広範囲に白い靄を発生させ、火竜を包み込んだ。予想外の展開に、火竜の息吹は止まり、代わりに焦りの鳴き声が聞こえてくる。
「作戦通り上へ!」
その指示に従い、シャノウは火竜の真上へと位置取った。
シャノウが停止すると、リーシャはしゃがみこみ、シャノウの頭を撫でながら呟いた。
「シャノウさん、お願いしますね」
『ああ、わかっている』
会話の直後、火竜が攻撃を仕掛けてこようとしているのか、靄の中が真っ赤に光った。リーシャたちの位置はわかっているようで、標準は合っているようだ。
「氷よ!」
リーシャは火竜に向けて残りの氷の塊を落下させた。2つの攻撃は先ほどと同じように、衝突した途端に靄と爆音を発生させる。今度の火竜は爆音には驚かず、息吹も止めなかったようで、炎の柱がリーシャたちへと迫ってきた。
次の瞬間、リーシャの足がシャノウの頭から離れた。
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