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竜の国
対立(1)
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竜王が現れた途端、ピリピリとしていた空気は一変し、ピンと張り詰めた空気が流れ始めた。竜たちの視線は竜王へと集まり、皆竜王の出方を窺っているかのように身動き一つしない。まるで石像のようだ。
そんな中、リーシャを攻撃してきた火竜は竜王に向かい低く唸っている。竜王の方はというと、火竜の苛立ちなど気にしていないと言わんばかりに、いつもと変わらぬ様子で言葉を返しているようだ。
話の詳細はわからないけれど、火竜の苛立ちの内容はリーシャが竜の国にいる事へ対する苦言であることは間違いないはずだ。
そんな中、張り詰めた空気には似つかわしくない声が空から降ってきた。
「おーい、リーシャァァ!」
「あっ、ルシア」
竜王から遅れて、翼を広げたルシアがこの不穏な場へと降りてきた。空気の読めないルシアは間の抜けた声でリーシャに尋ねる。
「魔法陣完成したから呼びに来たんだけどさ、何これ。どういう状況?」
「えっ⁉ 魔法陣できたの⁉」
緊迫した空気が流れているにもかかわらず、持ち込まれた吉報にリーシャは思わず大きな声を上げていた。
魔法陣の完成はずいぶん先になるだろうと、リーシャは思っていた。ルシアが精巧な形を狂いなく、大きく描き上げなければならない事を嘆いていたため、こんなに早く「完成した」という言葉を聞けるとは思っていなかったのだ。
リーシャの嬉々とした瞳に射抜かれ、ルシアは視線を逸らし頬を指で掻いた。
「とっ、とりあえずは、だけど。あとは召喚の指輪からシャノウのおっさんを引き剥がすのに必要な魔力量に耐えられる大きさかどうか、確認が必要って感じ。まあ確認つっても、その確認が本番になるんだけどさ。必要な魔力が光属性じゃないってんなら、それはもうどうしようもねえんだけど……ってか、その話は後でいいんだよ。なんでこんな数の竜がここに集まってんだ?」
「えーっと、ちょっとトラブルがあって……」
「トラブル? 何が起きたんだよ」
「それは……」
リーシャは自分が火竜に狙われましたと、心配性なルシアに告げきれず、口ごもった。
どうしようかとノアに助けを求める視線を送ると、代わりにピリリとした雰囲気のノアが口を開いた。
「人間襲撃のために国から出ていた竜どもが戻って来て、早々にリーシャを攻撃してきたんだ」
「はあ⁉ なんだよそれ、意味わかんねーんだけど! 何もしてんぇのに、なんでリーシャばっかがそんな目に遭わねぇといけねぇんだよ。おかしいだろ! リーシャ。ケガはねぇんだよな? 平気なんだよな?」
ノアの苛立ちが小さい事から、リーシャが無事だというのは、ある程度把握できていたのだろう。慌てふためいてはいなかったけれど、やはりどうしても尋ねずにはいられなかったようだ。
「うん。大丈夫。クリスティナや水竜たちが手助けしてくれたから」
「そっか。ありがとな、クリスティナ、他のヤツらも」
いつもなら即座に弾むような口調で、誇らしげな言葉が返ってくるところだけれど、今は何故か一瞬の間が開いた。クリスティナの様子も重々しい。
「なんてことないですわ」
他の近くにいた水竜もルシアに一瞬視線を向け、わずかに頭を上下に揺らした。けれど、口は開かず再び竜王の方へ視線を戻す。
そこでルシアはようやく場の雰囲気に気がついたらしい。声を小さくしてノアに尋ねた。
そんな中、リーシャを攻撃してきた火竜は竜王に向かい低く唸っている。竜王の方はというと、火竜の苛立ちなど気にしていないと言わんばかりに、いつもと変わらぬ様子で言葉を返しているようだ。
話の詳細はわからないけれど、火竜の苛立ちの内容はリーシャが竜の国にいる事へ対する苦言であることは間違いないはずだ。
そんな中、張り詰めた空気には似つかわしくない声が空から降ってきた。
「おーい、リーシャァァ!」
「あっ、ルシア」
竜王から遅れて、翼を広げたルシアがこの不穏な場へと降りてきた。空気の読めないルシアは間の抜けた声でリーシャに尋ねる。
「魔法陣完成したから呼びに来たんだけどさ、何これ。どういう状況?」
「えっ⁉ 魔法陣できたの⁉」
緊迫した空気が流れているにもかかわらず、持ち込まれた吉報にリーシャは思わず大きな声を上げていた。
魔法陣の完成はずいぶん先になるだろうと、リーシャは思っていた。ルシアが精巧な形を狂いなく、大きく描き上げなければならない事を嘆いていたため、こんなに早く「完成した」という言葉を聞けるとは思っていなかったのだ。
リーシャの嬉々とした瞳に射抜かれ、ルシアは視線を逸らし頬を指で掻いた。
「とっ、とりあえずは、だけど。あとは召喚の指輪からシャノウのおっさんを引き剥がすのに必要な魔力量に耐えられる大きさかどうか、確認が必要って感じ。まあ確認つっても、その確認が本番になるんだけどさ。必要な魔力が光属性じゃないってんなら、それはもうどうしようもねえんだけど……ってか、その話は後でいいんだよ。なんでこんな数の竜がここに集まってんだ?」
「えーっと、ちょっとトラブルがあって……」
「トラブル? 何が起きたんだよ」
「それは……」
リーシャは自分が火竜に狙われましたと、心配性なルシアに告げきれず、口ごもった。
どうしようかとノアに助けを求める視線を送ると、代わりにピリリとした雰囲気のノアが口を開いた。
「人間襲撃のために国から出ていた竜どもが戻って来て、早々にリーシャを攻撃してきたんだ」
「はあ⁉ なんだよそれ、意味わかんねーんだけど! 何もしてんぇのに、なんでリーシャばっかがそんな目に遭わねぇといけねぇんだよ。おかしいだろ! リーシャ。ケガはねぇんだよな? 平気なんだよな?」
ノアの苛立ちが小さい事から、リーシャが無事だというのは、ある程度把握できていたのだろう。慌てふためいてはいなかったけれど、やはりどうしても尋ねずにはいられなかったようだ。
「うん。大丈夫。クリスティナや水竜たちが手助けしてくれたから」
「そっか。ありがとな、クリスティナ、他のヤツらも」
いつもなら即座に弾むような口調で、誇らしげな言葉が返ってくるところだけれど、今は何故か一瞬の間が開いた。クリスティナの様子も重々しい。
「なんてことないですわ」
他の近くにいた水竜もルシアに一瞬視線を向け、わずかに頭を上下に揺らした。けれど、口は開かず再び竜王の方へ視線を戻す。
そこでルシアはようやく場の雰囲気に気がついたらしい。声を小さくしてノアに尋ねた。
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