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竜の国
対立(4)
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「まあ、そういう事だから。シャノウの参戦はあの火竜にも認めさせているから問題ないよ」
「認め……て?」
リーシャの目に映る火竜は、竜王が呼び寄せた竜が予想外の圧を放つ竜だったことに驚き、気後れしているようだった。
どう考えても、こんな態度をとる相手がシャノウの参戦を認めているとは思えない。おそらく竜王は、魔道具でリーシャの使役下にある竜が翼代わりとしてこの決闘に参戦する事は火竜に了承させたものの、その竜がどんな竜なのかまでは話さなかったのだろう。
竜王の行動は中立を保っているようで、実はリーシャの肩を持っているようだ。火竜からは恨みの視線が飛んできている。
リーシャがどんな感情を持てばいいかわからずにいると、竜王が言葉を掲げた。
「さて、それでは始めようか」
その声に、周りにいた竜たちが開戦の場を作るためにノソノソと下がりはじめた。その中心で、シャノウと火竜は向き合っている。
本来戦う必要のないシャノウを、人間側の戦力として巻き込む事になってしまったのは申し訳ないとは思った。けれど、人間のため、争いを望まない竜たちのため、早々に現状に終止符を打ちたかったリーシャは、シャノウの力を借りる覚悟を決めた。
「あの、シャノウさん。私はどこに乗ればいいですか? ルシアの時はいつも背中に乗っているんですけど」
シャノウの背中は背骨しかない。さすがにこれでは、安定した乗り心地にするのは無理だろう。
するとシャノウは頭を伏せ、再び「グルル」と鳴いた。まだ近くに残っていたルシアがシャノウの言葉をリーシャに伝える。
「おっさん、頭に乗れって言ってる。けど、視界の邪魔になるから鼻の辺りには乗るなだって」
「わかった。ルシア、ありがと」
「おう。気をつけてな」
ルシアはリーシャに向かって手を振ると、そのまま他の竜がいる場所まで下がっていった。
リーシャは風魔法でふわりと浮き上がり、シャノウの脳天へと足を下ろした。いつでも出られるよう、足を魔法でしっかりと固定して足場も確保した。
直後、竜王が口を開いた。
「リーシャ。きっと彼は君を殺す気で来るだろうから、君も遠慮なく魔法を使っていいよ。危ないと思ったら私が止めに入るから」
「わかりました」
言われずとも、火竜が殺気立っているのは見ているだけで分かるし、若い竜の中で群を抜いているというあの竜の能力の高さは過去に痛感している。はじめから全力でぶつかるつもりだった。
「次に私が竜の言葉を叫ぶ時が開始の合図だ。準備はいいかい?」
「はい」
「よし、じゃあ……」
竜王の体がのそりと動き、空を仰いだ。そして、宣言通り、大きな声が響き渡った。
「グオォォォォォォン‼」
同時にシャノウと火竜が空へ舞い上がる。人類の命運がかかった決戦が始まった。
「認め……て?」
リーシャの目に映る火竜は、竜王が呼び寄せた竜が予想外の圧を放つ竜だったことに驚き、気後れしているようだった。
どう考えても、こんな態度をとる相手がシャノウの参戦を認めているとは思えない。おそらく竜王は、魔道具でリーシャの使役下にある竜が翼代わりとしてこの決闘に参戦する事は火竜に了承させたものの、その竜がどんな竜なのかまでは話さなかったのだろう。
竜王の行動は中立を保っているようで、実はリーシャの肩を持っているようだ。火竜からは恨みの視線が飛んできている。
リーシャがどんな感情を持てばいいかわからずにいると、竜王が言葉を掲げた。
「さて、それでは始めようか」
その声に、周りにいた竜たちが開戦の場を作るためにノソノソと下がりはじめた。その中心で、シャノウと火竜は向き合っている。
本来戦う必要のないシャノウを、人間側の戦力として巻き込む事になってしまったのは申し訳ないとは思った。けれど、人間のため、争いを望まない竜たちのため、早々に現状に終止符を打ちたかったリーシャは、シャノウの力を借りる覚悟を決めた。
「あの、シャノウさん。私はどこに乗ればいいですか? ルシアの時はいつも背中に乗っているんですけど」
シャノウの背中は背骨しかない。さすがにこれでは、安定した乗り心地にするのは無理だろう。
するとシャノウは頭を伏せ、再び「グルル」と鳴いた。まだ近くに残っていたルシアがシャノウの言葉をリーシャに伝える。
「おっさん、頭に乗れって言ってる。けど、視界の邪魔になるから鼻の辺りには乗るなだって」
「わかった。ルシア、ありがと」
「おう。気をつけてな」
ルシアはリーシャに向かって手を振ると、そのまま他の竜がいる場所まで下がっていった。
リーシャは風魔法でふわりと浮き上がり、シャノウの脳天へと足を下ろした。いつでも出られるよう、足を魔法でしっかりと固定して足場も確保した。
直後、竜王が口を開いた。
「リーシャ。きっと彼は君を殺す気で来るだろうから、君も遠慮なく魔法を使っていいよ。危ないと思ったら私が止めに入るから」
「わかりました」
言われずとも、火竜が殺気立っているのは見ているだけで分かるし、若い竜の中で群を抜いているというあの竜の能力の高さは過去に痛感している。はじめから全力でぶつかるつもりだった。
「次に私が竜の言葉を叫ぶ時が開始の合図だ。準備はいいかい?」
「はい」
「よし、じゃあ……」
竜王の体がのそりと動き、空を仰いだ。そして、宣言通り、大きな声が響き渡った。
「グオォォォォォォン‼」
同時にシャノウと火竜が空へ舞い上がる。人類の命運がかかった決戦が始まった。
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