371 / 419
竜の国
1度だけ(1)
しおりを挟む
2匹の竜は空高くへと高速で翔けのぼった。たった数秒で国全体が見渡せる高さまで到達。雲がすぐ近くを浮いている。これほど高くまできてしまえば、下への被害はそうそう出ないだろう。
先に仕掛けたのは火竜だった。
数メートル高い位置を飛んでいるシャノウに向かい、火竜は炎の息吹を放った。その攻撃は、さきほどリーシャが急襲された時の威力ほどではない。それでも火竜の息吹は他のどの竜のものよりも遥かに規模も威力も大きく、もし今リーシャの足元にいたのがルシアだったなら、さばききれなかったかもしれない。
シャノウはそんな攻撃を悠々とかわし、火竜をあざ笑うかのように周囲を飛び回り始めた。付かず離れずの距離で、リーシャの魔法の有効範囲を知っているかのような飛び方だ。
ただ、本当にリーシャに魔法を使わせる気があるのかどうか、疑わしい点もある。
「シャ、シャノ、ウさん‼ 早すぎ、て、わた、私、攻撃が……‼」
シャノウの飛行速度は速く、俊敏で、火竜を翻弄するだけでなく、頭の上に乗っているリーシャまでもが翻弄されていた。
いくら落ちないように足場を安定させ、火竜の攻撃を華麗によけ続けられたとしても、このままの速さでは前から迫りくる風の圧に邪魔され、反撃ができない。
「グルル……」
前を向いて飛行を続けるシャノウの苛立ったような返事は、リーシャの言葉への拒否だったのだろう。速度が遅くなるどころかむしろ早くなったようだった。
シャノウが正解なのはリーシャもわかっている。
速度を落とせば、リーシャとシャノウは火竜にとって格好の的になってしまう。
今はこの速さだからこそ火竜の攻撃をかわせているのだ。それならばリーシャが速さに適応するしかない。
「かっ、風よっ!」
リーシャは、自身の周りに風の壁を作り上げ、風圧を和らげた。これで風の邪魔はほとんどなくなった。
(たっ、助かった……とりあえず、揺れとか狙いにくさとか問題はまだまだあるけど、視界は開けたし、これなら……)
一安心したのも束の間、突然リーシャは頭がぐらりと揺れ、視界に靄が漂ったような感覚に襲われた。
「あっ、あ、れ…………? あ、そっか」
今のシャノウはリーシャの魔力を使い、姿を現している。さらに言うと、翼が白骨化して飛べるはずのないシャノウの巨体が空に浮いているのは、リーシャの魔力を消費し、何らかの魔法を使っているから。しかも無茶苦茶な速度を出すのにも魔力を消費しているだろうから、当然その分消費速度も増加している。
リーシャを襲う感覚は、急激な魔力消費に伴う症状だろう。
(今、シャノウさんとはこの召喚の指輪を通して魔力を共有して、一心同体の状態……普段はシャノウさんの召喚に必要な魔力は自然回復で補えていたけど、今はいろんなことに魔力を使ってるから……このままだとシャノウさんの召喚を維持できなくなる)
空中で戦うための手段を失えば、あの火竜相手では勝ち目などないだろう。
戦いのリミットはシャノウを顕現させる事ができなくなった時。ほぼリーシャの魔力が底をついた時といってもいいかもしれない。そのリミットはリーシャが魔法を使わなくても近いうちに訪れ、リーシャが反撃に出ればその分短くもなる。
「無駄な事は何もできないってことですね」
「グルル」
シャノウの声はリーシャの言葉を肯定したようだった。
先に仕掛けたのは火竜だった。
数メートル高い位置を飛んでいるシャノウに向かい、火竜は炎の息吹を放った。その攻撃は、さきほどリーシャが急襲された時の威力ほどではない。それでも火竜の息吹は他のどの竜のものよりも遥かに規模も威力も大きく、もし今リーシャの足元にいたのがルシアだったなら、さばききれなかったかもしれない。
シャノウはそんな攻撃を悠々とかわし、火竜をあざ笑うかのように周囲を飛び回り始めた。付かず離れずの距離で、リーシャの魔法の有効範囲を知っているかのような飛び方だ。
ただ、本当にリーシャに魔法を使わせる気があるのかどうか、疑わしい点もある。
「シャ、シャノ、ウさん‼ 早すぎ、て、わた、私、攻撃が……‼」
シャノウの飛行速度は速く、俊敏で、火竜を翻弄するだけでなく、頭の上に乗っているリーシャまでもが翻弄されていた。
いくら落ちないように足場を安定させ、火竜の攻撃を華麗によけ続けられたとしても、このままの速さでは前から迫りくる風の圧に邪魔され、反撃ができない。
「グルル……」
前を向いて飛行を続けるシャノウの苛立ったような返事は、リーシャの言葉への拒否だったのだろう。速度が遅くなるどころかむしろ早くなったようだった。
シャノウが正解なのはリーシャもわかっている。
速度を落とせば、リーシャとシャノウは火竜にとって格好の的になってしまう。
今はこの速さだからこそ火竜の攻撃をかわせているのだ。それならばリーシャが速さに適応するしかない。
「かっ、風よっ!」
リーシャは、自身の周りに風の壁を作り上げ、風圧を和らげた。これで風の邪魔はほとんどなくなった。
(たっ、助かった……とりあえず、揺れとか狙いにくさとか問題はまだまだあるけど、視界は開けたし、これなら……)
一安心したのも束の間、突然リーシャは頭がぐらりと揺れ、視界に靄が漂ったような感覚に襲われた。
「あっ、あ、れ…………? あ、そっか」
今のシャノウはリーシャの魔力を使い、姿を現している。さらに言うと、翼が白骨化して飛べるはずのないシャノウの巨体が空に浮いているのは、リーシャの魔力を消費し、何らかの魔法を使っているから。しかも無茶苦茶な速度を出すのにも魔力を消費しているだろうから、当然その分消費速度も増加している。
リーシャを襲う感覚は、急激な魔力消費に伴う症状だろう。
(今、シャノウさんとはこの召喚の指輪を通して魔力を共有して、一心同体の状態……普段はシャノウさんの召喚に必要な魔力は自然回復で補えていたけど、今はいろんなことに魔力を使ってるから……このままだとシャノウさんの召喚を維持できなくなる)
空中で戦うための手段を失えば、あの火竜相手では勝ち目などないだろう。
戦いのリミットはシャノウを顕現させる事ができなくなった時。ほぼリーシャの魔力が底をついた時といってもいいかもしれない。そのリミットはリーシャが魔法を使わなくても近いうちに訪れ、リーシャが反撃に出ればその分短くもなる。
「無駄な事は何もできないってことですね」
「グルル」
シャノウの声はリーシャの言葉を肯定したようだった。
0
お気に入りに追加
214
あなたにおすすめの小説
純潔の寵姫と傀儡の騎士
四葉 翠花
恋愛
侯爵家の養女であるステファニアは、国王の寵愛を一身に受ける第一寵姫でありながら、未だ男を知らない乙女のままだった。
世継ぎの王子を授かれば正妃になれると、他の寵姫たちや養家の思惑が絡み合う中、不能の国王にかわってステファニアの寝台に送り込まれたのは、かつて想いを寄せた初恋の相手だった。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
異世界召喚されたけどヤバい国だったので逃げ出したら、イケメン騎士様に溺愛されました
平山和人
恋愛
平凡なOLの清水恭子は異世界に集団召喚されたが、見るからに怪しい匂いがプンプンしていた。
騎士団長のカイトの出引きで国を脱出することになったが、追っ手に追われる逃亡生活が始まった。
そうした生活を続けていくうちに二人は相思相愛の関係となり、やがて結婚を誓い合うのであった。
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
【完結】レスだった私が異世界で美形な夫達と甘い日々を過ごす事になるなんて思わなかった
むい
恋愛
魔法のある世界に転移した割に特に冒険も事件もバトルもない引きこもり型エロライフ。
✳✳✳
夫に愛されず女としても見てもらえず子供もなく、寂しい結婚生活を送っていた璃子は、ある日酷い目眩を覚え意識を失う。
目覚めた場所は小さな泉の辺り。
転移して若返った?!と思いきやなんだか微妙に違うような…。まるで自分に似せた入れ物に自分の意識が入ってるみたい。
何故ここにいるかも分からないまま初対面の男性に会って5分で求婚されあれよあれよと結婚する事に?!
だいたいエロしかない異世界専業主婦ライフ。
本編完結済み。たまに番外編投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる