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竜の国
赤い実の森(2)
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「これならルシアにぃさんも喜んでくれるよね!」
「そうだね。いっぱい持って帰ってあげよう」
「うん!」
エリアルは再び果実に向かって飛び上がり、両手で摘み取る。
ルシアはよく食べる。1つや2つで満足するわけはないし、せっかくなので備蓄分も欲しいところだ。
「エリアル。さっきみたいに採った実はどんどんノアに渡して。この袋の中に入れて持って帰るから」
リーシャはいつも腰のベルトに着けている、異空間に繋がる袋をポンと叩いた。この中ならいくらでも入るし、傷むのも遅らせることができる。
エリアルはリーシャの動きを確認すると頷いた。
「わかった」
エリアルは指示通り、赤い果実を木から外してノアに向かって落とすという一連の動きを次々と繰り返した。受け取ったノアも即座にリーシャへと手渡していく。2人のその動きは実にスムーズで息もぴったり。思った以上の速いペースにリーシャはついていけず、1人てんやわんやになっていた。
2人とも放っておいては延々と続けそうな勢いで果実を取り続けた。袋にはまだまだ入るけれど、このまま取り続けては他の竜の分がなくなってしまいそうだ。それに、傷みにくいとはいえ、さすがにこれ以上取っては、食べきる前にリミットが来てしまうだろう。
「もっ、もうよくない? あんまり取りすぎても、いっぺんには食べきれないんだから。こればっかり食べ続けるわけにもいかないし」
「そうだな。エリアル、もういいぞ」
ノアに制止されると、エリアルは「はーい」と返事をして再び地上へと降りてきた。その両手にはしっかりと果実が握られている。
「どれくらいとれた? 僕、数とか数えてなかったから」
「私も数えてはないけど、おやつとして毎日食べても1カ月はもつんじゃないかな?」
エリアルとルシアが多めに食べ続けたとしたらもう少し短いかもしれないけれど、それくらいはもちそうな気がした。
「さすがに毎日はやだな。食べ終わる前に腐ったりしない?」
「たぶん大丈夫だと思う。ダメになりそうになったら、ジャムにでもしようか。砂糖は結構持って来てたはずだし」
「わかった。あっ、ねぇちゃん、これ食べる?」
エリアルが手に持っていた果実をリーシャに差し出した。
果実はなかなかの大きさがあるため、リーシャは1つ食べれば十分だった。それにこの果実はかなり糖度が高い。これ以上食べては胸やけがしそうだ。
「いいよ。エリアルが食べて」
「わーい!」
大食いのエリアルはこの程度のもの1つで満足するはずはなく、両手の物をぺろりと平らげてしまった。
「ごちそうさまでした!」
満足したような言い方をしていたけれど、表情にはまだ入りそうな余裕が見える。体力も有り余っているようで、早く次の場所に向かいたそうにそわそわしている。
けれどリーシャの方は、腹が膨れた直後にあたふたと動いたことで、何をするのも億劫に感じている。妹竜の背に登るのさえも今は面倒くさい。
「少し休憩してから行ってもいい?」
「そうだな。食ったばかりで、俺も少し休みたい」
ノアに続いて、妹竜も「グルル」と鳴いて地面に伏せた。
妹竜は出会ってからの短い期間で、人間の言葉を理解できるようになった。さすがは頭の良い種族だ。
「そうだね。いっぱい持って帰ってあげよう」
「うん!」
エリアルは再び果実に向かって飛び上がり、両手で摘み取る。
ルシアはよく食べる。1つや2つで満足するわけはないし、せっかくなので備蓄分も欲しいところだ。
「エリアル。さっきみたいに採った実はどんどんノアに渡して。この袋の中に入れて持って帰るから」
リーシャはいつも腰のベルトに着けている、異空間に繋がる袋をポンと叩いた。この中ならいくらでも入るし、傷むのも遅らせることができる。
エリアルはリーシャの動きを確認すると頷いた。
「わかった」
エリアルは指示通り、赤い果実を木から外してノアに向かって落とすという一連の動きを次々と繰り返した。受け取ったノアも即座にリーシャへと手渡していく。2人のその動きは実にスムーズで息もぴったり。思った以上の速いペースにリーシャはついていけず、1人てんやわんやになっていた。
2人とも放っておいては延々と続けそうな勢いで果実を取り続けた。袋にはまだまだ入るけれど、このまま取り続けては他の竜の分がなくなってしまいそうだ。それに、傷みにくいとはいえ、さすがにこれ以上取っては、食べきる前にリミットが来てしまうだろう。
「もっ、もうよくない? あんまり取りすぎても、いっぺんには食べきれないんだから。こればっかり食べ続けるわけにもいかないし」
「そうだな。エリアル、もういいぞ」
ノアに制止されると、エリアルは「はーい」と返事をして再び地上へと降りてきた。その両手にはしっかりと果実が握られている。
「どれくらいとれた? 僕、数とか数えてなかったから」
「私も数えてはないけど、おやつとして毎日食べても1カ月はもつんじゃないかな?」
エリアルとルシアが多めに食べ続けたとしたらもう少し短いかもしれないけれど、それくらいはもちそうな気がした。
「さすがに毎日はやだな。食べ終わる前に腐ったりしない?」
「たぶん大丈夫だと思う。ダメになりそうになったら、ジャムにでもしようか。砂糖は結構持って来てたはずだし」
「わかった。あっ、ねぇちゃん、これ食べる?」
エリアルが手に持っていた果実をリーシャに差し出した。
果実はなかなかの大きさがあるため、リーシャは1つ食べれば十分だった。それにこの果実はかなり糖度が高い。これ以上食べては胸やけがしそうだ。
「いいよ。エリアルが食べて」
「わーい!」
大食いのエリアルはこの程度のもの1つで満足するはずはなく、両手の物をぺろりと平らげてしまった。
「ごちそうさまでした!」
満足したような言い方をしていたけれど、表情にはまだ入りそうな余裕が見える。体力も有り余っているようで、早く次の場所に向かいたそうにそわそわしている。
けれどリーシャの方は、腹が膨れた直後にあたふたと動いたことで、何をするのも億劫に感じている。妹竜の背に登るのさえも今は面倒くさい。
「少し休憩してから行ってもいい?」
「そうだな。食ったばかりで、俺も少し休みたい」
ノアに続いて、妹竜も「グルル」と鳴いて地面に伏せた。
妹竜は出会ってからの短い期間で、人間の言葉を理解できるようになった。さすがは頭の良い種族だ。
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