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竜の国
竜王の提案(2)
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「まあ、そうだね。それじゃあ本題に入る前に。ルシア、君は人間が言う光の魔力と闇の魔力というのは、どんな性質を持つ魔力だと思う? 火の魔力なら魔法に変換すると火に、水の魔力なら水の形を成すだろう?」
「ああ。まあ、光と闇と言ったら、明るいか暗いかって事だろ? そんな感じの魔法ってことじゃないのか?」
「言葉上の概念としてならそれで合ってるんだろうけどね。魔力の性質としてはまったく別の物なんだよ」
「??」
聞き返してはこなかったけれど、ルシアには難しかったようで首を傾げている。
竜王は苦笑いでもしているような声音で続けた。
「おそらく人間は、この2つの魔力の本質を知らないから見た目通りに、暗く恐怖を与えるような色をしている魔法を闇、眩しく光り輝いている魔法を光と表現したんだろうね。けれどそれは視覚的なイメージであって、魔力の本質ではないんだ」
「???? つまり、どういう事だ?」
ルシアはさらに混乱してしまった様子だ。これ以上この部分を説明し続けても埒はあかないだろう。
この部分はさほど重要ではないため、竜王は話を進める事にした。これからの話を聞いていればおのずとわかる事だ。
「人間は私やシャノウの使う魔力を、簡単に光と闇と分類しているけど、実は私たちが使っている魔力はね、魂に作用する魔力なんだ。光と呼ばれている魔力は魂を次の生へと送り出し、闇は魂をこの世界から消滅させる。抗う事を許さない魔法を作り出すのさ。その代償なんだろうね。光の魔力を得た竜は体が弱く、闇の魔力を得た竜は身体能力こそ高いけれど、魔力を操る力が極端に低い。私も普通の竜と同じように丈夫な体は得られたものの、たった1度、それなりの規模の光の力を使っただけで、かなりの時間身動きが取れなくなるほどの反動を受ける」
「……はあ⁉ じゃあアンタ、俺らに協力して魔力使ってるけど大丈夫なのかよ‼」
光の魔力刻印を完成させるため、竜王は1日に何度も光の魔力を使い続けている。
無理をさせていたのではと思ったらしいルシアは急に声を荒らげた。
「これくらいの魔力なら平気だよ。もっと魔力を必要とする魔法に変換するときに反動が来るみたいでね。昔、人間の手からシャノウを解放しようとして大きな魔法を発動した時は、どうにかここまで戻っては来れたけど、その後は1年近く眠っていたみたいだ」
「マジかよ……」
「ふふっ。まじだよ」
リーシャを取られるのではと、いつも警戒している相手の事を心配する様が竜王には面白かった。損得勘定なくそんな感情を向けられるのも新鮮だ。
竜王が温かい目でルシアの事を見ていると、見られている本人はむず痒くなったらしい。落ち着かない様子で、口を尖らせた。
「で? 光と闇の話が、俺らとどう関係してくんだ?」
「光の魔力が魂を次の生へと送り出す魔法だって言ったよね」
「ああ。言ったな。で?」
「これは私からの提案なんだけど、リーシャが人間としての生を終える直前、その魂を竜の体へと移し替える、というのはどうだろうか」
途端にルシアの目は見開かれた。そこには期待の輝きが映っている。
「ああ。まあ、光と闇と言ったら、明るいか暗いかって事だろ? そんな感じの魔法ってことじゃないのか?」
「言葉上の概念としてならそれで合ってるんだろうけどね。魔力の性質としてはまったく別の物なんだよ」
「??」
聞き返してはこなかったけれど、ルシアには難しかったようで首を傾げている。
竜王は苦笑いでもしているような声音で続けた。
「おそらく人間は、この2つの魔力の本質を知らないから見た目通りに、暗く恐怖を与えるような色をしている魔法を闇、眩しく光り輝いている魔法を光と表現したんだろうね。けれどそれは視覚的なイメージであって、魔力の本質ではないんだ」
「???? つまり、どういう事だ?」
ルシアはさらに混乱してしまった様子だ。これ以上この部分を説明し続けても埒はあかないだろう。
この部分はさほど重要ではないため、竜王は話を進める事にした。これからの話を聞いていればおのずとわかる事だ。
「人間は私やシャノウの使う魔力を、簡単に光と闇と分類しているけど、実は私たちが使っている魔力はね、魂に作用する魔力なんだ。光と呼ばれている魔力は魂を次の生へと送り出し、闇は魂をこの世界から消滅させる。抗う事を許さない魔法を作り出すのさ。その代償なんだろうね。光の魔力を得た竜は体が弱く、闇の魔力を得た竜は身体能力こそ高いけれど、魔力を操る力が極端に低い。私も普通の竜と同じように丈夫な体は得られたものの、たった1度、それなりの規模の光の力を使っただけで、かなりの時間身動きが取れなくなるほどの反動を受ける」
「……はあ⁉ じゃあアンタ、俺らに協力して魔力使ってるけど大丈夫なのかよ‼」
光の魔力刻印を完成させるため、竜王は1日に何度も光の魔力を使い続けている。
無理をさせていたのではと思ったらしいルシアは急に声を荒らげた。
「これくらいの魔力なら平気だよ。もっと魔力を必要とする魔法に変換するときに反動が来るみたいでね。昔、人間の手からシャノウを解放しようとして大きな魔法を発動した時は、どうにかここまで戻っては来れたけど、その後は1年近く眠っていたみたいだ」
「マジかよ……」
「ふふっ。まじだよ」
リーシャを取られるのではと、いつも警戒している相手の事を心配する様が竜王には面白かった。損得勘定なくそんな感情を向けられるのも新鮮だ。
竜王が温かい目でルシアの事を見ていると、見られている本人はむず痒くなったらしい。落ち着かない様子で、口を尖らせた。
「で? 光と闇の話が、俺らとどう関係してくんだ?」
「光の魔力が魂を次の生へと送り出す魔法だって言ったよね」
「ああ。言ったな。で?」
「これは私からの提案なんだけど、リーシャが人間としての生を終える直前、その魂を竜の体へと移し替える、というのはどうだろうか」
途端にルシアの目は見開かれた。そこには期待の輝きが映っている。
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