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竜の国
1度だけ(3)
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「シャノウさん。うまくいくかはわからないんですけど、1つ作戦を思いつきました。成功しても失敗しても魔力切れになるし、シャノウさんにも結構危ない橋を渡ってもらう事になるんですけど、協力してもらってもいいですか?」
『それで勝てるというのなら協力してやる。俺に汚名を着せずに済むというのならな』
「あっ、やっぱりそこなんですね」
『あたりまえだ』
「ですよね。じゃあ、シャノウさん。私がしようとしている事を簡単に説明しますね」
リーシャは思い描いた戦闘構想を伝えた。
シャノウは器用に攻撃をかわしながら、リーシャの声に耳を傾ける。
『ふん。危ない橋とはそういう事か。まあ、よかろう。その程度、俺にとっては大した危険ではない。むしろ貴様の方が死のリスクが高いだろうしな。今回限りだ。いいな!』
シャノウが今回限りだとムキになって強調してくるため、今が戦闘中だという事にも関わらず、リーシャの口からはクスリと笑みがこぼれた。
「ありがとうございます」
『笑っている場合か?』
「いえ、そんな余裕ないです」
『では、早くしろ。魔力の限界も近いんだろう?』
シャノウは体から黒く輝く光を零しながら飛び続けている。おそらく膨大にあったリーシャの魔力の残量が少なくなってきた事で、召喚の魔法が解けかかっているのだろう。もう猶予はない。
「わかってますよ」
そう言って、リーシャはようやく魔法を組み始めた。
「土と氷よ」
2つの氷の魔法を成長させながら、同時に土の魔法でリーシャの体を優に超える大きさがある鋭い石の礫を、いくつも作り上げた。
『器用なものだな。褒めてやってもいい』
「それはどうも。いけっ!」
リーシャは石の礫の方を火竜に向けて飛ばした。
火竜は巨大な火の玉で礫を打ち落としていく。けれどどうしても打ち落とせないものが、いくつか飛び回っていた。その礫は火竜の攻撃を避けるように動き、地道に火竜との距離を詰めている。
この不可思議な動きはリーシャによるものだった。ギルド仲間、シュレイン・シルベルトという男性が得意とする、魔力の糸で武器を操って攻撃する技で、礫が落とされないように操っているのだ。
これは繊細な技でかなりの集中力を必要とするため、大雑把なリーシャでは彼のように多くの物を操ることはできない。しかも別の魔法も同時に発動させているため、3つが限界だった。
リーシャはその礫を打ち落とされないよう、何の変哲もない石の礫をさらに放つ。
操っている礫を火竜に届かせようと、激しく揺れる中、頭から煙が出そうなほど集中して攻撃を続けた。
『ええい、小娘‼ まだなのか‼』
苛立つシャノウの巨大な体は、いつの間にか一回り小さくなっていた。このまま時間が過ぎればリーシャを乗せられる大きさではなくなってしまう。
集中するリーシャにシャノウの苛立ちの声は届かず、どうにか火竜に礫を届かせようと操り続けていた。
『それで勝てるというのなら協力してやる。俺に汚名を着せずに済むというのならな』
「あっ、やっぱりそこなんですね」
『あたりまえだ』
「ですよね。じゃあ、シャノウさん。私がしようとしている事を簡単に説明しますね」
リーシャは思い描いた戦闘構想を伝えた。
シャノウは器用に攻撃をかわしながら、リーシャの声に耳を傾ける。
『ふん。危ない橋とはそういう事か。まあ、よかろう。その程度、俺にとっては大した危険ではない。むしろ貴様の方が死のリスクが高いだろうしな。今回限りだ。いいな!』
シャノウが今回限りだとムキになって強調してくるため、今が戦闘中だという事にも関わらず、リーシャの口からはクスリと笑みがこぼれた。
「ありがとうございます」
『笑っている場合か?』
「いえ、そんな余裕ないです」
『では、早くしろ。魔力の限界も近いんだろう?』
シャノウは体から黒く輝く光を零しながら飛び続けている。おそらく膨大にあったリーシャの魔力の残量が少なくなってきた事で、召喚の魔法が解けかかっているのだろう。もう猶予はない。
「わかってますよ」
そう言って、リーシャはようやく魔法を組み始めた。
「土と氷よ」
2つの氷の魔法を成長させながら、同時に土の魔法でリーシャの体を優に超える大きさがある鋭い石の礫を、いくつも作り上げた。
『器用なものだな。褒めてやってもいい』
「それはどうも。いけっ!」
リーシャは石の礫の方を火竜に向けて飛ばした。
火竜は巨大な火の玉で礫を打ち落としていく。けれどどうしても打ち落とせないものが、いくつか飛び回っていた。その礫は火竜の攻撃を避けるように動き、地道に火竜との距離を詰めている。
この不可思議な動きはリーシャによるものだった。ギルド仲間、シュレイン・シルベルトという男性が得意とする、魔力の糸で武器を操って攻撃する技で、礫が落とされないように操っているのだ。
これは繊細な技でかなりの集中力を必要とするため、大雑把なリーシャでは彼のように多くの物を操ることはできない。しかも別の魔法も同時に発動させているため、3つが限界だった。
リーシャはその礫を打ち落とされないよう、何の変哲もない石の礫をさらに放つ。
操っている礫を火竜に届かせようと、激しく揺れる中、頭から煙が出そうなほど集中して攻撃を続けた。
『ええい、小娘‼ まだなのか‼』
苛立つシャノウの巨大な体は、いつの間にか一回り小さくなっていた。このまま時間が過ぎればリーシャを乗せられる大きさではなくなってしまう。
集中するリーシャにシャノウの苛立ちの声は届かず、どうにか火竜に礫を届かせようと操り続けていた。
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