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竜の国
心配性な竜(2)
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「そうか。覚えてはいたんだな。そこは感心だ。しかし、覚えていたのに何故実行できなかったんだろうな。この調子では危なっかしくて竜の国なんぞに滞在させるわけにはいかない……そうだ。この際、番の契りを結んでしまおうか」
「は? いや、あの……」
「さすがに1晩で3人というのは無理だろう。毎夜というのもつらいだろうから、数日開けてでどうだ? それならば問題ないだろう。そうすればしばらくの間、お前も無茶なことはしでかせないだろしう?」
「ノ、ノア? もっ、もうこんなこと、ならないように、気をつけるから……」
本気の目だ。ノアなら本当に行動に移しかねない。リーシャは顔を青くしながら後ずさった。
「こらこら。そんなにいじめては彼女が可哀想だよ。反省しているみたいだし、許してあげなさい」
それは竜王からの救いの言葉だった。けれどノアは反抗的な視線を向ける。
「リーシャの反省はあてにならない。痛い目を見なければすぐに考えなしの行動に走る」
「だとしてもだよ。というか、既に物理的に痛い目は見てるでしょ。ああほら、見てごらん。彼女の顔、真っ青だよ。実行に移すのはまた今度、彼女が納得してから。そんなだとあっという間に嫌われてしまうよ?」
「……」
正論を言われたノアはついに口を閉じ、リーシャへと視線を落とす。竜王の言う通りのリーシャの顔を見て、眉間に皺を寄せ黙り込んだ。
「あの、ノア。言い訳させてもらうとなんだけど、竜王様の妹さんがすぐにでも回復させないと危ない状態だったの。慌ててたからそこまで考えが回らなくて。心配させてごめんね」
「……まったくだ。頼むからしばらくは大人しくしていてくれ。下手に動けば竜たちを刺激する可能性だってあるんだ。今回はその程度で……いや、それでも十分問題なんだが……俺たちだけではあれ程の数の竜からお前を守り切れない」
「はい……大人しくします……」
「わかってくれたのなら、いいんだ」
申し訳なくて小さくなってしゅんとしていると、頭を撫でられた。ようやく不機嫌の嵐は過ぎ去ったようだ。ノアの瞳はいつも通りの気だるげな瞳に戻っていた。
リーシャはその瞳の中に、他の者は気がつかない、心配するような、愛しむような色が隠されている事を見逃さなかった。本気で守ろうとしてくれている事が伝わって来て、胸がギュッと締め付けられる。
「さてさて、ようやく落ち着いたようだね。リーシャ、まずはその腕の傷を治そうか」
「あっ、そっ、そうですよね!」
竜王の何事もなかったような優しい声で、場の鬱屈したような空気は払拭された。
そしてリーシャはようやく思い出した。
「は? いや、あの……」
「さすがに1晩で3人というのは無理だろう。毎夜というのもつらいだろうから、数日開けてでどうだ? それならば問題ないだろう。そうすればしばらくの間、お前も無茶なことはしでかせないだろしう?」
「ノ、ノア? もっ、もうこんなこと、ならないように、気をつけるから……」
本気の目だ。ノアなら本当に行動に移しかねない。リーシャは顔を青くしながら後ずさった。
「こらこら。そんなにいじめては彼女が可哀想だよ。反省しているみたいだし、許してあげなさい」
それは竜王からの救いの言葉だった。けれどノアは反抗的な視線を向ける。
「リーシャの反省はあてにならない。痛い目を見なければすぐに考えなしの行動に走る」
「だとしてもだよ。というか、既に物理的に痛い目は見てるでしょ。ああほら、見てごらん。彼女の顔、真っ青だよ。実行に移すのはまた今度、彼女が納得してから。そんなだとあっという間に嫌われてしまうよ?」
「……」
正論を言われたノアはついに口を閉じ、リーシャへと視線を落とす。竜王の言う通りのリーシャの顔を見て、眉間に皺を寄せ黙り込んだ。
「あの、ノア。言い訳させてもらうとなんだけど、竜王様の妹さんがすぐにでも回復させないと危ない状態だったの。慌ててたからそこまで考えが回らなくて。心配させてごめんね」
「……まったくだ。頼むからしばらくは大人しくしていてくれ。下手に動けば竜たちを刺激する可能性だってあるんだ。今回はその程度で……いや、それでも十分問題なんだが……俺たちだけではあれ程の数の竜からお前を守り切れない」
「はい……大人しくします……」
「わかってくれたのなら、いいんだ」
申し訳なくて小さくなってしゅんとしていると、頭を撫でられた。ようやく不機嫌の嵐は過ぎ去ったようだ。ノアの瞳はいつも通りの気だるげな瞳に戻っていた。
リーシャはその瞳の中に、他の者は気がつかない、心配するような、愛しむような色が隠されている事を見逃さなかった。本気で守ろうとしてくれている事が伝わって来て、胸がギュッと締め付けられる。
「さてさて、ようやく落ち着いたようだね。リーシャ、まずはその腕の傷を治そうか」
「あっ、そっ、そうですよね!」
竜王の何事もなかったような優しい声で、場の鬱屈したような空気は払拭された。
そしてリーシャはようやく思い出した。
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