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竜の国
例え話(2)
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洞窟が見え始めると、入り口付近のところに人影がある事に気がついた。ルシアだ。
いつもならまだ竜王のところで作業をしているはずなのに、リーシャたちの帰りを気もそぞろな様子で待っているようだった。視線が合った途端、霧が晴れたように顔をほころばせ、リーシャを出迎えた。
「おかえり」
「ただいま。どうしたの? いつもならまだ竜王様のところにいる時間じゃない?」
「ちょっとな。別の事が気になって、集中できなくなっちまってさ。そしたら竜王に早めに追い返されたんだよ」
ルシアは苦笑いを浮かべながら言った。
別の事に気を取られるとは意外だった。どちらかというと、ルシアは魔道具を作り始めると周りの事が見えなくなるくらいに集中する。それくらいに魔道具作りを気に入ってるようなのだ。
そんな魔道具作りから気を逸れさせるほど関心を引いたものとはいったい何なのか。可能性として考えられる対象は1つだ。ただ、今日もいつもと変わらない1日の始まりだったため、その内容までは想像がつかなかった。
「何を気にしてたの?」
「これから詳しく話すつもり。んで、その事について、リーシャの考えを聞きたいんだ。兄貴とエリアルにも」
「……うん? 話長くなりそうなら、座って話そ?」
「ああ」
リーシャはルニルを寝床に寝かせると、先に中央で向かい合って座る3人の輪に腰を下ろした。
洞窟の奥ではシャノウが体を丸めて伏せている。眠っているようだ。
洞窟の入口にはクリスティナが佇んでいる。帰ろうとしていないあたり、聞きたいけれどどうしようか迷っているといったところだろう。
「あの、ルシアさん。それって私も聞いていていい話ですの?」
「ああ。好きなようにしてくれ」
「! じゃあ、聞かせていただきますわ」
クリスティナは体を縮めると、リーシャたちの傍へ腰を下ろした。
全員が座ったところで、リーシャがルシアへ問いかけた。
「で? 何を聞きたかったの?」
「……あのさ、リーシャはもし自分が竜になれるなら、なりたいと思うか?」
「はあ……? んー、自分で空を思いっきり飛び回ってみたいとは思うから、まあ、なれるならなってみたい、かな」
今までそんなことを考えた事もなかった。なれるはずもない例え話に、リーシャはよく考えもせず答えていた。
「本当か? 本当にそう思ってんのか?」
ルシアの顔は真剣だった。
意図はわからなかったけれど、冗談ではなく本気でこの例え話で悩んでいるという事だけはリーシャにも伝わった。
「あー、いや……ごめん。なんとなくで答えた」
「だよな。ちゃんと答えてくれ」
「う、うん」
リーシャは竜になれた時の事を思い描いてみた。
いつもならまだ竜王のところで作業をしているはずなのに、リーシャたちの帰りを気もそぞろな様子で待っているようだった。視線が合った途端、霧が晴れたように顔をほころばせ、リーシャを出迎えた。
「おかえり」
「ただいま。どうしたの? いつもならまだ竜王様のところにいる時間じゃない?」
「ちょっとな。別の事が気になって、集中できなくなっちまってさ。そしたら竜王に早めに追い返されたんだよ」
ルシアは苦笑いを浮かべながら言った。
別の事に気を取られるとは意外だった。どちらかというと、ルシアは魔道具を作り始めると周りの事が見えなくなるくらいに集中する。それくらいに魔道具作りを気に入ってるようなのだ。
そんな魔道具作りから気を逸れさせるほど関心を引いたものとはいったい何なのか。可能性として考えられる対象は1つだ。ただ、今日もいつもと変わらない1日の始まりだったため、その内容までは想像がつかなかった。
「何を気にしてたの?」
「これから詳しく話すつもり。んで、その事について、リーシャの考えを聞きたいんだ。兄貴とエリアルにも」
「……うん? 話長くなりそうなら、座って話そ?」
「ああ」
リーシャはルニルを寝床に寝かせると、先に中央で向かい合って座る3人の輪に腰を下ろした。
洞窟の奥ではシャノウが体を丸めて伏せている。眠っているようだ。
洞窟の入口にはクリスティナが佇んでいる。帰ろうとしていないあたり、聞きたいけれどどうしようか迷っているといったところだろう。
「あの、ルシアさん。それって私も聞いていていい話ですの?」
「ああ。好きなようにしてくれ」
「! じゃあ、聞かせていただきますわ」
クリスティナは体を縮めると、リーシャたちの傍へ腰を下ろした。
全員が座ったところで、リーシャがルシアへ問いかけた。
「で? 何を聞きたかったの?」
「……あのさ、リーシャはもし自分が竜になれるなら、なりたいと思うか?」
「はあ……? んー、自分で空を思いっきり飛び回ってみたいとは思うから、まあ、なれるならなってみたい、かな」
今までそんなことを考えた事もなかった。なれるはずもない例え話に、リーシャはよく考えもせず答えていた。
「本当か? 本当にそう思ってんのか?」
ルシアの顔は真剣だった。
意図はわからなかったけれど、冗談ではなく本気でこの例え話で悩んでいるという事だけはリーシャにも伝わった。
「あー、いや……ごめん。なんとなくで答えた」
「だよな。ちゃんと答えてくれ」
「う、うん」
リーシャは竜になれた時の事を思い描いてみた。
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