魔法使いと彼女を慕う3匹の黒竜~魔法は最強だけど溺愛してくる竜には勝てる気がしません~

村雨 妖

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竜の国

白い髪の少女(2)

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「ちょちょちょ! 誰の前に、あなた、なんで裸なの⁉」
「え?」

 指摘されても少女はキョトンとするばかりで、恥ずかしがる様子は一切見せない。幼い子供ならまだ羞恥が芽生えていないのかもと思えたけれど、どう見てもその少女はリーシャより少し年下くらいにしか見えない。

「服はどこに置いてきたの⁉」
「ふく? ああ。服なんて持っていませんわ! 必要なんてなかったんですもの!」
「えっ、えぇ……」

 少女はドヤ顔の仁王たちで、何故か誇らしげだった。
 リーシャは意味がわからず困惑するばかりだったけれど、途中でハッした。
 ここにはノアとエリアルがいる。2人とも本性は竜とはいえ、リーシャという人間に好意を抱いている男性。少女は気にしていないようだけれど、裸のままでいさせてはいけない状況だ。

「ノア! エリアル! こっち見ない! 回れ後‼」
「はーい」

 ノアもエリアルも背中を向けた。少女の裸体など一切興味がないと言わんばかりに落ち着き払っている。
 リーシャは異空間に繋がる袋から自身の着替えを引っ張り出した。

「私の服貸してあげるから、これを着て! はい」
「ありがとうございます、お姉様! お姉様の服を着られるだなんて、夢のようですわ~」

 少女はリーシャに心酔しているような表情で、服を受け取った。
 人の服は嫌だと駄々をこねられなかったのは良かったけれど、見知らぬ少女から返ってきたそれとは真反対の反応に、リーシャも表情をひきつらせるしかなかった。
 そんな顔をされていると気がついていないのか、少女は機嫌よく服を着始める。
 着替える姿をじっと見るのも失礼だと思ったリーシャは、視線を逸らそうとした。けれど、視界の端に入ってきた少女の行動に、おもわず目を丸くして凝視してしまった。
 少女が頭を入れようとし始めたのはシャツではなく、何故かズボンだったのだ。頭を股の部分から出そうと、裾から出た手が布をグイグイと引っ張っている。

「あ、あら? なんで通りませんのぉぉ‼」 
「待って待って! 違うから! そんな無理やり引っ張ったら破れちゃう!」
「えっ? これはこう着るのではないんですの?」

 リーシャは少女の頭からズボンを取り去った。不思議そうにする少女の視線がリーシャへと向けられる。

「これはズボン。足からはくの。頭を通すのはこっち。着せてあげるから、両手を上げて」
「わかりましたわ!」

 張り切って両手を上げる少女の体に、リーシャは服を纏わせる。少女の嬉しそうな顔をしたがポンと出てきた時、ふと懐かしい事を思い出した。

(そういえば、エリアルも最初こんな感じだったな。洋服を知らないから、袖から無理やり頭を出そうとして……あれ?)

 この少女に対する疑問が、ありえないと思える仮説を膨らませる。
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