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竜の国
飛行練習(2)
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「……思い当たる節はいくつかある」
突然ノアがきり出した。
「えっ、どこが?」
「お前、夜ルニルを寝かしつけていただろ。放っておけば勝手に寝ると言っているのに、しっかり寝なければ大きくなれないとか言って。毎日灯の届かないところへ誘導までして」
「たしかにそれはしてたけど……けど、それくらいの事だけで」
リーシャは小さい頃親からしてもらってきた事を何気なくしていただけだ。
たったそれだけの事でと、納得できずに言い淀んでいると今度はエリアルが手を上げて割り込んできた。
「はいはい! ルニルがご飯食べた後、ねぇさん口の周り拭いてあげてた! あとね、転んだ時すぐに側まで行って、大丈夫? って聞いてたりもしたよ。それを見たノアにぃさんがいっつも、かまい過ぎだって注意してた」
「そういえば、そんな事も……あったような……たまにだけど……」
2人に指摘されて思い返してみると、たしかにノアから忠告される事が度々あった。けれど、それでもリーシャは自分がかまい過ぎていたとはどうしても思えなかった。思いたくなかった。
リーシャが眉間に皺を寄せていると、ノアがエリアルに向けて口を開いた。
「一応言っておくが、お前もずいぶんルニルにかまっていたと思うぞ」
「え?」
「お前、リーシャがいない時に暇だと言ってルニルで遊んでいただろ」
「だってルニルも外見てぼーっとしてて、暇そうだったんだもん。けどさ、それを言ったらノアにぃさんだって、僕とねぇさんが食料取りに行ってる間、ルニルと遊んであげてたんじゃないの? 戻った時ルニル、にぃさんの足の上でよく寝てるじゃん」
「あれは……ルニルがぐずってうるさいから……」
ノアはしまったと言いたげな表情になった。
小さい頃からせっせと自分たちの世話をするリーシャの姿を見ながら、自身も弟2人の面倒を見てきたのだ。寝かしつけようとしたはずが、それだけではすまなかったのだろう。
リーシャたちの話を静かに聞いていたクリスティナが、再び大きな溜息をついた。
「この様子だとルシアさんもでしょうね」
「あいつは世話を焼くのが趣味みたいなものだ。間違いなく、だろうな」
ルシアは仮の住処に戻ると、出迎えたルニルを抱え上げ、よく肩に乗せて遊ばせている。過剰な時はノアの注意も飛んでいた。
エリアル以外の全員が悟った。
親代わり4人全員が、少しならとそれぞれで世話を焼いたり遊び相手をした結果がどうなるか。
「全員が全員、ちょっと面倒を見ていたつもりが、積もりに積もってって感じですわね」
「みたいです……」
「お姉様に関しては少なくとも、私はお母様からお姉様がしていたような事をしてもらった記憶はございませんし、やめた方が良いですわよ」
「はい……」
竜の子育てというのは思った以上に放任主義のようだ。食事を運ぶだけで、他は一切干渉していないのだろうかと思えるほどだ。
リーシャはうまくルニルを育てられていなかった事にしゅんとした。
突然ノアがきり出した。
「えっ、どこが?」
「お前、夜ルニルを寝かしつけていただろ。放っておけば勝手に寝ると言っているのに、しっかり寝なければ大きくなれないとか言って。毎日灯の届かないところへ誘導までして」
「たしかにそれはしてたけど……けど、それくらいの事だけで」
リーシャは小さい頃親からしてもらってきた事を何気なくしていただけだ。
たったそれだけの事でと、納得できずに言い淀んでいると今度はエリアルが手を上げて割り込んできた。
「はいはい! ルニルがご飯食べた後、ねぇさん口の周り拭いてあげてた! あとね、転んだ時すぐに側まで行って、大丈夫? って聞いてたりもしたよ。それを見たノアにぃさんがいっつも、かまい過ぎだって注意してた」
「そういえば、そんな事も……あったような……たまにだけど……」
2人に指摘されて思い返してみると、たしかにノアから忠告される事が度々あった。けれど、それでもリーシャは自分がかまい過ぎていたとはどうしても思えなかった。思いたくなかった。
リーシャが眉間に皺を寄せていると、ノアがエリアルに向けて口を開いた。
「一応言っておくが、お前もずいぶんルニルにかまっていたと思うぞ」
「え?」
「お前、リーシャがいない時に暇だと言ってルニルで遊んでいただろ」
「だってルニルも外見てぼーっとしてて、暇そうだったんだもん。けどさ、それを言ったらノアにぃさんだって、僕とねぇさんが食料取りに行ってる間、ルニルと遊んであげてたんじゃないの? 戻った時ルニル、にぃさんの足の上でよく寝てるじゃん」
「あれは……ルニルがぐずってうるさいから……」
ノアはしまったと言いたげな表情になった。
小さい頃からせっせと自分たちの世話をするリーシャの姿を見ながら、自身も弟2人の面倒を見てきたのだ。寝かしつけようとしたはずが、それだけではすまなかったのだろう。
リーシャたちの話を静かに聞いていたクリスティナが、再び大きな溜息をついた。
「この様子だとルシアさんもでしょうね」
「あいつは世話を焼くのが趣味みたいなものだ。間違いなく、だろうな」
ルシアは仮の住処に戻ると、出迎えたルニルを抱え上げ、よく肩に乗せて遊ばせている。過剰な時はノアの注意も飛んでいた。
エリアル以外の全員が悟った。
親代わり4人全員が、少しならとそれぞれで世話を焼いたり遊び相手をした結果がどうなるか。
「全員が全員、ちょっと面倒を見ていたつもりが、積もりに積もってって感じですわね」
「みたいです……」
「お姉様に関しては少なくとも、私はお母様からお姉様がしていたような事をしてもらった記憶はございませんし、やめた方が良いですわよ」
「はい……」
竜の子育てというのは思った以上に放任主義のようだ。食事を運ぶだけで、他は一切干渉していないのだろうかと思えるほどだ。
リーシャはうまくルニルを育てられていなかった事にしゅんとした。
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