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竜の国
交換条件(3)
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リーシャが俯いていると、竜王は続けた。
「けど、自分で説得するというのなら、私は止めないし自由にしてもらって構わない」
「え?」
「もしかしたらリーシャ、君なら彼らの考えを変えられるかもしれない。ファイドラスに認められ、人間をひどく憎んでいたシャノウと打ち解けつつある君なら」
「やっ、やります! やらせてください‼」
「ふふっ。君はそういう子だよね。ねえ、君たちはこれでいいのかな?」
竜王はノアたち兄弟に問いかけた。
リーシャは反対される事を想定していた。護衛が付けられたとはいえ、どこまで機能するかわからない。下手をすればその護衛自体が攻撃を仕掛けてくる可能性もないとは言えない。そんな危険が増す事を、過保護な彼らが簡単に許すとは思えなかった。
けれど返ってきた答えは意外なものだった。
「本音を言うとよくはない。先ほどの怪我の事があるのに、舌の根が乾かぬうちにこれかと頭が痛い。が、竜側が襲撃を続ける状況が続けば、必然的にリーシャは竜と人間との戦場に駆り出される。可能ならここで不安の芽は摘んでおきたい」
「ここには君たちの敵である竜がたくさんいる。逆に味方は君たち自身のみ。戦場より危険な状況だよ? それでもいいのかい?」
「ああ。危険ではあるが一応はアンタの目の届く場だ。最低限でリーシャを庇う心づもりがあるんだろう? でなければ、他への興味が薄いアンタが護衛をつけるなどとは言わないんじゃないか?」
「……そう。それが君の選択なんだね。他の2人も納得しているみたいだし、もうこれ以上問う必要はないみたいだ」
庇うという言葉に対して竜王一切触れる事はなかった。けれど、否定もしなかったという事は、まったく手出しするつもりがないわけではないのだろう。
何はともあれ、竜王からの協力も得られ、これで竜の国を訪れた目的は達せられそうだ。あとは自分たちでここに留まるにあたって必要な、少しでも安全に休息をとれる場所を確保しなければならない。早く見つけなければ日が暮れてしまう。
「えっと、それじゃあ竜王様。私たち、これで失礼させていただいていいですか? 暗くなる前に休めそうな場所を探しておきたいので」
「ん? ああ、それならここの隣に新しく作った洞窟があるから、そこを使うといいよ」
「えっ、いいんですか? 新しくってことは、誰かが使うために作ったんじゃあ……」
「そうなんだけどね、シャノウがこちらに戻って来た時のために作ったものだから。今はまだ主人不在の洞窟なんだ。だから好きに使ってもらって構わないよ」
「隣って。やっぱり竜王様とシャノウさんって仲いいんですね」
「まあそれもあるんだけど、自由になったら彼には私の補佐をしてもらおうと思ってるから」
竜王が嬉々として答えると、これまでずっと寝たふりをしていたらしいシャノウが勢いよく飛び起きた。
「グアウ⁉」
「うん。当たり前だろう。君、私の次に年がいって、力もあるんだから。私1人で目を光らせておくのも大変なんだ。協力、してくれるよね?」
竜王の問いかけにシャノウは口を開けたまま固まってしまった。よほどやりたくないのだろう。けれどやらなければまた力で押さえつけられると直感しているからか、嫌だとは言い出せないようで、無言のまま再び寝床に伏してしまった。
竜王はその無言を了承としたのだろう。それ以上の追求はしなかった。
「けど、自分で説得するというのなら、私は止めないし自由にしてもらって構わない」
「え?」
「もしかしたらリーシャ、君なら彼らの考えを変えられるかもしれない。ファイドラスに認められ、人間をひどく憎んでいたシャノウと打ち解けつつある君なら」
「やっ、やります! やらせてください‼」
「ふふっ。君はそういう子だよね。ねえ、君たちはこれでいいのかな?」
竜王はノアたち兄弟に問いかけた。
リーシャは反対される事を想定していた。護衛が付けられたとはいえ、どこまで機能するかわからない。下手をすればその護衛自体が攻撃を仕掛けてくる可能性もないとは言えない。そんな危険が増す事を、過保護な彼らが簡単に許すとは思えなかった。
けれど返ってきた答えは意外なものだった。
「本音を言うとよくはない。先ほどの怪我の事があるのに、舌の根が乾かぬうちにこれかと頭が痛い。が、竜側が襲撃を続ける状況が続けば、必然的にリーシャは竜と人間との戦場に駆り出される。可能ならここで不安の芽は摘んでおきたい」
「ここには君たちの敵である竜がたくさんいる。逆に味方は君たち自身のみ。戦場より危険な状況だよ? それでもいいのかい?」
「ああ。危険ではあるが一応はアンタの目の届く場だ。最低限でリーシャを庇う心づもりがあるんだろう? でなければ、他への興味が薄いアンタが護衛をつけるなどとは言わないんじゃないか?」
「……そう。それが君の選択なんだね。他の2人も納得しているみたいだし、もうこれ以上問う必要はないみたいだ」
庇うという言葉に対して竜王一切触れる事はなかった。けれど、否定もしなかったという事は、まったく手出しするつもりがないわけではないのだろう。
何はともあれ、竜王からの協力も得られ、これで竜の国を訪れた目的は達せられそうだ。あとは自分たちでここに留まるにあたって必要な、少しでも安全に休息をとれる場所を確保しなければならない。早く見つけなければ日が暮れてしまう。
「えっと、それじゃあ竜王様。私たち、これで失礼させていただいていいですか? 暗くなる前に休めそうな場所を探しておきたいので」
「ん? ああ、それならここの隣に新しく作った洞窟があるから、そこを使うといいよ」
「えっ、いいんですか? 新しくってことは、誰かが使うために作ったんじゃあ……」
「そうなんだけどね、シャノウがこちらに戻って来た時のために作ったものだから。今はまだ主人不在の洞窟なんだ。だから好きに使ってもらって構わないよ」
「隣って。やっぱり竜王様とシャノウさんって仲いいんですね」
「まあそれもあるんだけど、自由になったら彼には私の補佐をしてもらおうと思ってるから」
竜王が嬉々として答えると、これまでずっと寝たふりをしていたらしいシャノウが勢いよく飛び起きた。
「グアウ⁉」
「うん。当たり前だろう。君、私の次に年がいって、力もあるんだから。私1人で目を光らせておくのも大変なんだ。協力、してくれるよね?」
竜王の問いかけにシャノウは口を開けたまま固まってしまった。よほどやりたくないのだろう。けれどやらなければまた力で押さえつけられると直感しているからか、嫌だとは言い出せないようで、無言のまま再び寝床に伏してしまった。
竜王はその無言を了承としたのだろう。それ以上の追求はしなかった。
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